残業代と相殺でボーナスが減った…違法じゃないの?
「君の残業代、ボーナスに入っているから」と言われることは良くあります。単に残業代を節約したい会社や、給与計算が追い付かない会社がこのような手段をとりがちですが、払われる側としてはそれが違法ではないのか気になりますよね。残業代をボーナスで相殺する行為は本当に許されているのでしょうか。
- 残業代を請求することができるのはどんな人?
- 1日8時間以上、週40時間以上働いている人
- 次の項目に当てはまる人は、すぐに弁護士に相談
- サービス残業・休日出勤が多い
- 年俸制・歩合制だから、残業代がない
- 管理職だから残業代が出ない
- 前職で残業していたが、残業代が出なかった
この記事で分かること
未払いの残業代はボーナスと相殺されない
残業代は残業代、ボーナスはボーナス。企業が未払いの残業代とボーナスを相殺することは許されていません。ボーナスで相殺されていると会社に言われた場合でもボーナスとは別に残業代を請求することができますから、ご安心ください。
ボーナスに残業代を含める行為は実質的にボーナスを減らすことにつながりますが、必ずしも企業が労働者を苦しめるために行っているわけでは無いようです。給与計算というものは思いのほか難しく、人事や総務のリソースが足りない場合も残業代が払いきれません。つまり、残業代の後払いを苦肉の策として行っていることもあり得ます。
しかし、違法なものは違法です。場合によっては労使が協力して問題解決に臨む場合もあり得ます。
そもそも、残業代は毎月払われなければいけない
残業代をボーナスでまとめて払うことが許されないのは労働基準法第24条が理由です。労働基準法第24条には賃金を原則通過で支払うことと毎月1回以上一定の期日を定めて支払うべきことが書かれています。
つまり、毎月発生する基本給、残業代、休日手当、深夜・早朝手当は支払日を守らなければいけないわけです。
年俸制も月払いが行われます
労働基準法第24条のルールは年俸制にも適用されます。年俸制は年ごとに支払われるお金が決まるため賃金という認識を忘れがちです。
年俸も給与であり契約が雇用である以上年俸を月払いで支払う必要があります。ただし、年俸にはボーナスを含めることが可能ですが、残業代をすべて含めることはできません。
仮にボーナスと一緒に払う場合は利息が付く
このように残業代をボーナスで支払うことはできませんが、例えば「残業代はボーナス支払い月まで計算してボーナスと一緒に支払う」という残業代+ボーナスが明記されている場合は誰も損をしていないように思いませんか。
しかし、労働者にとっては「賃金を後払いされること」そのものが不利益です。(手持ちのお金が足りなくなるため)
仮に残業代をまとめて支払うとしても、後払いについては遅延損害金や遅延利息が付きます。
遅延損害金は在職中に発生する利息です。年利6%を支払わなかった日数で割って計算します。遅延損害金の計算は退職日まで行われます。
遅延利息は退職後に発生する利息です。退職した後は年利14.6%で計算されます。
残業代を請求するなら、きちんと利息計算も行いたいところです。計算が難しいので弁護士や社会保険労務士と協力することがおすすめです。
残業代をもらった分ボーナスを減らされる心配もしなくて良い
残業代をボーナスでまとめ払いすることは違法で、ボーナスに上乗せして残業代を取り戻すことが可能です。
では、「残業代をしっかり支払ったうえでその分ボーナスを減らす」場合はどうでしょうか。確かに労働基準法にはボーナスの具体的な金額どころかボーナスの支払い義務さえ記載されていません。
しかし、「残業したことを理由にボーナスが減らされる」こともまた違法です。
ボーナスと残業代は全く別のもの
大きな前提として、ボーナスと残業代は全く性質が違います。そもそもボーナスと通常の給与が別種のものです。
繰り返しますが毎月支払われる給与と、そうでないボーナスはお互いを補てんできる関係にありません。
そもそも、ボーナスとは何か
ボーナスはあくまでも臨時で支払われる一時金の性質を持っています。法律上では賞与と言われているものです。
賞与とは会社出た利益を還元することや、社員の頑張りに報いるために支払われる特別な給与で、労働基準法では賃金に定義される一方、毎月支払う義務の例外となるとも決められています。
支払われる根拠が全く異なりますから、残業代との相殺などもってのほかです。
また、ボーナス=賞与だからと脱法目的で「寸志・手当・見舞金」などのお金を渡そうと、法的に賞与とみなされたらすべてボーナスとして扱われます。
やはり残業代を後払いにする抜け道はありません。
ボーナスの不当査定は認められていません
ボーナスは法によって支払いを義務付けられていません。そもそも、ボーナスという制度がない企業も少なくないようです。
ボーナスを「いつ、いくら支払うのか」決めるのは法律ではなく就業規則です。雇用契約書にボーナスが書かれている場合もありますが、基本は就業規則が根拠となります。
そうである以上、残業代が増えたからボーナスをカットすることは違法です。就業規則に書かれた通りの計算と査定を行い、正当に支払われていることを確認してください。もし「残業したからボーナスカット」が認められると残業代の意義が崩壊してしまいます。
ボーナスの不当査定は法によって許されず、足りない分のボーナスを取り戻せます。
少なくとも同じ条件、同じ査定で不公平が生じる場合は極めて高い可能性で違法です。
ボーナスを減らされてもしょうがない時
ボーナスを減らされてもそれが不当でなければ、ボーナスが足りないという請求ができません。これも根拠は就業規則となります。
判例でも、ボーナスが状況に応じて変化することは認められています。
ボーナスが正当に減らされる場合は次の2つが考えられます。
まずは、会社の業績が良くない場合。ボーナスを支払う余裕がなくなった会社は一時的にボーナスを不支給、あるいは減額できます。ただ、赤字=ボーナスカットではありません。
次に、社員にボーナスを減らすべき理由が見つかった場合。勤務態度が悪い、会社に貢献していない、社内環境を乱すなど「残業時間」や「有休の有無」と違う合理的な基準で判断されます。かりに残業時間を理由にボーナスカットされる場合でも「必要以上に残業をした」と立証されてはこちらもボーナスの不足分請求ができません。
ボーナスをカットされない場合も知っておこう
ボーナスはあくまで臨時に、給与に上乗せされて支払われるお金です。会社にボーナスを支払えない理由があるときはそれに応じたカットがされます。
しかし、就業規則にて「ボーナスはいくら」と定められている場合は最低限その額が保証されます。
例えば給与の○か月分、売上の○%、○○円×役職に応じた係数などがあります。
就業規則がない場合も、雇用契約書に定められているならその記載が根拠となります。
残業代が払われていないなら残業代請求をしよう
残業代が払われていないこと、ボーナスが不足していることが分かったすぐに残業代請求に移りましょう。具体的な手続きが分からない時も弁護士に相談すればサポートしてもらえます。
残業代とともに請求できるもの
残業代として請求できるのは「所定労働時間を超えた労働についての賃金」です。よって1日8時間未満の労働でも残業代請求は可能です。
残業代と共に請求できるものは、法定労働時間を超えた場合に上乗せされる時間外労働手当、労働基準法における休日に出勤した場合の上乗せである休日手当、22時から5時までの労働で上乗せされる深夜・早朝手当です。
さらに、遅延損害金や遅延利息の請求も可能です。
賞与はアルバイトにも関わります
賞与はアルバイトにも支払われるものです。もしアルバイトがボーナスと残業代を相殺された場合も残業代請求が可能です。
残業代を請求する方法
残業代請求をするときは残業をしたという根拠である勤怠記録と雇用契約書、給与明細を忘れずに確保してください。残業代未払いの立証責任は労働者にあるため、証拠を集められなければ残業代を取り戻せません。
残業代の証拠を集めたら、企業に支払い請求をし、それでも応じなければ和解交渉を行います。
残業の証拠として使えるもの
残業の証拠として使えるものは勤怠記録です。会社に記録されているものをコピーして証拠を確保しましょう。どうしても見せてもらえない場合は証拠保全手続きを行います。
もし、訴訟になってしまったら
もし、訴訟になってしまったら時間やお金がかかるのでできれば和解で手を打ちたいですね。そう考えているのは企業も一緒ですから裁判と同時進行で和解交渉が続きます。判決まで進むことは少ないようです。
残業代請求の注意点
残業代請求をするうえではこのような注意点があります。法的に正当であっても慎重な行動を心がけてください。
いきなり強硬手段を取らない
いきなり強硬手段をとると会社での人間関係が悪くなることが考えられます。また、会社にも残業代の計算が追い付かない事情があるかもしれません。まずは、残業代の未払いと違法性を述べ出方を伺いましょう。
消滅時効は2年です
残業代の消滅時効は2年ですが法的に証明できる形で請求すれば時効の計算をストップできます。請求をするときは書面がベターで、書面を送ったことを証明できる内容証明郵便を使うことがベストです。
ボーナスと残業代を正当に受け取りたいなら弁護士に相談しよう
賃金の制度は多くの労働者を守るため、複雑に作られています。そのせいで基本給、残業代、ボーナスなどの区分と意味を知らなければ本来もらえるはずのお金を手放してしまうことになるでしょう。残業代の計算は一筋縄でいかず、場合によってはボーナスの不当査定が発覚することもあります。ボーナスと残業代を正当に受け取りたいなら交渉のプロである弁護士の力を借りましょう。労使にとってベストの解決策を見つけてくれます。
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