テレワークで残業代は認められる?請求の条件と支払い不可への対処法

2020年9月28日19,646 view

夜の自宅で仕事をする男性

弁護士に相談したら、未払い残業代が請求できた
残業代を請求することができるのはどんな人?
1日8時間以上、週40時間以上働いている人
次の項目に当てはまる人は、すぐに弁護士に相談
  • サービス残業・休日出勤が多い
  • 年俸制・歩合制だから、残業代がない
  • 管理職だから残業代が出ない
  • 前職で残業していたが、残業代が出なかった
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テレワーク(在宅勤務)で残業代は請求できるか?

最近になり、テレワークが本格的に導入され始めていますが、実際上テレワークのせいで労働者が損をすることはないのでしょうか?
特に、残業についてはどのように管理するのかをご存知ない方も多いでしょう。そこでまずは、「テレワークに残業代が認められるのか」についてご説明します。

テレワークでも残業代は請求できる

テレワークの場合、会社以外の場所で働くことになるため、これまでの働き方とは異なり、勤務状況・勤務態度などの把握が難しくなります。このようなテレワークでも残業代の請求は認められるのでしょうか?

結論からいうと、テレワークでも残業代は請求可能です。企業と雇用契約を結んでいる限り、労働基準法やそのほかの関連法、雇用保険法など、通常の雇用と同様に労働に関するさまざまな法律が適用されるためです。

テレワークに対しては企業がみなし労働制を適用するケースが多い

テレワークの場合、多くの企業は「みなし労働制」を導入しています。みなし労働制はテレワークを主体として導入されているものではなく、勤務状況を把握しにくい営業職などに適用されること考え設計されています。テレワークは、これまでみなし労働制が導入されてきた勤務形態と同様に、雇用主が勤務状況を把握しにくい働き方のため、みなし労働制を適用していることが多いのです。

みなし労働制でも残業代の支払いは認められる

「みなし労働制は残業代を支払わなくてもよい法律なのでは?」と勘違いされている方も多いですが、実際はみなし労働制の場合でも残業代は支払わなければいけません。みなし労働時間制であっても、労働基準法は適用されるためです。労働基準法では、労働時間を1日8時間、週に40時間と定めており、これを越えれば割増賃金の支払い対象となります。

このように、テレワークであっても、残業代の支払いは認められるのが原則です。

テレワークで残業代が問題になることは多い

ご説明した通り、テレワークでも残業代を請求することは可能です。しかし、実際上テレワークを理由にして残業代が支払われない事例も多数存在します。

例えば、在宅勤務の場合は、勤務状況を把握するためにPCなどの通信機器が常時通信可能な状態になっている必要がありますが、自由に自宅のデスクから離れることができる場合には「勤務時間にカウントされない」といわれてしまうことがあります。
また、もっと直接的に「在宅勤務中は残業代は出ない」と会社に宣告されてしまった方もいます。
テレワークにすると勤務効率が上がると聞いたが、実際には家では子どもの世話などで集中できず、深夜勤務になってしまったという例もあり、このようなケースで残業代の支払いが拒否されてしまったという事例もあるのです。

残業代が請求できる/否定される条件をよく理解しておくことが重要

テレワークは、通勤がない・勤務時間を短縮できる・効率的というイメージがありますが、雇用主側から悪用されてしまうケースも少なくありません。そのため、労働者の側がどのような場合に残業代が請求でき、どのような場合に否定されてしまうのかを理解しておくことが大切です。

このように、テレワークでは、残業代請求が問題になることが多いといえます。労働者が利用されないようにするためには、会社と十分な話し合いを持った上で疑問を解消し、その上で在宅勤務に切り替える必要があります。

テレワークで残業代を請求できる条件

テレワークで働いていても、どうしても残業しなければいけないケースはあります。残業代をきちんと請求するためには何を守っていれば良いのでしょうか? テレワークでザ行代を請求できる条件をご説明します。

雇用形態によって、残業代が出るかが変わる

テレワークには、在宅勤務、在宅ワーク、リモートワーク、SOHO、ノマドワークなどさまざまな呼び名がありますが、重要なのは雇用形態の違いです。テレワークを始めたけれど、実際上雇用形態についてはよくわかっていないという方も少なくないので、まずはご自身の雇用形態を把握するようにしてみましょう。

テレワークという働き方には、大きく分けて2つの雇用形態があります。具体的には、業務委託型と雇用型です。

業務委託型

業務委託型とは、会社外部の人材に業務を任せる方法です。民法上は、雇用契約ではなく請負契約と委任契約が根拠となります。そのため、成果物を提供しない限り、対価を受け取ることができません。
この場合は、労働する側は個人事業主となるため、労働基本法などが適用されず、1日8時間などの労働時間も適用されません。
つまり、業務委託型でテレワークを行っている場合は、残業代が発生しないということになります。

雇用型

もう1つは雇用型です。この場合、労働者は企業と雇用契約を結んでいるため、労働基本法の適用はもちろん、残業代も請求できます。これはテレワークでも同様です。
もっとも、就業規則の中でみなし労働制が導入されている必要があります。これが就業規則に書かれていなくとも残業代は請求可能ですが、これが導入されているかによって残業代を請求できる条件は変わります。
そのため、まずは規定があるかを確認しておきましょう。

このように、まずは雇用形態を確認することが大切です。

残業代を請求できる前提条件

では、テレワークで残業代を請求するためにはどのような条件をクリアする必要があるのでしょうか。

具体的には、以下の条件を満たす必要があります。

  • 雇用契約があること
  • 就業規則に在宅勤務の定めがある場合、それを遵守していること

先にご説明したように、雇用契約が前提です。業務委託契約の場合は、目的物の完成が必要となるため、残業代は原則として発生しません。
また、就業規則に在宅勤務の定めがある場合はこれも守らないと残業代を請求できません。在宅勤務の定めがある場合には、以下の内容を守るようにしましょう。

  • 自宅勤務中にPCを常時通信可能な状態にするように会社から指示があること
  • 作業が使用者の具体的な指示に基づいていること

テレワークの場合、サボるのも簡単と思われがちですが、実際には上記を守らなければいけないことが多いためサボるのは難しいといえます。
随時通信できる状態であり、指示があればすぐに応答できる状態でなければ、業務中とみなされないため、注意が必要です。

このように、残業代を請求するためには、前提として上記を守る必要があることを覚えておいてください。

残業は許可を取る・業務報告をすること

テレワークをする上で気をつけておきたいことが2つあります。それは、以下の通りです。

  1. 残業は許可を取ること
  2. 業務報告を怠らないようにすること

以下、詳細をご説明いたします。

残業は許可を取ること

残業が認められない事例としてよくあるのは、上司に許可を得ず勝手に残業をしてしまうケースです。
会社に勤務中の頃はそれでも残業代として認められたというケースがあるかもしれませんが、在宅勤務ではこれは残業代を支払わない口実に利用されてしまうことがあります。

というのも、事前あるいは事後の許可を得ない勤務時間に関しては労働時間から除外することが可能であるためです。
残業代を支払ってもらうためにも、残業をする場合は許可を取ることを忘れないようにしましょう。

業務報告を怠らないようにすること

また業務報告を怠らないようにすることも大切です。
在宅勤務に関する規定が就業規則に定められている場合には「作業が使用者の具体的な指示に基づいていること」が必要です。つまり、日頃から仕事に関する業務報告を行なっていれば、これを裏付けることができます。

これまでとは異なり、見えない業務であるからこそ、メールやチャットなどで業務報告を定期的に行うことが大切です。社内で統一したルールがある場合にはそれに従いましょう。

このように、残業をする際は社内のルールを守ることも大切です。上記を守るようにしてください。

時間外勤務の証拠は残す

テレワーク中、「業務時間外に上司から連絡が来てすぐに指示に従わなければいけなかった」という状況も少なくありません。このような場合、証拠がないと残業代が出ない可能性があるため、しっかりと証拠を残しておくことが大切です。

例えば、メールで連絡があれば残しておくようにする、電話の場合も通話履歴を残しておくようにする、などです。仕事の報告などを勤務時間外に行なっている場合、その証拠があれば残業として割増賃金を請求できるケースがあります。

証拠が残っていないと、後で会社に否定されてしまった場合に立証が困難となるため、できる限り時間外勤務の証拠は残しておくようにしてください。

このように、テレワークでも残業は請求できますが、場合によっては会社から否定されてしまうこともありますので、万が一のためにもご自身で自衛の術を身に付けておくと良いでしょう。

テレワークの残業で知っておくべきポイント

テレワークに従事する際「深夜作業や休日作業に残業代は出るの?」など疑問に思うことも多いでしょう。そこで、テレワークの残業で労働者が知っておくべきポイントをお伝えします。

テレワークでの深夜作業は残業請求の対象になる

先にご説明したように、雇用型のテレワークを行う場合はみなし労働制を導入していることが前提となります。
繰り返しとなりますが、この場合でも時間外の業務である残業代は支払われるべきです。そしてこれには深夜作業や休日作業も含まれます。

テレワークの場合、仕事とプライベートの境目が曖昧になることが多いため、深夜作業や休日作業に手当てが出ないのでは?と不安になる方が多いですが、これにも賃金は支払われるため、安心してください。

会社や上司から指示のない自己都合のテレワーク深夜作業は残業代支払いの対象外

しかし、場合によっては残業手当等が支払われないこともあります。例えば、残業について上司や勤務先からの具体的な指示がない場合です。
労働者の側からの深夜勤務・休日勤務希望であっても良いですが、これに対し雇用主の同意と明確な指示が必要となります。
自己都合で勝手に深夜作業を決めた場合などは支払いの対象外となるため気をつけましょう。

「残業代が請求できる条件」でお伝えした通り、事前あるいは事後の許可が必ず必要であるため、この点を遵守するようにしてください。

このように、深夜手当てや休日手当は出ますが、許可が必要です。会社の指示がなければ手当は出ないので気をつけましょう。

業務委託型でも残業代支払いが認められるケースがある

テレワークでも業務委託型の場合は、残業代を支払う必要はありません。先にご説明した通り、雇用形態が異なるため、労働基本法が適用されないためです。
しかし、実際上労働者と変わらない勤務形態であるにも関わらず、業務委託という形が故意に取られているケースもあります。この場合でも、残業代の支払いは認められないのでしょうか?

結論からいうと、契約関係にかかわらず、実質的にみて雇用関係にあると判断できる場合は会社は残業代を支払う必要があるでしょう。この場合には業務委託契約であるという形式のみを持って判断することとが不公平であるためです。

具体的には、以下のような内容から実質的にみて雇用契約に当たるかどうかを判断します。

  • 仕事の依頼に対する諾否に自由があるか
  • 時間的・場所的に拘束があるか
  • 業務遂行上の指揮監督があるか
  • 他人による仕事の代行が可能といえるか
  • 報酬の決め方・支払い方法などが雇用契約と同等か

業務委託契約という名前でなくとも、請負契約、委任契約という名称であっても、上記判断基準により雇用契約と判断できる場合なら、残業代請求が認められる可能性もあります。
業務委託契約等、雇用契約以外の形態で残業代を請求したい場合は弁護士にご相談ください。

このように、業務委託型のテレワークでも残業代の支払いが認められるケースがあります。「実質的に雇用契約では?」という疑問がある場合は、迷わず弁護士に相談してみましょう。

テレワークでの残業代が支払われない場合の対処法

テレワークで残業を行なったにも関わらず、残業代が支払われないことがあります。そこで、テレワークで残業代が支払われない場合の対処法をお伝えします。

労働基準監督署などに相談する

テレワークで残業代が支払われない場合、誰かに相談したくなるでしょう。この場合、外部の監督機関に相談してみるのも1つの方法です。

具体的には、労働基準監督署や労働局、労働組合に相談してみるのが良いでしょう。労働基準監督署では、企業がきちんと法律を守って事業を運営しているかどうかを監督する義務があります。そのため、違法な残業代不払いなどがあれば、会社に対し指導・勧告を行ってくれます。ブラック企業など、悪質なケースでは刑事責任が問われるケースもあります。

労働局では、雇用主と労働者の間の紛争につき、間に入って交渉を行ってくれます。これを「あっせん」といいますが、ご自身だけで会社と交渉するのが不安な場合は全国の都道府県にある労働局の手続きを利用すると良いでしょう。

また、会社に労働組合があれば、労働組合に訴えてみるのも1つの方法です。団体交渉により、残業代の不払いに対する改善をお願いすることができます。もっとも、会社と労働組合が馴れ合いの関係になっている場合は意味がありませんので、その場合は外部の合同労組に相談してみるのも良いでしょう。

このように、まずは会社の外の機関に相談してみる方法があります。

弁護士に残業代不払いを相談する

労働局などに相談しても、必ず解決できるとは言い切れません。また、個人の主張を代弁してくれるわけではないため、不払いがなかなか解消されない可能性もあります。そのため、一番直接的に解決できる方法としては、弁護士に相談することが挙げられます。

弁護士に相談すれば、残業代を請求するために必要な証拠や残業代の計算まで全てお願いできます。具体的な手順としては、弁護士に依頼すると証拠集めから始まり、性格な残業代を計算します。そして、会社との交渉に入り、直接残業代を請求してもらえます。これでも、支払ってもらえない場合は労働基準監督署への申告や労働審判・労働訴訟も任せることができるのです。

弁護士に依頼するのは「費用面で躊躇する」という方も多いでしょう。しかし、最近では初回相談料無料の法律事務所も少なくありません。実際に相談に乗ってもらってから、依頼するかどうかを判断できるため、請求できる可能性がなければ依頼しない選択もとることもできます。

ご自身で交渉することに不安がある場合は、弁護士に相談することがおすすめです。テレワークでも残業をした場合には、きちんと残業代を支払ってもらいましょう。

テレワークの残業代が認められない場合は、弁護士に相談を

「テレワークは残業代が出ない」と会社にいわれ、それを信じてしまっている方は少なくありません。しかし、実際には残業代が出るケースも多いため、諦めないことが大切です。ご自身のケースで残業代が請求できるのか気になる場合は、専門家である弁護士に相談しましょう。

労働事件に強い弁護士なら、証拠の集め方から会社との交渉まで一挙に請け負ってくれます。テレワークで残業代や休日出勤、深夜手当などの時間外手当を請求したい場合は、弁護士に相談するのが一番です。

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