労働審判の申立て費用|弁護士を利用すると金額はどのくらい?
労働審判は自力でも申立てることができ、その場合かかる費用は収入印紙代と郵便切手代のみです。しかし、審理を有利に進めるためには弁護士の協力が不可欠です。弁護士に依頼をすれば、着手金や成功報酬、日当などの高額な費用がかかりますが、費用を節約する方法や法テラスを利用する方法もあります。
労働審判でかかる費用
会社と労働者との間で「残業代を払ってもらえない」「自分に落ち度はないのに退職を強要された」といったトラブルが生じたときに、問題解決の方法として利用できるのが労働審判です。労働審判を申立てる際には必ずしも代理人を必要とはしないため、自力でも申立ての手続きを行うことができます。
個人で申立てを行う場合
個人で労働審判の申立てをするときは、あまり費用はかかりません。裁判所に支払う費用は、印紙代と郵便代などの実費のみとなっています。では、その内容について具体的に見ていきましょう。
①印紙代
まず必要となるのが、収入印紙代です。未払い残業代・賃金などの金銭に関する紛争については、請求金額に応じて印紙代が定められています。具体的な金額については裁判所のHPに掲載されているため、自分で調べてみましょう。
不当解雇や退職勧奨など、解雇に関する紛争では、請求金額を160万円とみなすため、印紙代は一律6500円となります。
②郵券代
次にかかるのが郵券代です。これは、相手方に書類を送付するときにかかる郵便切手代のことで、およそ2000円前後とされていますが、金額は裁判所によって異なります。
労働審判で弁護士を立てるときの費用
労働審判を有利に進めるためには、やはり弁護士の協力が不可欠です。書類作成などの手間を省くためにも、労働審判を申立てる際には弁護士を利用することが得策と言えます。では、弁護士を立てると何にどれくらいの費用がかかるのでしょうか。
- 法律相談料
- 着手金
- 成功報酬
- 実費
- 日当、タイムチャージなど
①法律相談料
申立て手続きを依頼したい弁護士を選定したら、まず弁護士事務所に出向いて法律相談を受けます。相談するだけと言っても、そこにも費用が発生するので注意が必要です。具体的な相談料は、30分5000円(税抜)、1時間1万円と設定されていることが多いでしょう。
②着手金
着手金は、請求金額の8%もしくは15~20万が相場であると言われています。(※1)中には最低金額(20万円など)を提示しているところ(※2)や、成功報酬制を取っているため着手金を受け取らないところもあります。(※3)
③成功報酬
成功報酬は、回収できた金額もしくは経済的利益の15~20%+消費税が相場であると言われています。(※4)経済的利益とは弁護士に依頼したことによって増減した経済的価値のことを指します。
④実費
着手金、成功報酬のほかに、収入印紙代、弁護士事務所から裁判所までの交通費、コピー代,、通信費など、弁護士の活動の際にかかった費用を支払います。
⑤日当、タイムチャージなど
弁護士によっては、期日のときに裁判所に同行した際の日当や、書類作成にかかる時間に対するタイムチャージが発生する場合があります。タイムチャージ制と着手金・報酬金制を併用しているところは少なく、どちらかを選択できるようになっている事務所もあるため、弁護士に依頼する際に確認してみましょう。
労働審判で弁護士を利用するメリット・デメリット
労働審判では、初期段階から弁護士に協力してもらうとスムーズな労働トラブルの解決につながります。しかし、弁護士を利用する際にはメリットもあればデメリットもあります。
弁護士を利用するメリットとは
弁護士を利用するメリットは、審理が開始するまでに入念に事前準備を行うことができ迅速な問題解決につながりやすいことが一番のメリットでしょう。また、手続きなどの物理的サポートだけでなく、不安な気持ちに対する精神的なサポートを受けられる点も大きいと言えます。
事前準備がしっかりできる
労働審判の申立ての前から弁護士に協力を求められれば、事実関係や自分が主張したいことをヒアリングした上で、事実関係や争点についてしっかり整理をしてもらい、審理に臨むことができます。また、弁護士のアドバイスに基づき、説得力のある証拠を準備することも可能です。
フォローしてもらえる
一般的に、「労働審判なんて経験したことがない」という方がほとんどだと思います。弁護士に同行してもらえれば、裁判所での審理の際に困ったことが起きたときに、弁護士に隣ですぐフォローをしてもらうことができるため、安心につながるでしょう。
話し合いを有利に進めることができる
初期段階から弁護士にサポートしてもらうことで、労働審判の審理のときに話し合いを自分にとって有利に進めてもらえます。そうすることで、金銭トラブルであれば、請求金額に近い金額を回収することが期待できます。
弁護士を利用するデメリット
弁護士を利用するメリットは数多くありますが、一方でデメリットもあります。そのデメリットとはどのようなものでしょうか。具体的に見ていきましょう。
実績・経験豊富な弁護士を探す手間がかかる
頻繁に弁護士に何かを相談したり依頼したりしたことのある人はあまりいないでしょう。そのため、労働トラブルに関する実績や経験が豊富な弁護士を探すのに、手間や時間がかかるケースが多いと言えます。
費用が高い
弁護士を利用するデメリットで一番大きなのは、弁護士費用が高くつくことです。問題が迅速に解決しても、回収できた金額から弁護士費用を払えば実質的に手元に残るお金が少なくなることも考えられます。
労働審判にかかる弁護士費用の負担を減らす方法
労働審判の手続きを弁護士に依頼するときには、少しでも費用は抑えたいものです。ここでは、労働審判の際にかかる弁護士費用を少しでも減らす方法についてお伝えします。
労働審判にかかる弁護士費用を抑えるためにできること
高額な弁護士費用を抑えるためには、無料のサービスを利用しながら手続きを進めることが大切です。また、弁護士に相談したい内容を簡潔にまとめておくことも、節約につながるでしょう。
無料相談を利用する
大手の法律事務所を中心に、初回の相談料を無料としているところが多くなっています。また、乗降客数の多い駅や市町村役場、公共施設などで、地域の弁護士会や弁護士の有志団体が中心となって無料法律相談会を開催しているところも多いので、そういった機会を利用するのもひとつの方法です。
相談内容を整理しておく
相談する時間が長くなるほど相談料もかかります。そのため、弁護士に相談に行く前に争いまでのいきさつや解決したい争点などについてあらかじめ整理しておきましょう。できるだけ相談にかかる時間を短くすることが、費用の節約にもつながります。
弁護士費用が払えない場合は法テラスを利用しても
「『労働審判で問題を迅速に解決するためには弁護士の協力が必要』と言われても、収入が少なくて弁護士費用が出せない」という方のために、法テラスと呼ばれる機関があります。
情報提供や法的支援をしてもらえる
法テラスでは、問題解決に役立つ法制度や弁護士会・司法書士会などの関係団体の相談窓口を、サポートダイヤルや全国の法テラスの事務所無料で案内しています。また、弁護士を利用したくても経済的に利用が難しい場合については、いったん法テラスで費用を立て替えてもらうことも可能です。
費用は分割払い
法テラスで立て替えてもらった弁護士費用は、後日分割払いの形で返済します。利用者の返済金を財源として「相互扶助」の考えに基づいて運営されている団体なので、毎月決められた返済日にきちんと返済することが求められます。
利用条件があることに注意
立替制度を利用するには、以下の3つの条件を満たすことが必要です。条件を満たしているかどうかの審査もあります。
- 収入等が一定額以下であること
- 民事法律扶助の趣旨に適すること
- 勝訴の見込みがないとはいえないこと
労働審判での弁護士費用が心配な場合も弁護士に相談
労働審判の申立てにかかる手続きを弁護士に依頼したくても、費用が心配な場合は、最初の法律相談をしたときに、弁護士に正直に申し出てみましょう。弁護士事務所によっては、無理のない金額での分割払いに応じてくれるところもあります。費用のことを含め、まずは弁護士に相談してみることが大切です。
関連記事一覧
- 労働審判とは労働問題をスピーディに解決することができる制度!
2024.11.217,939 view
- 労働審判の流れ|申立ての準備から調停・審判までの流れを知ろう
2024.11.2116,685 view
- 不当解雇を労働審判に訴えて得られる労働問題の解決方法とは?
2024.11.2114,367 view
- 労働審判は弁護士に相談すべき?
2024.11.2110,319 view
- 地位確認請求|訴訟・労働審判で問う不当解雇の「正当性」
2024.11.2129,173 view