高プロ(高度プロフェッショナル制度)とは?「働き方改革」の残業代への影響
長時間労働の改善や生産性の向上、柔軟な仕事環境を整え労働力を高めるための働き方改革。その中でいまニュースとなっているのが高プロ(高度プロフェッショナル制度)です。この制度は高度に専門的な労働をする人が労働時間や残業などの制限にとらわれない契約になるもので「成果に見合った給与をもらえる」「定額働かせ放題だ」と賛否両論です。
こちらでは高度プロフェッショナル制度の概要とその悪用についての対処法を紹介します。
- 残業代を請求することができるのはどんな人?
- 1日8時間以上、週40時間以上働いている人
- 次の項目に当てはまる人は、すぐに弁護士に相談
- サービス残業・休日出勤が多い
- 年俸制・歩合制だから、残業代がない
- 管理職だから残業代が出ない
- 前職で残業していたが、残業代が出なかった
この記事で分かること
高度プロフェッショナル制度とは?
高度プロフェッショナル制度とは高度な専門知識を要する仕事に就く労働者へ支払う給与を一定に決め、労働時間や休憩時間の制限を外すものです。近年、生産性の向上により労働時間での判断になじまない頭脳労働が増えてきていることや仕事と賃金の公平性からこのような制度が必要とされていました。
実は高プロ制度は第一次安倍内閣の時から議論されていました。
※現在、基本となる法改正が可決した段階に過ぎずその具体的な適用範囲や細則は省令で決められます。
高度プロフェッショナル制度は残業という概念がない
高度プロフェッショナル制度の特徴は何と言っても残業という概念がないことです。言ってしまえばプロ野球選手などと同じような年俸制で休憩時間についても規制がありません。現在でも外資系の企業は年俸制を取っていますがあれは労働時間に対する給与を年俸で決めているに過ぎず、労働基準法に基づいた割増賃金が払われます。
逆に言えば高プロ制度が適用された労働者は仕事が早く終わりさえすればさっさと帰ることができます。これまでの労働時間=賃金から仕事内容=賃金に評価が変わるわけです。
目的は無駄な残業を減らすことにあるのか?
現在、高度プロフェッショナル制度はその具体的な適用範囲や条件が決まっていない状況ですが、SEやコンサルタント、クリエイティブ、管理部門など様々なホワイトカラー労働者が対象となることが予想されます。
「プロフェッショナル」というくらいですから高年収であることも条件で今のところは平均給与の3倍である年収1075万円以上が想定されています。
この制度の目的は労働時間が不安定な労働者を働きやすくすることと、年功序列のせいで給与や残業代の過払いが起きている中高年社員を適正に評価できるようにすることが目的と考えられています。
よくよく考えれば同じ仕事をしてもダラダラと働いた方が評価されるなんておかしな話ですね。
もちろん、労働時間と生産性が直結しやすいブルーカラー労働者の場合は給与が高くても高度プロフェッショナル制度の対象となりづらいです。
裁量労働制との違いは労働時間の制約がないこと
労働時間にとらわれずに働く、といえば裁量労働制が思い浮かびます。こちらは企画業務と専門業務について決められた制度ですが「○時間働いたものとする」という内容である点が高プロ制度と異なります。高プロ制度はそもそも○時間働くという取り決めがないからです。
また、裁量労働制の場合は残業代は出なくても深夜割増や休日割増は出るので高プロ制度よりも労働契約としての意味合いが強いです。ちなみに高度プロフェッショナル制度の実行とともに裁量労働制の範囲が拡大されようとしています。
高度プロフェッショナル制度で得する人、損する人
高度プロフェッショナル制度は悪い側面が取りざたされがちですがしっかり働ける人は得し、そうでない人は損をする制度であることは間違いありません。特に、今はわが国でも転職市場が成熟しつつあるため著しく不利な条件を突きつけられづらくなっています。
仕事のできる人、若い人は得をする
高プロ制度は仕事と給与がしっかり関連付けされる制度です。つまり仕事量が多い、仕事の質が高い人はそれだけ給与が高くなります。年功序列のはびこる日本においては仕事ができるのに給与が低い若者がある程度いるため、その人たちも正当な評価を得られるでしょう。
新卒でも年収400〜500万円企業が話題になりましたが、これも「若いうちは安くても我慢しなければならない」という制約がないからです。
世の中には長く働きたい人もいる
残業代請求だ労働基準法違反だと言われている世の中にも関わらずとにかく仕事をしたい人は少なくありません。クライアントのため、自分のやりがいのために労働時間が邪魔だという人にとっても高度プロフェッショナル制度は味方になります。
賃金アップやヘッドハンティングの根拠がわかりやすくなる
高プロ制度がうまくいけば仕事の成果に応じて思うように給与を上げることができますし、不満であれば転職先を探しやすくなります。いうまでもなく求められる成果と支払われる対価が明確になるからです。
仕事に見合わない給与をもらっていた人は不利になる
一方、仕事に見合わない給与をもらっていた人は高プロ制度で不利になります。仕事が遅いと同じ仕事量でも人より長い労働時間を要するため残業という概念のない働き方では思ったほど稼げなくなります。
残業をして給与を上乗せしたいのなら単純に時間を伸ばすのではなく仕事量のパフォーマンスを上げることが大切になるでしょう。
年収に全く見合わない仕事をしている場合は給与の大幅な見直しも考えられます。
年功序列で給与が上がらない
年功序列で給与が上がらなくなるのも高プロ制度の特徴です。ただ長く会社に在籍しただけで給与が上がるというビジョンは改めた方が良さそうです。
高度プロフェッショナル制度に潜むリスクを考える
このように行動プロフェッショナル制度はちゃんと仕事をする人が得をする、正当な給与をもらえる素晴らしい制度なのですが、正しく運用されないリスクも十分に考えられます。これまでも制度の悪用による労働問題が散見しているため高プロ問題も手放しに歓迎できると限らないのです。
労働契約が不明確=定額働かせ放題になってしまう
高度プロフェッショナル制度の運用を阻む最大の障壁は日本的な働き方です。わが国の正社員は会社の家族、忠誠を誓う存在と見なされるきらいがあり、会社の命令で好きなように働かせることができました。雇用契約はあるもののその中身は非常に曖昧で「何をすればその日の仕事が終わるのか」分かりません。
それでも時間と給与が紐付けされていたので労働時間が長くなればその分の残業代が支払われていました。しかし高プロ制度が実施されるとすべき仕事が不明確な状態で残業代が払わされなくなります。その結果、報酬と見合わないほど多くの業務を押し付けられてしまいかねません。
高プロ制度が定額働かせ放題、残業代ゼロ法案と言われているのはこのためです。
高プロ制度を正しく運用するためには労働契約において仕事内容を明確に決めること、そして契約にない仕事を押し付けられた時にしっかり公的機関や弁護士が対応できることが大事です。
報酬の相場を知るために転職エージェントを使おう
高プロ制度が実施されるとこれまで以上に「この仕事で割に会う報酬がもらえているのか」気になります。もしかしたら安すぎる給与、厳しすぎる労働環境で働かされている可能性もあります。このような場合でも他の会社の相場やあなたの市場価値を知っていればより良い職場を見つけられます。
逆に、他の選択肢を知らないままブラック企業に搾取されるとまさしく高プロ制度の悪用と呼べる自体が起こります、適正な労働環境や本来得られる待遇に疑問を持ったら転職エージェントの利用がオススメです。転職サイトと違いエージェントが希望者の価値を最大化できるオファーを持ってきてくれます。
参考:転職するならジョブポタ | 転職・面接対策や転職エージェント探しのポータルサイト
年収要件が下がると予想される
高プロ制度の適用が平均年収の3倍、というのは現在の方針であって法律による規定ではありません。政府や経団連は年収要件を下げ、できれば年収400万円以上の労働者に適用させたいと考えているようです。しかし年収400万円以上の労働者であればホワイトカラーであっても高度プロフェッショナルと呼べないでしょう。労働時間での規制が見合わないほど成果が変動することも考えにくいです。
ここまでの引き下げが目論まれているとさすがに定額働かせ放題を疑ってしまいますね。
高プロ制度の適用に合意しないと不利益を被る可能性が…
高プロ制度についてはその適用が労働者の合意なしにできないものとなっています。しかし高プロ制度の適用に合意しないことで左遷や減給、職場でのハラスメントなどさまざまな弊害が予想されます。どれも労働法によって禁止されていますが閉鎖的な環境であることや企業への制裁が軽いこと、労働者の交渉力が弱いことから労働者を守りきれず不承不承で高プロ制度を受け入れることが考えられます。
高プロ制度の強制や、高プロ制度に見合わない労働者への搾取が行われないように厳しいチェックが求められます。
制度の悪用で残業代が支払われないときは
高プロ制度が悪用された場合は弁護士に相談しましょう。労働問題は労働法をもとに解決が可能なので、泣き寝入りしないでください。これまでも高プロ制度以外に様々な制度を悪用するブラック企業が見られました。
高プロ制度の強要や報復は弁護士が対応
強要されたり錯誤があった契約は撤回することができます。高プロ制度の適用が脅迫によってなされた場合はそれを無効にするため弁護士に相談しましょう。高プロ制度を受け入れないことによる不利益な扱いやハラスメントについても弁護士を立てることで止めさせることや慰謝料を請求することができます。
高プロ制度の適用が無効となった場合はこれまでの雇用契約で給与が計算され未払いの残業代を請求できるかもしれませんが今後の動向が気になるところです。高プロ制度への対応方法を知りたいという段階でも弁護士に相談しておくと行動しやすいですね。
こんな制度の悪用、されていませんか?
他にもこのような制度の悪用が見られます。もし、あなたが被害を被っているならすぐに残業代請求をしてください。残業代は2年の消滅時効があるので早ければ早いほど良いです。
管理監督者は経営に関わる人間だけ
名ばかり管理職問題で話題となった管理監督者制度ですが、管理監督者というのは経営に関わる人間でかつポストと年収が高い人間に限られます。よって管理職だからと残業代がなくなるわけがありません。迷わず残業代請求してください。
みなし残業はありえない
残業時間を記録できない場合に一定の時間残業したとみなす制度ですが、スマホで連絡を取れる時点でみなし残業は適用されません。営業職の方は特に気をつけてください。
残業代とボーナスは相殺できない
残業代とボーナスは相殺できません。全く性格の違う支払いを他の給与で充てることは労働者の不利益になるからです。同様によくわからない名前の手当に残業代を含むことも禁止されています。
新しい制度には予期せぬ問題がつきもの。高プロで不利益を被りそうなら弁護士に相談を
新しい制度が社会にどのような影響を与えるのか、それは実行されて見ないと分かりません。予期せぬ問題、想定されていた問題に問わず何かが起きたら弁護士に相談してください。労働問題は法律の問題ですから、公平に解決されなければいけません。
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