セクハラで慰謝料を請求する方法と示談金の相場
セクハラ被害を受け、相手に対し慰謝料を請求したいと考える場合は、自分で証拠を集める方法など事前知識を得ておくべきです。そこで今回はセクハラ慰謝料を請求する方法についてお伝えします。慰謝料相場、セクハラの定義、慰謝料請求の流れ、慰謝料請求成功のポイント、慰謝料を増額させる方法について見てきましょう。
- これっておかしい?と思ったら弁護士に相談を
- 自分のおかれている状況がパワハラ・セクハラに該当するかわからない
- セクハラ・パワハラで悩んでいるが相談できる人がいない
- どのような解決方法があるのか相談したい
- 弁護士に相談することで円満解決や慰謝料がもらえるケースも!
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この記事で分かること
セクハラの慰謝料相場
まずはセクハラ慰謝料請求の基本的な内容をお伝えします。セクハラの慰謝料相場はいくらなのでしょうか? 請求相手、高額慰謝料が認められるケースもご説明いたします。
セクハラでの慰謝料請求相場は100万円以上!
セクハラで受けた精神的苦痛はお金で計ることはできません。しかし、性的な嫌がらせを受けた場合には、刑事事件で相手を告訴する以外の場合には、相手に金銭を請求する方法でしか償わせる方法はありません。
ではセクハラが行われた場合の慰謝料の相場はどれくらいなのでしょうか? セクハラ慰謝料額請求に関しては、ほとんどが示談で解決します。示談とは当事者が話合いによって紛争を解決する手法のことを指します。この場合、当事者が納得するのであれば、いくらであっても請求することは可能です。そのため、相場というものはあくまで目安に過ぎません。
セクハラ慰謝料はケースバイケースながら、1,000万円以上にのぼるケースも
例えば、セクハラ慰謝料に関しては、50万円程度の場合もあれば、1000万円以上の高額の支払いのケースもあります。もっとも、多くのケースでは、200万円程度にとどまる事が多いようです。200万円以内にとどまるセクハラの内容としては、「数年にわたり会社内で卑猥な発言を繰り返したり、エレベーター内で顔や頭を被害者に近づける(東京地裁平成30年1月16日判決 120万円)」などの行為があります。
セクハラに関しては、当事者が受ける行為の内容が大きく異なるため、上記はあくまで一例と捉えるべきです。これ以上に行為が悪質であるから、必ず大きな金額を請求できるというわけではないのです。証拠の有無やセクハラ行為に関わる事情全てが考慮された結果、最終的な金額が決まると考えましょう。
セクハラ慰謝料請求の相場は、100万円以上です。しかし金額に幅があるため、一概にいくら受け取れるということはわかりません。しかし、セクハラをストップさせるためにも、慰謝料請求は効果的といえるでしょう。
セクハラで慰謝料を請求する相手
セクハラ被害を受けたら、加害行為を行った直接の相手に慰謝料請求を行います。請求の内容としては、セクハラ行為自体が不法行為にあたるため、その行為によって受けた精神的苦痛に対し慰謝料を請求する(民法709条)ことになります。
直接の加害行為を行った相手方にセクハラ慰謝料を請求するのは当然のことです。実際には、これに加えて会社に対しても請求することが可能です。セクハラの多くは職場で行われています。上下関係を利用して相手が拒めない関係において行われる事が多いためです。セクハラがあったことを会社に相談しても「掛け合ってくれなかった」というケースはよくあります。
セクハラの放置は会社の責任に
本来であれば、会社は従業員の健康を害さないようするために職場環境に配慮する義務があります。セクハラの報告に対し適切に対処しなかった事実がある場合には、この義務を履行しなかったと考え、安全配慮義務違反・環境配慮義務違反に基づく使用者責任を追及することができる(民法715条など)のです。
会社から「当事者で解決すべきだ」「あなたにも悪い点があったのではないか」「会社の問題ではない」などの発言があった場合や、報告したのにもかかわらず対処しなかった場合には、会社に対しても損害賠償請求ができるでしょう。
セクハラ慰謝料請求は、加害者である相手方本人に対してだけではなく、会社に対しても請求できると覚えておいてください。
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セクハラで高額慰謝料が認められた判例
セクハラで大きな精神的苦痛を被ったのですから、できるだけ多い金額を請求したいと考えるのは当然のことです。では、セクハラで高額慰謝料が認められた判例にはどのようなものがあるのでしょうか?
1000万円を超えるセクハラ事件
過去の判例で、1000万円を超える事案として有名なのは、元大阪府知事による選挙カー内でのわいせつ事件です。選挙活動中に、当時運動員として参加していた女子大生に対し、わいせつ行為などを行ったセクハラ事例です。この事件では、1100万円の支払いが認められました。
理由としては、セクハラだけでなくセクハラを告発したことに対し虚偽告訴で対応したり、記者会見で女子大生の名誉を傷つけるような発言をした点が認められました。セクハラだけではなく、名誉毀損も認められた点が高額慰謝料に繋がったといえます。
330万円の請求が認められた事件
これ以外でも、会社の社長が社員にたいしセクハラを行った事例に対し、個人の不法行為責任と会社の使用者責任を認めたものとして、330万円の支払いが認められた事例もあります。
株式会社の代表者が従業員に対して行ったセクハラ行為につき、代表者個人に対して不法行為責任を認めると共に、会社に対しても民法44条1項による損害賠償責任として、330万円の支払いが命じられた事例(千葉地裁平成10年3月26日判決)もあります。この事件では、業務時間外のセクハラ行為であったとしても、加害行為をした人物が被害者よりも高い地位にあれば損害賠償請求が成立する事が認められました。
このように判例では、被害者の名誉を貶めるような行為やセクハラ行為者の地位が高い場合には、高額慰謝料請求が認められています。
慰謝料請求は本当にできる?セクハラで慰謝料請求を行う流れ
次は、セクハラ慰謝料請求についてもう少し詳しい内容を見ていきましょう。どのような行為がセクハラに当たるのか、セクハラ慰謝料請求の流れについて解説します。
セクハラは、対価型セクハラと環境型セクハラに分かれる
「セクハラ被害に遭った」と相手に主張すれば、請求が認められるものではありません。セクハラで慰謝料を請求するためには、法律上のセクハラの定義に当てはまる必要があります。セクハラの定義に関しては、男女雇用機会均等法によって定められており、同法11条1項が定義をしています。具体的には、以下の通りです。
“事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。(男女雇用機会均等法11条1項)”
わかりやすくまとめると、
- 職場内で行われた性的言動に対する労働者の対応次第で、労働者が不利益を受ける場合
- 性的な言動で労働者の労働環境が害される場合
がセクハラに当たると、規定しています。
また、この定義からセクハラ行為は「対価型セクハラ」と「環境型セクハラ」に分けられると考えられています。以下、詳しくこの2種類を見ていきましょう。
対価型セクハラ
対価型セクハラとは、会社内の上下関係を利用してセクハラ行為を行い、これを拒否した場合に会社内での取り扱いに不利益を生じさせることを指します。具体的には、わいせつな発言を繰り返したり、体を触る、業務時間外にデートに付き合わせる、性的関係を強要する、などといった行為を指します。そして、これを拒否した場合に降格、減給、解雇などの影響を与えることを意味します。
会社内の上司など、特定の相手がセクハラ加害者になっている場合は、対価型セクハラと考える事ができます。実際の慰謝料請求でも対価型セクハラの事例が多いといえるでしょう。
環境型セクハラ
環境型セクハラとは、性的な言動が会社内で行われる場合に労働環境が看過できないほど不快な状況となることを指します。対価型とは異なり、直接的に個人から被害を受けるわけではない点が特徴です。例えば、以下のような例があります。
- 職場内にヌードポスターが貼られている
- 性的なジョークなどが日常的に行われている
- 会社内の特定の個人が身体を触られるなどの被害を受けているのを見るのを苦痛に感じる
- 仕事とは関係のないプライベートの恋愛事情などが社内で噂として広がっている
環境型セクハラの場合は、「対価型」に比べて認定が難しいといわれています。
セクハラ慰謝料請求の流れ
次に、セクハラで慰謝料請求をする場合の一般的な流れについてご説明します。セクハラ慰謝料請求は以下のような流れで進んでいくのが一般的です。
- 証拠を集める
- 相手方・会社に内容証明郵便を送る
- 相手方・会社と示談交渉を行う
- 訴訟を提起する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
証拠を集める
まずはセクハラの証拠を集めます。セクハラは被害者の証言だけでは請求が難しいと言われています。卑猥な発言を収めた録音データや周囲で見ていた従業員の証言などが必要です。請求前にできる限りの証拠を集めましょう。
相手方・会社に内容証明郵便を送る
次に、相手方と必要な場合は会社に内容証明郵便を送ります。内容証明郵便とは、当該文書の内容と相手方が受け取った事実、日付を証明していくれる文書です。
セクハラ慰謝料請求の場合は、相手に対し「セクハラ行為により精神的苦痛を受けたため、慰謝料を請求します」といったあなたの主張を文書で相手に通知します。職場での立場もありますので、文書の内容については弁護士と相談して決めるのが良いでしょう。
相手方・会社と示談交渉を行う
内容証明郵便に対し、相手方が連絡をしてきたら交渉に入ります。示談交渉では、いくらが妥当かなどを話し合うことになります。謝罪に加え今後このようなことを起こさないことを約束する、セクハラが起きないような職場環境を作ることを条件に減額してほしい、などの要求が相手方から出てくるでしょう。ここで当事者同士が納得すれば、示談成立となり、約束に応じて慰謝料が支払われます。
訴訟を提起する
示談交渉が決裂した場合には、セクハラ慰謝料請求の裁判を起こします。裁判官が客観的にセクハラがあったのか、どの程度の精神的苦痛があったと考えられるのかなどを判断するため、証拠の重要度が大きくなります。訴えを起こす場合は、必ず弁護士が必要になるでしょう。
セクハラの慰謝料請求!成功のポイントは?
セクハラの慰謝料請求を成功させるためには、事前に慰謝料額を決める際の考慮要素を理解しておくことが大切です。セクハラ慰謝料請求で考慮される事情をご説明します。
セクハラの内容の悪質性
まず、セクハラ慰謝料請求で考慮される事情として重要となる内容としては、セクハラの内容が挙げられます。具体的には、以下のような事情が判断事情となります。
- セクハラ行為の期間や回数、頻度
- セクハラ行為の態様・悪質性
セクハラ被害を受けた期間が長いほど、違法性は大きくなります。回数や頻度などもやはり多い場合は、慰謝料が高額になる事情として働くでしょう。また、セクハラの行為態様がひどい場合、具体的には刑事事件として立件できるケース(強制わいせつ罪、強制性交等罪、名誉毀損罪など)は、被害者の精神的苦痛も大きいため慰謝料額が高額となります。
セクハラの内容である行為の期間や回数、そして悪質性は、損害賠償額を考える上において非常に重要ポイントです。
加害者・被害者それぞれの状況
加害者と被害者、それぞれの状況についても考慮されます。具体的には、以下のような事情です。
- 加害行為を行った人の社内での地位
- セクハラ行為に対する加害者の反省の程度
- セクハラ行為後の被害者の会社での取り扱い
- セクハラ行為による被害者の精神的苦痛の程度
加害行為を行った人の社会的地位が高ければ高いほど、慰謝料の額は高額になります。例えば、上司よりも社長が行う場合の方が被害者が抵抗できず悪質と考えられるためです。セクハラをした本人が謝罪をしているのか、反省をしているのかなども考慮される事情です。
謝罪を拒絶している場合などは、慰謝料にも影響があります。そして、セクハラ行為後、被害者が退職せざるを得なくなった場合や、セクハラを拒否したことにより降格・減給などの処分があった場合は、慰謝料を増額する事情と判断できます。被害者がうつ病などの精神病に罹患した場合は、精神的苦痛の程度が大きいと判断され慰謝料も増額します。
被害者・加害者のそれぞれの状況も慰謝料の額に反映されるでしょう。
セクハラ行為への会社の対応
先にご説明したように、会社がセクハラ行為に関与している場合、あるいは放置したなどの事情がある場合は、会社にも損害賠償を請求できます。個人への損害賠償に加え、会社にも請求することになるため、慰謝料は高額になる可能性が高いといえます。具体的には以下のような事情が考慮されます。
- 会社がセクハラ行為を認識していたか
- セクハラへの対応が適切であったか
- 当該事件がもたらす社会への影響
会社がセクハラを認識していた場合は、使用者責任を問うことができるため、考慮事情となります。また、セクハラを認識していた場合は、その後適切に対処しているかどうかがポイントです。
放置していた、何もしなかった場合には慰謝料にも反映されます。会社のセクハラ事件が社会に公表された場合、どのような影響があるのかも慰謝料額を決める際に考慮すべき事情となります。大手の企業で社会的影響力が大きい場合は、慰謝料も高額になるケースが多いといえます。
このように、セクハラの慰謝料請求ではセクハラ行為の内容、加害者・被害者それぞれの状況、セクハラ行為に対する会社の対応が慰謝料額を決める決め手となります。
セクハラでの慰謝料を増額させる方法は?
セクハラ加害者をどうしても許せない場合、できる限り大きい金額を支払ってほしいですよね。適切な慰謝料額を受け取るためにできることを3つご説明します。
できる限り多くの証拠を集める
セクハラ慰謝料請求の金額を増額させるためには、相手に有無を言わせない決定的な証拠が必要となります。効果のある証拠が多ければ多いほど、加害者や会社は否定できなくなりますので、交渉で有利に立てる可能性は高いといえるでしょう。そのため、請求前にはできるだけ多くの証拠を集めるようにしてください。
例えば、以下のような証拠です。
- セクハラ発言の内容を記録した音声データ
- セクハラの内容が記録された動画
- メールのやり取り
- 被害があったことを書いた日記
- 病院での診断書
- セクハラを見ていた人の証言
客観的な証拠は交渉の材料にもなるだけでなく、最終的に示談が決裂した場合に、訴訟でも利用できます。証拠が多いほど、多くの事実を認定しやすくなるため、請求するかまだ迷っている段階でも証拠が集めるようにしてください。最終的に「慰謝料を請求する」と決断した場合に先に集めた証拠が功を奏します。
慰謝料請求を検討中の場合は、証拠をたくさん集めましょう。
弁護士に相談する
セクハラ慰謝料の示談交渉で有利に立ちたいなら、専門家である弁護士に相談することも有効な方法の1つとして挙げられます。
できるだけ多くの慰謝料を受け取れるように、証拠の集め方、請求の見通し、戦略な度についてアドバイスを受けることができます。弁護士に依頼すれば、弁護士を通して話をすることができるため、慰謝料請求に伴う精神的負担も軽減することができるでしょう。
また弁護士に依頼する大きな利点としては、相手方にプレッシャーを与えることができることです。被害者だけで「慰謝料を請求する」と主張しても、真剣に受け取らないケースも多くあります。弁護士が代理人として請求すれば、加害者も会社も本気で受け取り、訴訟で金額が大きくなる前に対処しようと考えるはずです。
弁護士に相談することで、慰謝料増額に効果的なアドバイスを受けられるだけでなく、 示談交渉で有利に立てるということは覚えておくべきです。
会社にも請求して、逸失利益を請求する
加害者だけでなく会社にも請求すれば慰謝料は増額できます。この場合は、加害者に対する不法行為責任だけでなく、会社に対しても使用者責任に基づく損害賠償請求をすることができるためです。そしてこれに加えて別の損害も請求できる可能性があります。
例えば、セクハラをきっかけとして退職せざるを得なくなってしまった場合には、逸失利益を請求することが可能です。
逸失利益とは、当該不法行為がなければ得られたはずの収入のことを指します。具体的には、セクハラがなければ会社で得ることができた給与のことです。会社を辞めざるを得なくなったという場合は、その分の損害も会社に請求できるということです。一般的には、次の就職先が決まるまでの期間につき、前の会社の給与分を請求できます。
さらに、精神病にかかり通院を余儀なくされている場合は治療費も加えて請求できる可能性があります。
このように、会社に対し逸失利益を請求することで損害賠償額全体を引き上げることは可能です。
セクハラ慰謝料請求は、弁護士に相談を
セクハラ被害にお悩みの場合は、ご自身でもできる限り証拠を集めるようにしてください。証拠があれば、加害者や会社に対し責任を追及することができます。もっとも、一人で慰謝料を請求するのは大変なことです。
そんなときこそ、専門家である弁護士に頼るべきです。弁護士がいれば、あなたの代わりに慰謝料を請求してもらえます。慰謝料請求に対し不安がある場合は、弁護士にご相談ください。
- これっておかしい?と思ったら弁護士に相談を
- 自分のおかれている状況がパワハラ・セクハラに該当するかわからない
- セクハラ・パワハラで悩んでいるが相談できる人がいない
- どのような解決方法があるのか相談したい
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