会社が雇用保険や社会保険に入ってくれない場合、どうする?

2020年6月19日270,356 view

雇用保険

会社が雇用保険や社会保険の適用事業所で、労働者も加入条件を満たしていれば、それらの保険には必ず加入しなければなりません。しかし、会社が加入手続きを怠ることもあるため、自分でも加入状況を確認することが大切です。もし加入していないことがわかれば、専門機関に相談するか、弁護士に相談することをおすすめします。

雇用保険と社会保険の加入は会社の義務

社会保険

会社に勤めた経験のある人なら、入社した時に総務部や人事部の担当者から「雇用保険」や「社会保険」の制度について説明を受けたことがある人も多いのではないでしょうか。会社勤めをしていて、かつ所定の条件を満たしていれば、これらの保険への加入は避けられません。では、雇用保険や社会保険とは、いったいどのような制度なのでしょうか。

雇用保険とは

雇用保険とは、労働保険のひとつです。思わぬ会社の倒産やリストラなどの憂き目に遭った時や、自己都合で退職した時などに、次の仕事が見つかるまでの生活を支えるための給付を行うことが、雇用保険の主な役割となっています。

雇用保険は労働者を一人でも雇用している事業所すべてに適用されるものです。そのため、加入条件を満たす労働者を一人でも雇用した場合には、その労働者の意思に関係なく、翌月10日までに必ず地域を管轄するハローワークに加入の届出をしなければならないことになっています。この届出を行わない場合、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が設定されています。

労働者が離職中にいわゆる「失業保険」を給付するだけでなく、育児休業や介護休業を取得した時に育児休業給付・介護休業給付を行ったり、主に離職者が職業訓練を受ける際に教育訓練給付を行うのも、この雇用保険が行っている事業です。

社会保険とは

社会保険とは、医療保険と年金保険の2つに関するものの総称です。会社員の場合は、健康保険と厚生年金保険がこれにあたります。会社の形態をとっている法人であれば、株式会社・有限会社などの組織形態や事業規模を問わず社会保険への加入が義務付けられる強制適用事業所となるため、必ず加入手続きを行わなければなりません。会社が所定の条件を満たしているのにもかかわらず社会保険に加入していない場合は、6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金になります。

健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所の条件は以下の通りです。

(1)個人経営の事業所で、常時5人以上の従業員を使用する法定業種に該当するもの。
(2)国、地方公共団体、法人の事業所であって、常時従業員を使用するもの。
(3)船員法1条に規定する、船員として船舶所有者に使用される者が乗り組む船舶。(厚生年金保険のみ)

ただし、労働者は労働時間などの条件によって、加入が必要は人とそうでない人に分かれます。

雇用保険・社会保険の加入条件

加入条件

では、雇用保険と社会保険に関する加入条件を見ていくことにしましょう。雇用保険はいざというときの労働者の経済状況に直結するために、多くの労働者が加入できるよう、社会保険よりも加入条件が厳しくなっています。

雇用保険の加入条件

雇用保険については、以下の条件を満たす労働者は雇用形態を問わず加入が必須となります。したがって、正社員や契約社員はもちろんのこと、パートやアルバイトなどであっても、以下の条件を満たす場合は雇用保険に加入することが必要です。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 31日以上雇用される見込みがある

ただし労働条件として所定労働時間が「週40時間」となっている場合には、雇用期間が31日未満でも雇用保険に加入しなければなりません。

たとえば、労働時間が1日4時間でも、週5日働いていれば雇用保険の対象となりますし、労働時間が1日8時間でも週2日しか働かなければ雇用保険の対象とはなりません。しかし、雇用期間が4週間だけであっても、1日8時間・週5日勤務をすれば雇用保険の対象となります。

社会保険の加入条件

社会保険の場合は、前提条件として「常時使用」されていることが条件となります。「常時使用」とは、雇用形態に関係なく定期的にその事業所で働いて賃金や給与を受け取っていることを言い、正社員のみならず契約社員やパート、アルバイトも全員対象となります。

しかし、社会保険は所定労働時間によって加入の必要の有無が分かれます。正社員であれば原則として全員社会保険加入の対象となりますが、パートやアルバイト、派遣社員などの非正規社員の場合は、所定労働時間が正社員のおおむね4分の3以上である場合に加入の対象となります。「おおむね」の基準は会社により異なるため、入社時に総務部や人事部に確認してみましょう。

ただし、一時的な雇用契約をあらかじめ結んでいる場合でも、以下の条件に当てはまれば「常時使用」とみなされます。

常時使用に当てはまる条件
日雇い 1か月以上引き続き雇用されるようになった場合は、その日から常用使用となる
雇用契約が2か月以内 所定の期間を超えて引き続き雇用されるようになった場合は、その日から常用使用となる
雇用契約が4か月以内の季節的業務で働く場合 4か月以上継続して雇用される予定の場合は、当初から常用使用となる
雇用契約が6か月以内の臨時的事業で働く場合 6か月以上継続して雇用される予定の場合は、当初から常用使用となる

雇用保険や社会保険に加入していない会社は違法です

雇用保険も社会保険も、労働者が加入条件を満たしているのに会社が加入させないことは違法であり、法律により罰せられることになっています。では、自分が雇用保険と社会保険に加入しているかどうかを調べる方法はあるのでしょうか。また、加入していない場合はどうすればよいのでしょうか。

雇用保険や社会保険の加入状況を確認する方法

雇用保険と社会保険に加入しているかどうかは、会社に確認するのではなく、それぞれを管轄している専門機関に問い合わせをします。過去には、「給与から保険料が天引きされていたのに、保険料がネコババされていた」という事件もあったため、きちんと確認をすることが大切です。

雇用保険の場合

雇用保険の場合は、ハローワークの窓口に行って確認しましょう。「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票」をもらって記入し、運転免許証などの身分証明書とともに提出すれば、ハローワークの担当者に調べてもらえます。

社会保険の場合

健康保険の場合は、無事加入手続きが終われば会社から保険証が支給されるため、それがあれば健康保険に加入できていることになります。厚生年金保険の場合は、年金証書と年金手帳もしくは年金加入者証を持って、年金事務所の相談窓口で確認します。また、年に一度届く「ねんきん定期便」でも加入状況を確認することができます。

雇用保険や社会保険に加入してなかったら

もし、加入状況を確認した結果、自分が雇用保険や社会保険に加入していないことが判明したら、どうすればよいのでしょうか。その場合は、すぐにそれぞれの専門機関に相談することが大切です。「いきなり専門機関に相談するのは気後れしてしまう」という場合は、まずは無料法律相談などを利用して弁護士に相談するのも良いでしょう。

雇用保険に未加入の場合

雇用保険を扱っているのはハローワークなので、ハローワークで相談しましょう。その上で、周りにも雇用保険に未加入の同僚がいれば、みんなで会社側に加入するよう働きかけます。退職後に未加入が判明した場合は、2年間は過去にさかのぼって雇用保険に加入する方法があります。

社会保険に未加入の場合

健康保険に未加入の場合は、全国健康保険協会の支部が各都道府県にあるので、そちらで相談をします。また、厚生年金保険に未加入の場合は日本年金機構の「ねんきんダイヤル」で相談することが可能です。

雇用保険や社会保険に未加入の場合は弁護士に協力してもらおう

会社が雇用保険や社会保険の適用事業所なのにそれらに自分が加入させてもらえない場合は、自分で会社に働きかけたり専門機関に相談したりするほか、労働問題に詳しい弁護士に協力を求めるのもおすすめします。労働者一個人だけでは会社側に要求を聞いてもらうのは難しいかもしれませんが、弁護士がバックについていることで、会社側もきちんと対応してくれる可能性が高くなるでしょう。

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