誓約書には従わなければならない? 誓約書について知っておくべき点

2018年3月6日17,328 view

誓約書

誓約書とは、当事者の一方が相手に申し入れる合意書です。夫婦間の約束やビジネス上の取り決めなど、主に契約や話し合いの場で作られます。労使間では入社や退社の際に作成されることが多い誓約書ですが、その有効性を巡ってトラブルになることも少なくありません。そこで今回は誓約書について知っておくべき点を解説します。

誓約書とはどういうものか

誓約書とは、当事者の一方が相手に申し入れる合意書に、受け手が署名捺印したものを指します。契約書の一種であり、契約や話し合いの場面において作成され、現在多くの企業が入社や退社の際に従業員に誓約書を提出させています。

誓約書には法的効力はない

誓約書はお互いの合意事項等について行き違いを無くし、トラブルを防止する目的で作成されるものです。基本的に法的効力は持たないものの、当事者間の合意と社会的妥当性があった場合効力を持ちますし、誓約書にサインをしたことによって“約束を守らなければならない”との心理が働く効果はあります。

契約書や覚書との違いは

では同じく双方の合意を書面にする契約書や覚書との違いはどこにあるのでしょうか。契約書は当事者の合意内容を書面にして、お互いに決めた内容を遵守する旨を双方が署名捺印するもので、二部作成します。それに対して誓約書は、片方の当事者が約束を遵守するように一方的に要求する書面であり、約束する側のみが署名捺印し、相手に差し出すものです。
夫婦間を例に挙げると、「配偶者が不倫・浮気をした」「配偶者にDVをした」「配偶者に内緒でギャンブルをして浪費した」等のトラブルが起きた際、行為をした側に“金輪際しない”旨を書面で約束させ配偶者が保管する、と言った具合です。

誓約書の必要性

人間は言葉を使えますから、当事者間の話し合いで合意に至り解決することもあるでしょう。しかしそこには何の保証もない為、書面にしておくことが有効です。

口約束では信用できない

トラブルが起きた際、口頭で話しをつけ、今後当該行為を二度としないと約束してことを収めることもできるでしょう。しかし口約束だけで果たして相手が確実に約束を守り通すと信用できるでしょうか。先のギャンブルの例を挙げると、パチンコや競馬等は依存症になる程のめり込むケースもありますし、不貞行為の場合、恋愛感情も絡んできます。そのような場合も、当該行為を本当に一切しないと言い切れるでしょうか。仮にしないにしてもその場限りだったり、そもそもそんな約束はしていない、と開き直るかもしれません。

相手を365日24時間監視し続けることができればあるいは口約束でも良いかもしれませんが、現実的には言うまでもなくそれは不可能です。解決するための条件となる約束をきちんと守ってもらうためには、誓約書を作成し、書面で証拠として残すことが重要なのです。

労使間における誓約書について

離婚調停の際の財産分与に関するものや秘密保持を約束させるもの、近隣トラブルがあった際以後迷惑行為をしないように誓約させるもの等、様々な事柄が対象になる誓約書ですが、その内容を巡って揉めることも少なくありません。特に労使間では双方の立場が等しく、事態がこじれがちです。ここではトラブルになった際覚えておくべき、有効な誓約内容と無効な誓約内容の違いについて説明します。

有効な誓約内容

前述の通り、基本的に誓約書は法的効力を持ちませんが、「当事者間の合意があること」と「内容に妥当性があること」を満たせば有効になります。ここでは、どのような内容なら誓約書が有効になるのか解説します。

服務規定の遵守

労使間での誓約書は使用者側が労働者に提出させるものがほとんどですが、就業規則を守るように誓約させるものが多くなります。
就業規則は通常労働基準監督署への届け出を経て作成され、その事業所で働く全ての従業員に雇用契約書よりも優先して適用される、会社内での労働条件の基盤となる決めごとです。また誓約書の内容でよく見られるものに「秘密保持」も挙げられます。これについては社内の機密情報の他、昨今の度重なる従業員によるSNSへのプライバシー情報流出事件等も相まって、業務上得た情報を外部に漏らさないように誓約させるケースも増えています。

競業避止義務

競業避止義務とは労働者は所属する企業と競合する会社・組織に就職したり、競合する会社を自ら設立したりする等の競業行為を行ってはならないというものです。これに関して在職中は労働契約における“信義忠実の原則”即ち相互に相手方の期待や信頼を裏切ってはならないとする法律上の考え方から、労働者は勤務先会社の利益に反するような行為はしてはならないとされています。一方、日本では労働者には職業選択の自由が保障されているため(憲法22条)、退職後にどの職に就こうが労働者の自由とする考え方もあり、競業避止義務を課す旨の誓約は有効になることがあります。

その他

その他、「必要に応じて人事異動の可能性があること」や「個人情報の提出を了承すること」等の誓約内容も効力を持ちます。

無効な誓約内容

逆に誓約が無効となるのは「法律に違反した内容」の場合や公序良俗に反する等「社会的に見て相当と言えない内容」等です。ここでは誓約書に書かれていても無効となる内容を具体的に紹介します。

法律違反の内容

就職活動において企業が学生に内定を出す際、誓約書によって自社に入社するように強要する “オワハラ”が問題視されていますが、前述の通り職業を自由に選択する権利が憲法によって定められているので、この誓約書には法的拘束力はありません。また賠償を請求する内容例えば「機材を破損させた場合弁償・損害賠償を請求する」「ノルマを達成しなければ罰金」等も違法となるため、無効です。しかし、悪ふざけや故意に損害を与えた場合は損害賠償請求が認められることがあります。

合理的な範囲の定めのない競業避止義務

競業避止義務が有効となるケースを上記しました。しかし競業避止義務については、労働者の生計手段の確保に大きな影響を及ぼす、慎重に扱うべき事項と言えます。その有効性に関しては判例も分かれ、一律に合法性を区分するのは不可能です。裁判所は「競業避止を必要とする使用者の正当な利益の存否」「競業避止の範囲が合理的な範囲にとどまっているか否か」「代償措置の有無等」を総合的に判断し、合理性があると見なされた場合のみ有効になることとしています。つまり必要かつ合理的な範囲で法的根拠が明きされていなければ無効になるのです。

誓約書について知っておくべきこと

多くの会社が入社時や退社時等に誓約書をとっています。ここからは、誓約書を巡るトラブル事例と、トラブルを未然に防ぐ上で労使が共に知ってくべき点について解説します。

誓約書を巡るトラブル事例

退職しようとする労働者を企業が強引に引き留めること等から、労使間でトラブルになりやすいのは退職時と言えます。

残業代請求をしない様誓約させられた

例えば、時間外労働をしても残業代請求はしない旨を誓約させられた事例があります。しかし労働基準法第37条では、通常の労働者には時間外や休日に労働した場合、即ち残業した場合は割増賃金を支払わなくてはならないと定められています。支払わないと違法になるため、当ケースの誓約書は無効になります。

競業避止義務に関するトラブルが多い

誓約書のトラブルの内突出して多いのは、やはり退職時に交わされる競業避止義務にまつわるものでしょう。判断が難しいのは前述の通りですが、その有効性は判例によって判断されます。と言うのも、そもそも法的効力の判断基準には優先度があり、原則として「判例・法令>就業規則>契約書・誓約書」の順で効力を持つためです。

競業避止義務に関する誓約書の有効性

裁判では競業避止義務に関する誓約が有効とされないことがあります。例えば平成6年の西部商事事件では競業行為をしない旨の誓約書を交わしたにもかかわらず、競合他社へ転職した元社員に対して、会社が賠償請求をしましたが棄却されています。平成24年の保険会社の事例では、退職後の競合行為を禁ずる旨の誓約は無効とされています。

誓約書の有効性が認められた事例も

しかし過去には競業行為をしない誓約を破って同業他社へ転職した社員に対して、賠償が命じられた注目すべき判例があります。
舞台となったのはここ四半世紀、各社がしのぎを削って競争するコンピュータ業界です。被告は営業統括マネージャーとして原告の会社に就職、翌年には営業統括上席常務に抜てきされますが、入社後10ヵ月にして退職し、ライバル会社のマーケティング統括部長に就任しました。会社は営業統括マネージャーという重要ポストを任せるに当たって、情報漏洩を防ぐために、誓約書を交わしていました。「競業避止特約」と銘打った誓約書の文面は、「貴社の競合先となる会社へは、貴社の退職後1年間は直接、間接を問わず、一切関わらないこと」とするものでした。

賠償金支払いが命じられた

にもかかわらず、それを破って同業他社へ転職した元社員を会社は訴えました。判決では、退職後の競業避止義務については制限がかけられるべき旨を述べた上で、「原告会社の重要な営業秘密を知りえる立場にあった被告に対し、原告の営業秘密を保護する趣旨で、退職後の一定期間、競業避止義務を課すこと自体は必ずしも不合理ということはできない」と判示し、被告に500万円の賠償命令が下ったのです。

トラブルを防ぐには

このように、誓約書が効力を発揮することもあります。しかし、いくら誓約書を作成しても事が起こったとき紛失していては意味をなしませんし、火災や地震等で消失する可能性もあります。では、トラブルを防ぐにはどうすれば良いのでしょうか。

作成時に公正証書にしておく

最も有効なトラブル予防法の一つが誓約書を「公正証書」にしておくことです。公正証書は契約や遺言等の一定の事項を公証人に証明させることにより、私的な法律紛争を未然に防ぐ目的で公証人によって作成される公的書類です。公正証書は証明力や執行力を有します。
具体的にはベテランの裁判官や検察官、法務局長等法律の専門家から法務大臣が選出した公証人が書類の記載事項を見て、法令違反がないかを精査し、作成当事者の身元を印鑑証明証等で確認しながら作成します。当事者には正本と謄本が渡され、作成された公正証書の原本は、公証役場で20年間保管されるので、第三者による改ざんや改変の恐れもありません。

公正証書の作成方法は

公正証書は両当事者が正役場に赴き、公証人が作成します。持参するものはパスポートや実印等、等身分を証明できるものです。また公証役場へ出向く際には、前もって公正証書作成のための合意書『公正証書作成原案』を法的に吟味した上で提出することが重要です。それは当事者間でどのような合意がされているのかを公証人に正確に伝えることで、以後の流れがスムーズに進みます。公的証書は作成すること自体もさることながら、どのような内容にするかも重要です。いい加減な判断で作成したがために失敗するケースが多いので、原案を作る段階から法律家に相談すると良いでしょう。

誓約書に関するトラブルは弁護士に相談

誓約書には法的拘束力はありません。あくまでも署名をしたことで「心理的な拘束力」が発生するに過ぎないのです。従って誓約書には従う必要もサインする義務もありません。またトラブルを未然に防ぐ為には少々手間でも公正証書にしておくのが良いと言えます。どのようにしたら有効な誓約書が作れるのか分からない、また、誓約書をめぐってトラブルが発生したというときは、労働問題に強い弁護士などの法律の専門家に相談するのが得策です。初回は無料の法律事務所もあるので、相談してみることをおすすめします。

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