残業代稼ぎはおかしい?残業代ありきの生活のリスクと対処法

2020年6月19日1,780 view

残業代稼ぎのイメージ

残業代を請求するのは労働者の正当な権利ですが、「残業代稼ぎ」には多くの批判の声が集まっています。このような「残業代稼ぎ」は法的にはどのように評価されるのでしょうか? そこで今回は、残業代稼ぎでも支払いを認めるべきか、残業代稼ぎのリスクや残業代稼ぎをする理由、会社が残業代を支払わない場合の対処法について解説します。

弁護士に相談したら、未払い残業代が請求できた
残業代を請求することができるのはどんな人?
1日8時間以上、週40時間以上働いている人
次の項目に当てはまる人は、すぐに弁護士に相談
  • サービス残業・休日出勤が多い
  • 年俸制・歩合制だから、残業代がない
  • 管理職だから残業代が出ない
  • 前職で残業していたが、残業代が出なかった
未払い残業代請求に強い弁護士を探す

残業代稼ぎでも支払いを認めるべき?

最初に、残業代稼ぎとはどのような行為を指すのか、残業代稼ぎに会社は支払い義務があるのかについてご説明します。

残業代稼ぎとは

会社内で社員それぞれの働き方を効率的にすべきとする声が聞こえるようになったのは、ここ数年の話かもしれません。仕事と個人の私生活の調節して、生活の質を向上させるというワーク・ライフ・バランスという言葉も定着するようになりました。最近これに逆行する言葉として問題になっているのが「残業代稼ぎ」という行為です。

生活費を稼ぐためにわざと残業をする行為のこと

残業代稼ぎとは、業務上必要はないのに、生活費を稼ぐためにわざと残業をする行為を指します。生活残業と呼ばれることもあるようです。一昔前では、一家の大黒柱であるお父さんが給料を少しでも多く持ち帰るために行われているというイメージでしたが、最近では若い女性でも残業代稼ぎを行っているケースがあるようです。

女性の場合、派遣社員の割合も多く、男性に比べて給与が少ないことが原因です。彼女たちにも、生活のために少しでも多く稼ごうという理由があります。しかし、残業代稼ぎは、批判の的になることも多く、会社の損失になるといわれることもあります。業務効率が下がり、会社の空気も悪くなってしまうことが原因です。

このように、「残業代稼ぎ」は業務上は必要のない残業であり、時代に逆行する行為として捉えられています。

残業代稼ぎであっても、支払いは行うべき

残業代稼ぎは会社にとってもリスクが大きく、できれば残業代を支払いたくないと考える企業も多いようです。実際のところ、法的には、会社は残業代稼ぎに割増賃金(残業分の賃金)を支払う必要があるのでしょうか?

会社には社員の業務量・時間などを管理する義務がある

まず、会社には社員の業務量・時間などを管理する義務があります。それぞれの社員に適切な業務量・業務時間を管理することで会社側・労働者側両者が効率的な業務を行うことができます。そして残業に関しては、労働者からの残業申請が必要であり、これについて会社が認める対応をとったかが問題となります。

会社が黙示または明示的に残業行為を認めている場合は、当該労働者が行なった残業は、会社が業務上の必要に応じて命じたものと考えます。例えば、労働者が残業を勝手に行ったとして、これが常態化しているのにもかかわらず、注意や指導を行わなかったのであれば黙示の承認があったということができるでしょう。この場合は、割増賃金の支払い請求権が発生するため、残業代は支払わなければいけません。

適切な業務指示ができていない以上、残業代の支払いは必要

残業代稼ぎの場合、多くの会社が「労働者個人に対し指摘できていない」という問題があるでしょう。全体に対し「残業を少なくしよう」「ノー残業デーを作ろう」と鼓舞していたとしても、残業代稼ぎをする個人に業務上の指示を行っていない場合は残業代を支払うべきといえます。支払わなければ労働基準法37条に違反します。
会社には、残業代稼ぎをする人の業務量・業務時間に必要な時間を計算・把握して、きちんと業務上の指示を行うことが求められます。

このように、残業代稼ぎであったとしても、原則として残業代の支払いは行うべきと考えます。

残業代稼ぎのリスク

残業代稼ぎをすることにはさまざまなリスクが伴います。そこで、残業代稼ぎをすることのリスク3つをご説明いたします。

残業代がないと、生計を立てられなくなる

残業代稼ぎを行っている人は、残業代が生活費として絶対に必要だと考えている人です。実際に、残業代がないとさまざまな支払いが苦しくなる方は多いといわれています。しかし、このように残業代をあてにしていると、将来的に生計を立てられなくなるリスクを背負うことになるのです。

ノー残業の社会的浸透により、生活できなくなるリスク

というのも、最近では「ノー残業デー」「在宅ワーク推奨」など、残業は極力しない方向に世間の流れが進んでいます。できるだけ少ない時間で、成果を出すという欧米式の仕組みが良いとされているのです。このような流れがもっと進んでいくと、残業が必須の人でも強制的に残業ができない方針に変わっていく可能性が高いといえます。

そうすると、残業代で生活費を賄っていた人は、これまで通りの暮らしができなくなってしまうというリスクを背負うことになるのです。

このように、残業代がないと生計が立てられなくなってしまう可能性があります。

出世や転職ができなくなる

出世すると、残業代はつきません。というのも、社員を管理する側に回るため、その分基本給は高くなるものの、残業代がなくなってしまうからです。
これまで残業代でなんとか生計を立てていた人は、せっかく出世したのに給料が減ってしまうという結果になってしまうかもしれないのです。このような結果を恐れて、昇進を断るというケースも中にはあるようです。

残業で稼げてしまうこと自体がキャリアアップの妨げに

また、最近では転職でキャリアアップを目指す人も少なくありません。転職はリスクよりも成長につながるという考えが少しずつ普及しています。個人の成長のために転職をするというのは、若い世代では一般的になりつつあります。新しい場所でチャレンジすることが昇給のチャンスになるのであれば掴むべきですが、残業代を稼ぐことに集中しているとこのような機会が閉ざされてしまいます。

残業代稼ぎを行うと、「時間内に仕事ができない」という低評価を付けられてしまい転職の際も困った結果になってしまうことが考えられます。
また、何より本人が転職自体も遠ざけるという結果になってしまう可能性があります。

このように、出世や転職が遠ざかるというリスクがあるのです。

同僚・上司に嫌われる、会社の空気が悪くなる

最後に、仕事がやりづらい状況になってしまうリスクを抱えることになります。
仕事を効率よく回していくためには、周囲との協力関係が必要不可欠です。お互いに協力して助け合うからこそ、社内の空気もよくなり、風通しの良い職場環境が生まれます。

しかし、個人の生活費だけを考え残業代稼ぎを行っていると、周囲からは批判の目にさらされます。例えば、以下のような声があります。

  • 自分は時間内に終わらせているのに、不公平だ
  • 残業代稼ぎはずるい
  • 社内で「残業はしない」ルールがあるのに、破っている
  • 必要のない残業で給料が増額されるのはおかしい

インターネット上で「残業代稼ぎ」を検索しても、批判の声が大きく、会社の損失だという声も多いのです。会社の空気が悪くなり、「あの人は残業代稼ぎをする人」というレッテルが貼られてしまったら、本当に残業が必要な場合でも信じてもらえず、会社内全体に「残業=悪である」の空気を作ってしまう可能性もあります。
このように、残業代稼ぎが常態化すると同僚や上司に嫌われてしまうばかりか、評価が下がってしまう可能性もあります。会社内の空気も悪くなるリスクが伴います。

残業代稼ぎをする背景・理由

残業代稼ぎには悪いイメージが付き纏いますが、これをしなければいけない社会背景や理由も知っておくべきです。そこで、残業代稼ぎが横行する背景・理由についてご説明します。

「働き方改革」の影響

2019年4月から施行された「働き方改革関連法」ですが、これにより労働基準法などの労働関連法の改正が行われました。ここ数年取り上げられることが多くなった「過労死」の問題を防ぐために、残業できる時間に上限が設けられるようになったのです。
具体的には残業時間は、原則として月に45時間までとなりました。1年では360時間以内で、繁忙期など残業がやむを得ない場合であっても、月に100時間未満・年720時間以内
に抑えなければいけません。これを破ると「6ヶ月以下の懲役または30万円以下」の罰則が科されることになりました。

業界によっては、残業がないと難しい会社もあると思いますが、厳しい残業時間規制に変わったことで、「ノー残業デー」などが増えています。
残業規制があれば、残業代稼ぎをする人は少なくなるはずですが、実際上減っていない会社もあります。残業代で月収の不足分を補っていた人は「残業ができる日はできる限り残業をする」という対応を取る人も増えているのです。

このように、働き方改革の影響で残業代が極端に減らされないように、守りの姿勢に入っている方が残業代稼ぎを行っているという背景もあります。

基本給が少ないから

残業代稼ぎは、生活費のために行っているという方がほとんどです。そうすると、十分なお給料を受け取っている場合は、残業代稼ぎの必要はなくなります。
実際に、残業をする人は、「給料が安い」、「一時的な支払いのためにお金が必要」という話をすることが多いそうです。

つまり、毎月の手取りが少ないことが大きな要因として挙げられます。基本給が低いことが原因であり、基本給だけでは生活できない実態があるということです。残業あっての給料システムに慣れている方は、残業代なしで生計が立てられなくなるのも無理はありません。

会社によっては、基本給が10万円程度という方もいるのです。残業代が稼げないなら、仕事が終わってから副業をするという方も増えています。もっとも、残業あっての制度設計がうまくいかないことは、働き方改革が行われていることからも明らかです。
長時間労働が当たり前になってしまうと、生きるエネルギーが奪われてしまい、過労死などの問題も発生します。残業代稼ぎを辞めさせるためには、雇用主が残業させない代わりに、基本給を上げるなどの措置が必要なのかもしれません。

このように、基本給が少ないことが残業代稼ぎの理由の1つとして挙げられます。

家のローンなどの支払いが多いから

30代、40代になってくると、会社での責任が増えるだけでなく、家庭における責任も大きくなります。特に、夫婦のどちらかの給与に依存している場合は、ローンの支払いに苦慮している方も多いのではないでしょうか。

家を買ったばかりで、ローンの支払いのために残業を増やしたという方もいます。子どもの習い事や塾の費用、留学費用などさまざまな用途でローンを組んでいる方は多いはずです。
家のローンや子どもの教育ローンなどで支払いが大きいという場合、「明日から残業なしでお願いします。」といわれても、困ってしまいます。
月々たったの1、2万円だったとしても、支払いに苦労している場合は生活に大きな影響があります。

現在の会社の基本給では、ローンや月々の支払いがどんどん難しくなると考える方は、転職などでキャリアアップを目指す必要があるかもしれません。

このように、ローンの支払いなどに回すために残業稼ぎをしなければいけないという理由があります。

家に帰りたくないから

最近では「男性も家事をするべき」という考えが一般的になりましたが、これが嫌だという男性も少なくないようです。ノー残業デーの日に早く変えると、家で家事をさせられる、育児をさせられる、という理由から「家に帰りたくない」という人もいます。

褒められる理由ではありませんが、「家に帰りたくない」という方は一定数いるのです。
例えば、50代のサラリーマンの男性で、これまでずっと妻に家事や育児を任せてきたという方は、家に帰って何かを手伝おうとしても何から始めてれば良いかわからないという方も多いはずです。何かやろうとしても、妻に嫌がられてしまったり、邪魔者扱いされてしまうと、家事をする気も失せてしまいます。
また、すでに「家に居場所がない」という方もいます。これまで仕事一筋で、家庭は犠牲にして働いてきたのに、いきなり「帰れ」といわれても困るというものです。家に帰っても、居場所がないため、残業のない日は外で時間を潰して変える方も多いそうです。

男性の例ばかり紹介しましたが、女性でも「ノー残業デー」が嫌だという方はいます。30代までは、早く仕事を終わらせて充実したプライベートを目指してきたという人でも、独身の友達が結婚・出産でいなくなり、時間ができたというケースです。
早く帰る必要もないため、いつの間にか仕事をゆっくりするようになり、残業代稼ぎをするようになってしまったという方もいます。
趣味などに没頭できる人は大丈夫ですが、目的を持つことに疲れた、キャリアアップのために頑張ってきたが疲れてしまったという方は、残業代稼ぎに陥ってしまうことがあるのです。

このように、「家に帰りたくない」という理由で残業代稼ぎをする人もいます。

残業代稼ぎを理由に会社が支払ってくれない場合の対処法

残業をすること自体は悪ではありません。繁忙期などは、残業の必要があるケースもあるでしょう。
やむを得ない理由であるのに、「残業代稼ぎだ」と言って、会社が残業代を支払ってくれない場合もあります。そこで、残業代を支払ってくれない場合の対処法をご説明します。

残業を減らす習慣を身につけよう

やむを得ない理由の残業は仕方ありません。しかし、もし残業代稼ぎに陥ってしまっている場合は、残業代稼ぎから脱却を図るのも1つの方法です。
ご説明したように、残業代で生活費を稼ぐことには大きなリスクが伴うため、残業自体を徐々に減らしていくことも大切です。

また残業を認めない会社で働いている方も、残業をできるだけ減らすことで面倒なことに巻き込まれずに済みます。
残業を減らす方法としては、以下を実践してみてください。

  • 重要ではない仕事は明日にスケジューリング
  • 重要な仕事は朝に終わらせる
  • 残業強制の空気は無視する
  • 残業代は貯金にまわす
  • 空いた時間で副業や趣味をする

重要ではない仕事は明日にスケジューリング

まずは、重要でない仕事で残業しないようにしましょう。明日に回せる仕事は明日に回した上でスケジュールを立てます。残業が状態化していると気づかないことも多いですが、意外と後回しにできる仕事は多いものです。

重要な仕事は朝に終わらせる

次に、重要な仕事は最初に行うことです。どうしても外せない仕事も中にはあります。その時は、できるだけ午前中に終わらせてしまうのが賢い選択です。午後は、ランチ後の眠気で集中できない方も多いので、重要な仕事は朝に終わらせます。

残業強制の空気は無視する

そして、「残業しなければいけない空気に飲まれないこと」も大切です。会社によっては、残業する人が偉いというケースもあるでしょう。働き改革も実施しているのに、上司が古い考えの人で残業しないと評価してもらえないという場合もあります。
しかし、無駄な残業は自分の将来に悪影響と考え自律した考えを持つことも大切です。会社の体質が古い場合は、転職も視野に入れてください。

残業代は貯金にまわす

最後に、やむを得ない残業があった場合は、その残業代は貯金に回しましょう。残業代に依存しない生活を身につけることが大切です。
生活費に当てるのではなく、貯金や投資、臨時出費用に貯めるなどにすれば、残業代稼ぎに依存せずに済みます。

空いた時間で副業や趣味をする

残業をしないことで空いた時間があるなら、副業を始めるのもアリではないでしょうか。お金が稼げるだけでなく、時間の有効活用になります。
また、趣味を見つけるのも良い方法です。没頭できる趣味がいつの間にか本業に変わったという方もいます。

残業代請求のための証拠を集める

すでに行った残業代が支払われない場合は、残業代を会社に請求することを考える必要があります。

もっとも、在職中に請求すると「会社に居辛くなる」などの問題が発生するため、退職後に請求される方も多いです。
在職中の場合は、弁護士に相談するなどして、話し合いの機会を持ち、慎重に進めていくことをおすすめします。

残業代の請求には証拠が重要

どちらにしろ、残業代を請求する場合は、証拠が必須です。
残業代を支払ってくれない企業は、残業自体がなかったと主張するケースもあるため、残業したことの証拠を在職中に集めておきましょう。

証拠として一番有力なのは、タイムカードです。実働時間が記載されているため、証拠として使えます。
タイムカード以外でも、シフト表や出退勤表、会社へ出入りする際のIDカードの記録、PCのログイン・ログアウトのデータ、SUICAなどの記録も証拠になります。

残業代を請求するためにも、証拠を集めることから始めましょう。弁護士に通した上で、交渉を行い、それがうまくいかない場合は労働審判・労働訴訟の選択肢もあります。
このように、在職中に残業代を請求するためには、まずは証拠を集める必要があるでしょう。

転職して、前の会社に残業代を請求する

残業を強制するのに残業代は支払われない、基本給が低すぎて残業なしでは生活できないという場合は、転職を1つの選択肢として加えてください。
転職で今より給料の良い会社、基本給の高い会社を見つけることで、残業代に依存しなくても良い環境が手に入ります。

そして、前の会社に未払いの残業代があるという場合は、残業代請求を行いましょう。
転職後なら、精神的にも安心して取り組むことができます。在職中に証拠をしっかりと集めて、その上で転職活動を始めることをおすすめします。

残業代の請求権には時効がある。

退職後に残業代を請求する場合は、1つだけ注意点があります。残業代の請求権は2年で時効となることです。
具体的には、2020年1月分の未払い残業代は2月末締めの支払いであれば、2020年2月末から請求権があります。
つまり、2022年の2月末には2020年1月分の残業代請求権は時効となり、請求できなくなってしまうのです。

時効で残業代が請求できなくなるのは残念ですので、早めに専門家である弁護士に相談して、残業代請求を進めていくようにしてください。

残業代を支払ってもらえない場合は、弁護士に相談を

残業代稼ぎをすることにはリスクが伴いますが、実際上社内の働き方改革が進んでおらず、やむを得なく残業をしている方も多いでしょう。そうであるのに「残業代が支払われない」などの問題がある場合は、弁護士に相談するべきです。

割増賃金の支払い請求権は正当な権利です。会社が残業代の支払いを認めない場合は、法的手段に出る必要があります。ご説明したように、残業代請求の時効は2年とあっという間です。早めに相談して、きっちりと請求をしましょう。

  • シェア
  • ツイート
  • 追加

関連記事一覧

弁護士に相談したら、未払い残業代が請求できた
残業代を請求することができるのはどんな人?
1日8時間以上、週40時間以上働いている人
次の項目に当てはまる人は、すぐに弁護士に相談
  • サービス残業・休日出勤が多い
  • 年俸制・歩合制だから、残業代がない
  • 管理職だから残業代が出ない
  • 前職で残業していたが、残業代が出なかった
未払い残業代請求に強い弁護士を探す
残業代請求に不安を感じる方へ

一緒に読まれている記事

残業代が支払われない?お気軽に相談を!

今すぐ弁護士を探す