会社都合退職とは?自己都合退職と違い転職や福利厚生でメリットがある
自己都合退職と会社都合退職の意味の違いは何となく意味は分かるけれど、勤め先を辞めることには変わりないし、大差ないのでは?と考える方も多いのではないでしょうか。今回は、自己都合退職と会社都合退職の違いについて法的観点から解説します。
自己都合退職と会社都合退職
会社を辞める、つまり労働契約が終了する場合にも労働者の意志による退職や使用者側の一方的な都合による解雇、パートや契約社員等の有期契約労働者の契約更新をしない雇止め等いろいろなケースがあります。辞職の理由は大きく「自己都合退職」と「会社都合退職」に二分されますが、同じ辞職でも大きく差があるのです。まずはそれぞれの違いについて見ていきましょう。
会社都合退職とは
会社側の一方的な都合による労働契約の解消が「会社都合退職」になります。雇用保険上では、「特定受給資格者」に分類されます。
離職を余儀なくされたケース
一般的には会社側の一方的な都合による労働契約の終了を「解雇」、それ以外を「退職」と呼んでいます。つまり会社都合退職は即ち解雇なのです。
例えば経営難によって事業所単位で1ヶ月30人以上、会社の3分の1以上の大規模な退職(リストラ)があった場合や勤務地の移転に伴い通勤が困難になった場合、セクハラやパワハラ等被害を受けた場合、自分の意志に反して退職を余儀なくされたケースも会社都合退職になります。
また経営難に伴う退職勧奨や早期希望退職者の募集に労働者が応じた場合や賃金の大幅カットによる辞職も該当します。加えて親族の疾病やケガ、死亡等の理由によって辞職せざるを得ない状況になったケースも会社都合退職になることがあります。
会社側は会社都合退職にさせたくない
しかし会社都合退職は会社側にとって何かと好ましくないため、自己都合退職で辞職させたいのが使用者側のスタンスなのです。例えば労働契約を解消する場合に解雇の手段をとった場合、後に労働者に賠償請求や訴訟を起こされる可能性があります。
また解雇や会社都合による退職者を出すと会社は厚生労働省からの「助成金」も受給できなくなることもあり、自己都合退職に該当するようなケースでも強引に会社都合退職に持っていく事例が近年頻発しており、不正受給として問題視されています。
自己都合退職とは
自己都合退職とは書いて字の如く、社員が自身の都合で自主退職を申し出たことによる労働契約の終了です。具体的にはどの様なケースなのでしょうか。
自発的に辞職した場合
例えば転職、引っ越し、結婚や出産等、いわゆる“一身上の都合により”辞職するのが自己都合退職です。会社で問題を起こし懲戒解雇された場合も自己都合扱いになります。前述の退職勧奨の場合は、最終的に辞職を切り出したのが労使どちら側なのかがポイントとなります。退職に応じ、かつ労働者側から辞職を切り出した場合は自己都合退職になりますが、退職を拒否してもなお退職を促される、または退職してもおかしくないような不当な扱いを受けた場合や、退職に応じた後会社側から辞職するように切り出した場合は会社都合になります。
会社都合退職と自己都合退職では福利厚生等の定めも違う
しかし労働者にとっての最も大きな違いの一つが、辞職の際に受け取ことのできる給付金等、福利厚生の差でしょう。この辺りは非常に複雑ですが、知らないと損をすることになり兼ねません。ここでは会社都合退職の場合と自己都合退職の場合に発生する手当やその制限の違い等について解説していきます。
各種手当の額や給付のタイミングが異なる
会社を辞めた後で、最も困ることの一つに収入源がなくなることが挙げられます。特に長年正社員として勤めあげてきた年配の人ともなると、生活の基盤を失うことのダメージは甚大なものがあるでしょう。そのための補償が退職した労働者には給付されるわけですが、その額が会社都合退職と自己都合退職では異なるのです。
退職金の額が異なる
退職金の給付は法的義務ではないですが、多くの企業に取り入れられている制度です。その額の相場は会社の規模や学歴、勤続年数の他退職理由、即ち自己都合退職か会社都合退職かによって大きく差が付きます。一般的には他の要素が同じ場合、自己都合退職では会社都合退職より100万円程度少額の支給とする会社が多いようです。
失業手当の受け取り方も異なる
労働契約が終了した場合には雇用保険による失業等給付、いわゆる失業手当を受けることができます。雇用保険とは就業期間中に保険料を納付した人に対して1日あたり6000円から8000円程度を上限に、直近半年間の月給の50~80%の給付金がハローワークから支給される制度です。会社都合退職のケースは勿論、自発的な意志に基づいて退職した場合にも支給は受けられますが、両者の間では受給期間等に違いがあります。
受給資格が必要
失業手当を受け取る為には受給資格要件を満たしていなければなりません。一つは離職日前二年間で通算12か月以上(各月11日以上)、被保険者であったことです。通算なのでA社に6か月、B社に6か月でも構いません。雇用保険法の改正前は離職日以前の一年間で通算6か月以上あればよかったのですが2007年10月1日の改正によってこの様に変更されたので注意しましょう。
ただし、会社都合退職の「特定受給資格者」は離職前一年間で通算6か月以上、被保険者期間があればよいとされています。加えて本人に就職する意思と能力があること、就職活動を積極的に行っていることも要件となります。失業手当はあくまでも再就職先が見つかるまでの援助なのです。なお、2017年の改正では一定要件を満たせば65歳以降に新たに雇用される者も雇用保険の適用の対象とすることが定められました。
「待機期間」について
失業保険を受けられることが決定した日の翌日から7日間を「待機期間」と言います。このような期間が設けられているのは、本当に失業しているのか、ハローワークが見極めるためです。従って、この間にアルバイトをすることは認められません。待機期間中に労働したことが発覚すれば失業認定そのものが取り消され、以後の給付は受けられなくなりますので注意が必要です。もし申告すればアルバイトをした日数分の失業保険が差し引かれた金額を支給してもらえます。
正当な理由があった場合は待機なしで受給できることも
ただ、自己都合退職の場合でも給料の遅延があって退職した等会社側に問題があって辞めざるを得なかったケースや遠方に居住する親族の介護の為に退職した様な場合には、待機なしで受給できるケースがあるので、ハローワークにその旨を伝えましょう。係員に正当な理由があると認められれば、すぐに給付されます。
会社都合退職と自己都合退職について知っておくべきこと
会社都合退職にせよ、自己都合退職にせよ、職を失うことは収入が途絶えることを意味し、人生の中の重要な局面となるでしょう。最後に会社都合退職と自己都合退職について知っておくべきことを解説していきます。
会社都合退職と自己都合退職、どっちが労働者にとって得?
会社都合退職では給付金が早く、かつ長期間もらえる等労働者にとって具合が悪いことばかりではありません。では実際のところ労働者にとって、自己都合と比較してどちらが得なのでしょうか。それぞれのメリットデメリット等を解説していきます。
自己都合退職の場合3か月経たなれば失業手当受け取れない
特定受給資格者、即ち会社都合退職の人は離職を余儀なくされてしまい、再就職の準備をする時間的余裕がありません。従って給付金の手当等に関して、自己都合退職より優遇されています。会社都合退職の場合、7日間の待機が経過すればすぐに失業手当は給付されますが、一方の自己都合退職の場合7日間の待機の他に3か月の「給付制限」があり3か月絶たなければ給付が不支給となるのです。“自分の都合で辞めたのだからしばらくは自力で生活して下さいね”というわけです。
担当者の“心証”を悪くする可能性
会社都合退職の場合、転職で不利に働く可能性があります。自己都合退職の場合は、「自分の本当にやりたいことをしたい」「この職場で得た経験を次の職場で活かしたい」「スキルアップしたい」等自らの意志で行う“ポジティブな”退職と見なされます。対して会社都合退職の場合、成績不良や素行不良等本人に何かしら問題があって解雇されたのでは、と勘繰りたくなるのが採用担当者です。もちろん、本人に非がなくやむを得ない会社都合退職のケースもありますし、全ての人事担当者が会社都合退職にネガティブな印象を持つとは限りませんが、“心証”を悪くするケースが一定数あるのは事実なのです。
自己都合退職を会社都合退職に変更することができる
また会社側が、本来は会社都合にすべきところを自己都合退職にするケースがあります。この場合、相当な理由があったと見なされれば退職後でも会社都合退職にすることができるのです。
例えば労働環境の変化によって退職を余儀なくされたケースです。事業所の移転により通勤が困難になったケースや、入社時の契約内容から給与や仕事内容が大きく変更になったケース等がこれに該当します。また、給料の遅延・滞納・未払いやセクハラ、パワハラ、いじめ、嫌がらせに遭ったこと、その他会社が法令違反を犯したことを理由とした辞職の場合等も、会社都合退職に変更できる可能性があります。
納得できなければハローワークに相談を
こうしたケースに当てはまる場合、ハローワークに相談しましょう。労働契約書や就業規則、給与明細書、タイムカード等の証拠を提出し、会社都合であると認められれば会社都合退職として受理されます。実際問題として、それが認められるか否かはハローワークの担当職員に因るところが大きいと言いますが、会社が自己都合退職としてきたことに納得できないなら、試してみる価値はあるでしょう。
日頃から労働者としての権利を自覚することが大事
同じ辞職するにしても、自己都合退職と会社都合退職では給付金や転職の際に差が発生します。日頃から労働者としての権利を自覚していざという時のために備える姿勢が大切と言えるでしょう。
退職に関するトラブルが生じたときは、自己判断で解決しようとせず、第三者や労働関係に強い弁護士に相談することをおすすめします。
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