未払い残業代の請求は自分でできる?可能だがデメリットも多い

2020年6月19日11,482 view

残業代の請求をしたいけど、弁護士費用を節約する方法はないだろうか。そう考える人は少なくありません。しかし、法的な手続きと言えば弁護士や社労士など法律のプロが行わなくて良いのでしょうか?本記事は残業代請求を自分で行うための方法と、より多くの残業代を取り戻すためのポイントを紹介します。

弁護士に相談したら、未払い残業代が請求できた
残業代を請求することができるのはどんな人?
1日8時間以上、週40時間以上働いている人
次の項目に当てはまる人は、すぐに弁護士に相談
  • サービス残業・休日出勤が多い
  • 年俸制・歩合制だから、残業代がない
  • 管理職だから残業代が出ない
  • 前職で残業していたが、残業代が出なかった
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残業代の請求は自分でできる

結論から言えば、残業代の請求は自分でできます。なぜなら、法的手続きは本人でも可能だからです。「法律のプロでないといけない」というのはあくまでも法律相談を有料で受けることや本人の代理人として紛争の場に立つことなどです。極端に言えば訴訟すら弁護士を立てずに行うことができます。

しかも、残業代請求や和解交渉についてはそもそも法的手続きではありません。

世の中ではいとも当たり前に法律行為が行われている

そもそも法的な手続きとは何でしょうか?これは裁判と調停を指します。残業代請求においては裁判として民事訴訟を、朝廷として労働審判手続を行います。

そして和解交渉については単なる話し合いと同じですし、請求書を送ることもそこまでハードルが高くありません。

残業代請求を話し合いで解決する場合は和解契約書を作りますが、契約に弁護士が必要だと非常に不便です。例えばスマホの契約は自分でできます、家のローンを組むときだって自分で行います。それどころか私たちがコンビニでガムひとつ買うことさえ法律上は「契約」となります。

契約のように権利義務を定めるものを法律行為と呼びますが、世の中では当たり前のように法律行為が行われています。残業代請求も裁判所を使わない限りはその一つです。

こんな人でも自分で残業代請求は可能?

残業代の未払いで悩んでいるとき、自分はそもそも残業代の請求をできるのか迷ってしまう場合もあるでしょう。ご安心ください、労働基準法は労働者であれば等しく守ってくれます。偽装請負であっても実質的な雇用契約なら残業代を請求できます。

年俸制の人は請求可能です

外資系であれば年俸制で契約していることがあります。しかし、年俸制であっても給与は月払いですし雇用契約に代わりありません。年俸を時給に割れば月給制の人と同じように残業代請求が可能です。

管理監督者の要件はかなり厳しいです

役職を持っている人であれば管理監督者だからと残業代を支払ってもらえないことがあります。確かに法律上管理監督者は労働時間の制限を受けませんが法律上の管理監督者とは社内トップクラスでかつ経営者会議に参加できるほどの人です。少なくとも部長クラスであれば管理監督者と言えません。

みなし残業が適用される人は殆どいません

営業職であればみなし残業制と言われて残業代請求をあきらめたかもしれません。しかし、スマホが発達している現代において勤怠記録はどこでもできます。それどころか会社に残っている業務日報が証拠になります。まずは働いた記録の分かるものを確保してください。

自分で残業代請求する方法

残業代を請求するうえで最も大切なのは証拠。支払われていない残業代は実際に勤務をした記録から割り出せます。こちらでは証拠集めから計算までの手順を紹介します。

残業代の証拠集め

残業の証拠として有力なのはこちらです。

  • 勤怠記録や業務日報、メール履歴など
  • 給与明細、雇用契約書

働いていたことを証明する

残業代の根拠は残業をしていることです。よって、最も確保したいのが勤怠記録です。勤怠記録は会社で働いた証拠として強いですが、もし勤怠記録が残っていない時は業務日報やメール履歴から残業代を請求することができます。

もし、会社が勤怠記録を見せてくれない時は開示請求をするか証拠保全手続きを裁判所に申し立てます。

契約書や給与明細も併せて確認

雇用契約書の内容や給与明細も有益な証拠になります。「残業代はすでに支払った」「契約書で定めた通りにしている」という反論に応えるために必要です。給与明細がなければ貯金通帳でも構いません。

もし、確実な証拠が見つからない時は弁護士に相談を

時には有力な証拠を会社に隠されてしまうことがあります。この場合は弁護士の力を借りて勤怠記録を確保しましょう。また、弁護士は確実な証拠がない場合でも残業を証明するためのノウハウをたくさん知っています。防犯カメラの映像やSNS投稿など意外なものが証拠となることもあります。

残業代を請求する

支払われていない残業代は実際に勤務をした記録から割り出せます。未払い残業代の計算は次の手順で行います。

  • 基本給を時給換算する
  • 残業時間と1時間当たりの給与を掛け合わせる
  • 割増賃金を計算する
  • 遅延利息や遅延損害金を計算する

基本給を時給換算する

基本給は月ごとですが、残業代は時間ごとの計算です。そこで、残業代は基本給(各種手当を引いたもの)を所定労働時間(およそ160~164時間)で割った1時間当たりの給与を計算します。

残業時間と1時間当たりの給与を掛け合わせる

1時間当たりの給与を残業時間でかければ請求できる残業代が出てきます。
歩合給や年俸制の場合もまた計算が複雑になってきますが残業代請求可能です。

割増賃金を計算する

働いた条件によっては割増賃金が発生します。

法定労働時間を越えた分は時間外手当として25%上乗せされます。
22時から5時までの労働については深夜早朝手当の25%が上乗せされます。
休日に働いた場合は休日手当が35%上乗せされます。

割増賃金の中でも休日手当の計算は難しく手当によっては上乗せされたりされなかったりします。

遅延利息や遅延損害金を計算する

残業代は年利6%の遅延損害金や年利14%の遅延利息が発生しています。年利の計算は年利を実際に経過した年数で割るのですがこちらも複雑です。

残業代計算に迷った時はそこだけでも弁護士にお任せしたほうが良いです。

残業代を請求する

残業代を請求する手順は、次のようになります。訴訟も自分で行えますが非常に難しいためここでは労働審判までの紹介とします。

  • 残業代を請求する書面を会社に送る
  • 残業代支払についての和解交渉を行う
  • 労働審判を行う

残業代を請求する書面を会社に送る

残業代の請求は記録を残すために内容証明郵便で行います。請求書の書式は問いませんが書くべきことは以下になります。

  • 何の請求書であるか
  • 請求の期日
  • 署名と捺印
  • 請求の金額
  • 振込先と法的措置を行うまでの期日

残業代支払の請求書を送ることでお金が振り込まれることや和解交渉に移ることとなります。

会社によっては請求書を無視することがあります。こうなってしまっては和解交渉ができません。もし、1週間で何の返答もなければ労働審判に移ります。

労働基準監督署に申し立てた場合も同様です。指導もあっせんも会社を拘束できないからです。

残業代支払についての和解交渉を行う

話し合いでは労働者の持っている証拠をもとに残業代の支払いを求めます。あくまでも裁判でない解決なので会社が首を縦に振らない限り和解がまとまりません。そのため証拠が多ければ訴訟のリスクを相手に主張できますし逆に証拠がそろっていなければ足元を見られて不利な提案を持ちかけられます。

残業代支払についての和解交渉は強気で行ってください。残業代は労働基準法に認められた権利で、契約や就業規則で覆せない強行規定です。法的には労働者の方が圧倒的に強いです。

和解交渉がうまくいかないときは訴訟を起こすしかありません。
後述しますが労働審判手続も話し合いの解決だからです。

会社によっては労働者の社会的な立場が弱いから強気に出ている場合も考えられます。
弁護士を立てるだけでも相手へのプレッシャーとなり交渉がスムーズに進むのです。

労働審判手続きを行う

労働審判手続は裁判所で行う調停です。会社が直接交渉に応じてくれない時や裁判官が間に入ってほしいときに用います。

労働審判手続きはわずか3回の審理で労働審判を出すため早く決着がつく一方で双方の合意がなければ訴訟に移行する点は忘れないでください。ただし多くの案件は3回より少ない回数の審理でお互いが和解しています。

労働審判手続きは地方裁判所で行います。申立書を書く時は申し立ての理由と申し立てに至るまでの経緯、証拠となるものなどを記述します。

自分で未払い残業代請求を行うデメリット

このように残業代請求は労働者の立場が強いため正当な権利を持っていれば有利に進められます。しかし、労働基準法の条文だけでなく判例を多数駆使する場合や会社側の主張にもある程度の正しさがあって折れそうになってしまうこともよくあるでしょう。

法に詳しくなければ、「法的に有利かどうか」という不安は尽きることがありません。

そのため、残業代請求を自分で行う場合であっても弁護士のサポートを受けることがおすすめです。具体的には残業代の計算や書類作成、状況に応じた相談などです。

弁護士のサポートを受けることでこのようなデメリットを回避できます。

残業代の額が本来より低く主張してしまう

残業代は契約書で合意した労働時間よりも長く働いたお金について支払われる賃金です。その証拠としてタイムカードが有力ですが、タイムカードの記録が正確でない場合他の証拠も使わなくてはいけません。しかし有力な証拠として何が使えるのか自分では判断しづらいところがあります。

しかも、残業をしている場合は時間外手当、休日手当、深夜・早朝手当と言った割増賃金も問題となります。特に割増賃金の計算は残業代以上に複雑で法律に詳しい人ですら見逃すことがあります。

立場の強い相手に言いくるめられてしまう

残業代の請求を自分で行うと相手に強く出られて委縮してしまうことや、相手の顧問弁護士に言いくるめられてしまうことが考えられます。直接交渉や労働審判の場合はお互いの合意で決まってしまう難しさがあります。

残業代以外の問題に気づけない

労働環境の悪い、いわゆるブラック企業であれば残業代未払い以外にも給与未払いや労災、社会保険の不備などいろいろな問題があるかもしれません。つまり、残業代以外にもこちらが正当に認められるべき権利が眠っていることが有り得ます。

以上から、残業代請求は弁護士に依頼することが望ましく自分で行う場合でも弁護士に支えてもらいたいです。気になる弁護士費用についてですが、和解交渉で済む限りは着手金2万円程度に抑えられます。裁判や労働審判手続となれば30~40万円ほどが相場となります。

残業代の請求を自分で行う時も弁護士のサポートを受けましょう

残業代の支払いは強行法規なので証拠をしっかり集めれば自分での残業請求もできます。しかし、働き方が多様になっている現代は残業代の計算も複雑になっています。損をせずに満額請求をしたければやはり弁護士のサポートを受けましょう。弁護士は、同じ状況からでも多く残業代を取り戻す方法や、交渉を速やかに終わらせるための技術を持っています。

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