労働審判の流れ|申立ての準備から調停・審判までの流れを知ろう
労働審判は、主張内容をまとめた申立書を証拠とともに裁判所に提出するところから始まります。労働審判の審理は、裁判官1名と労使双方から選出した代表者2名の3名から構成される労働審判委員会の主導で行われます。労働審判は独力でもできますが、用意周到に準備を進めるためにも、労働問題に詳しい弁護士に協力を仰ぐことがおすすめです。
労働審判の申立てをする前に
労働者を1人でも抱えている会社では、ときに労働者と会社側でトラブルが生じることがあります。労働審判は、労働者と会社側に争いが生じたが双方が直接交渉をしてもうまくいかないときに利用する法的手続きのひとつです。
労働審判の申立ての際に知っておきたいこと
労働審判の申立てを検討する際には、あらかじめ知っておきたいことがあります。それは具体的にどのようなことなのかについて、詳しく説明していきます。
労働者側・会社側どちらからでも申立てができる
労働審判は、労働者側が申立てるものであるように見えますが、労働者・会社側のどちらからでも申立てができるようになっています。また、派遣労働者と派遣先は直接雇用関係はないものの、この両者間での労働トラブルについても、労働審判が利用できます。
公務員は原則対象外
公務員を一方の当事者として、その任用を争う問題は、原則として国家公務員法・地方公務員法の規定に則った手続きが必要となり、労働審判で扱うことができません。しかし、セクハラ・パワハラなどについての国や地方公共団体に対する損害賠償請求や未払い残業代の請求については、労働審判を利用することができます。
代理人はつけてもつけなくてもよい
法律上、申立人が労働審判で代理人をつけることは義務付けられていません。しかし、労働審判は迅速に審理が進む分、準備が非常に大変になるため、弁護士に代理人として協力を仰いだほうがよいでしょう。
労働審判に適する事案とは
労働審判には、適している事案もあればなじまない事案もあります。労働審判で解決を図るのに適した事案は、賃金に関する紛争と雇用に関する紛争であると言われています。
未払い残業代・賃金請求など
未払いの残業代や賃金、賞与、退職金などが発生し、労働者が会社側に直接支払いを請求しても会社側がなかなか取り合ってくれないことがあります。そのような場合には、労働審判の申立てを検討しましょう。
退職強要・不当解雇・雇止めなど
労働者側に非がないのに解雇された、退職を強要された、派遣先で突然雇止めされたなど、雇用に関する紛争が生じたときにも、労働審判を申立てることができます。
セクハラ・パワハラ問題は意見が分かれる
セクハラ・パワハラ問題については、会社側が事態を放置していたことで被害者が苦痛を受けた場合に、労働審判で慰謝料や損害賠償を求めることができます。しかし、これらの問題については争点整理や立証が難しいため、労働審判委員会が労働審判になじまないことを理由に審判を終了し、訴訟に移行するケースもあります。
労働審判の流れ ~第1回期日まで
ひとつの事案の解決で年単位の月にがかかる裁判とは違い、労働審判は数か月で終了するものです。2016年の時点では、ひとつの事案にかかる平均審理期間は2か月半ほどとなっています。では、労働審判は実際にはどのような流れで進んでいくのでしょうか。
弁護士への相談・委任契約
労働審判は独力でも手続きを行うことができますが、短い準備期間にきちんと書類や証拠を準備するためにも、弁護士を利用したほうが賢明です。まずは信頼できる労働問題に詳しい弁護士を探して、法律相談に行きましょう。
法律相談では、会社側との争いの経緯や概要について説明します。その際、就業規則や雇用契約書、タイムカードなどの資料や、会社側とのやり取りを示すメールをプリントアウトしたものを持参するとより説明がしやすくなります。
弁護士にアドバイスを受けた上で委任する意思が固まれば、弁護士費用の見積書を作成してもらいましょう。提示された金額に納得できたら委任契約書を取り交わします。
労働審判の申立て
弁護士と委任契約を交わしたら、労働審判申立書の作成に入ります。その際、弁護士と打ち合わせなどを行い、労働審判で主張したいことを弁護士に伝えましょう。また、証拠となる書類もこの段階ですべて揃えるようにするのが原則ですが、提出すべき証拠は以下のようなものとなります。
①未払い残業代・賃金などに関する紛争
- 賃金規定
- 給与明細
- 就業規則
- 残業時間を示すタイムカードや業務日誌 等
②雇用に関する紛争
- 雇用契約書
- 解雇通知書
- 解雇理由書(退職等証明書)
- 就業規則 等
弁護士はヒアリングした依頼人の主張の内容から整理した事実関係と証拠をもとに申立書を作成したのちに、証拠とともに地方裁判所に提出します。
第1回期日まで
裁判所に申立書が受理されると、何か特別な事情がない限り40日以内に第1回期日が設定されます。このとき、相手方も申立書・証拠の写しとともに呼び出し状を受け取ることになります。
第1回期日の10日~1週間前くらいまでに、相手方から反論する答弁書と証拠を提示してくるため、それらをよく読み込み、内容を検討した上で第1回期日に臨みましょう。
労働審判の流れ ~第1回期日以降
無事に第1回期日を迎えると、いよいよ労働審判での審理が始まります。労働審判は裁判官1名、労働者側が選んだ代表者1名、会社側が選んだ代表者1名の合計3名の労働審判委員会により行われます。
第1回期日を迎えたら
審理は裁判所にある小部屋にて原則非公開で行われるため、労働者にとってプライバシーの面でも安心して審理に臨むことができるでしょう。当事者双方と労働審判委員会が円卓を囲む形で審理がスタートします。
第1回期日
最初は、事前に提出された申立書や答弁書、証拠などをもとに労働審判委員会が双方の主張や争点の整理を行い、その後双方の代理人や当事者に事実関係を確認します。第1回期日で話がまとまれば、この時点で調停が成立することもありますが、話し合いに決着がつかなければ労働審判委員会から次回の期日と次回までに各当事者が準備すべき点等が告げられ、終了となります。
第2回期日
第2回期日で事実関係の証拠調べが終了していない場合には、労働審判委員会によって事実関係に関する当事者へのヒアリングが再度行われます。話し合いの流れによっては、労働審判委員会から調停に持ち込むために調停案が示されることもあります。当事者双方が調停案に合意できれば、調停調書が作成されて労働審判が終了します。
第3回期日
第2回期日でもまだ当事者同士で折り合いがつかなければ、第3回期日で労働審判委員会により再度調停が試みられます。調停が成立すれば労働審判委員会により調停調書が作成されますが、調停が成立しない場合には、同委員会から審判が下されます。双方とも意義がなければ、審判が裁判上の和解と同一の効力を持ちます。
審判に異議があれば通常訴訟へ
当事者が審判に納得がいかない場合には、告知された時から2週間以内に書面で異議を申し立てなければなりません。もし、当事者のどちらか一方から適法に異議申立てがあった場合、審判は効力を失い、労働審判を申立てたときに通常の労働裁判が提起されたものとみなされます。労働審判の申立書も訴状と同じものとみなされます。
そして、通常訴訟に進むことになりますが、その他の記録は審判から裁判には引き継がれないため、改めて主張内容を記載した書面や証拠書類を提出することが必要です。
労働審判には弁護士の協力を仰ぐべし
労働審判では、弁護士に協力を仰いだほうが良いと言われています。弁護士をつけたほうが労働審判に向けての準備が用意周到に行なえる上に、労働トラブルの解決率も高くなるからです。面倒な手続きから解放されるためにも、労働審判には弁護士とともに望むようにしましょう。
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