年俸制でも残業代は発生する?外資系サラリーマンが知っておくべき残業代の考え方
外資系をはじめとして年俸制の企業も今は珍しくありません。毎月の労働時間や給与が決められている月給制と違い、年俸制の場合は残業代がもらえるのでしょうか。そもそも残業代をどう計算すればよいのか迷ってしまいます。
「年俸制だから残業という概念がない」「年俸の中に残業代が含まれている」と残業代の支払いを拒まれた方はぜひ正しい知識を得てください。
- 残業代を請求することができるのはどんな人?
- 1日8時間以上、週40時間以上働いている人
- 次の項目に当てはまる人は、すぐに弁護士に相談
- サービス残業・休日出勤が多い
- 年俸制・歩合制だから、残業代がない
- 管理職だから残業代が出ない
- 前職で残業していたが、残業代が出なかった
この記事で分かること
外資系のような年俸制でも残業代をもらえる
外資系では月給制でなく年俸制が採用されている場合がよくあります。年俸制だと労働時間に基づく給与という認識が薄れがちですね。
しかし、年俸制であっても残業代は発生します。
所定労働時間以上の残業代はもちろん、時間外手当や休日手当、深夜・早朝手当も請求できます。
年俸制でも労働者としての権利がある
年俸制でも残業代が認められる理由はとても単純。あなたが労働者だからです。労働者とは契約の内容や職種に問わず「雇用」という形態で働いているひとすべてを指します。
たとえ年俸制であっても普通の会社員と同じように決まった時間に出社して、上司の指揮監督下で仕事をしているのなら労働者です。
労働者の権利を守る法律は労働基準法で、外資系でも年俸制でも労働基準法に則って残業代や各種割増手当を支払われる権利があります。
「契約書で残業代がもらえないという合意をした」人もご安心ください。労働基準法は契約の自由が許されない強行規定ですから、未払いの残業代をもらう権利は残っています。
プロ野球選手は労働者か?
外資系以外で年俸という言葉を良く聞くのはプロ野球やサッカーの選手だと思います。野球やサッカーの選手は個人事業主かつ請負契約をしていることになっています。
しかし、プロ野球は試合日程が管理されていますし良いプレーをすることも「具体的な成果物」とは言えません。実は法的な結論が無く宙ぶらりんになっています。
一方賞金をもらえるテニスプレーヤー等はこのような問題の対象ではありません。
年俸制でも給与を毎月支払うもの
年俸制とは給与を年1回で支払うものでなく、年俸として決めた給与を月ごとに分けて、または賞与も合わせた分割で支払うものです。つまり、労働者には月給と同じような形で入ってきます。
したがって年俸制の残業代計算も実は難しくありません。
年俸制は「残業代が含まれている」場合は限定的
年俸制の良くある勘違いとして「働く時間に応じた給与を支払わなくてよい」というものがあります。年俸制であっても雇用関係がある異常残業代を支払わなければいけませんし、その誤解をいいことにサービス残業が横行している現実があります。
では、契約書に「年俸には残業代も含まれている」と書かれていたらどうでしょう。残業を前提として年俸を高めに設定していたと反論されれば言い返せないように感じます。
しかし、年俸制はあくまで所定労働時間に対する給与を年単位で定めたものですから残業代が含まれないのが一般的です。そもそも、月によって変わる残業代を年俸に含めてしまえば正確な残業代を払えるわけがありません。
契約によって年俸に残業代が含まれる場合
契約によって年俸の中に残業代を含めることは、可能です。そのためには契約書に以下のことを書かなくてはいけません。
- 年俸とひと月ごとに支払われる金額
- ひと月ごとに支払われる金額の内いくらが残業代にあたるか
- その残業代は何時間分のもので時間外手当がいくら上乗せされているか
繰り返しますが、残業代は働いた時間に応じて支払わなくてはいけません。よって契約書で年俸に残業代を含めるときも「残業代として算定される時間」を明示することが条件となります。
もちろん、残業代は基本給を所定労働時間で割った金額でなければいけないし、契約書で定めた以上の残業が発生した時は新たな残業代を上乗せしなければいけません。
「契約書に残業代と基本給の内訳が違法」なら残業代は労働基準法に則った額がもらえます。
出来高の分は残業代上乗せとなるのか
外資系企業の中では給与の一部に出来高払いを採用している場合があります。この歩合の部分は賞与と扱われる場合もありますし、給与の一部と扱われる場合もあります。給与の一部として扱われる場合は残業代はつかないものの時間外手当がもらえます。
年俸制における出来高払いの扱いが気になったら弁護士に相談することがおすすめです。
契約に不備があれば年俸+残業代となる
契約において年俸制だから残業代が支払われないと言われる場合をまとめるとこの3条件となります。
- 契約書に残業代の時間と内訳が書かれている
- 残業代の算定方法が適切である
- 契約書に定められた以上の残業が発生していない
よって、契約によって残業代の明記がない場合は間違いなく残業代未払いですし、契約書に不備がある場合も残業代請求に結びつきます。計算がおかしいと思ったら契約書と実態を弁護士に見てもらいましょう。思わぬ落とし穴に気づけます。
会社は「管理監督者」の意味を勘違いしている
残業代請求の根拠が明らかになったとしても「あなたは管理監督者だから残業代が発生しない」と支払いが認められない場合も良くあります。確かに管理監督者にあたる場合は仕事の仕方が労働者と異なるため労働基準法が一部適用されなくなります。
ただ、だからといって経営者が管理監督者を好きに働かせられるわけではありません。
それどころか、あなたが法律上の管理監督者にあたらない場合も良くあります。
管理監督者の条件は厳しい。“名ばかり管理職”に要注意
管理監督者とは労働者の仕事を管理する存在のことを言います。会社においては係長や課長、部長をとわず上司が部下を管理するものですが、役職を持つ程度では管理監督者とは言えません。
管理監督者とは社員を管理する、つまり経営や人事についての強い権限を持つ人に限られます。つまり、役職を持つだけでは管理監督者にならないのです。
昨今問題となる名ばかり管理職も、管理監督者=残業代を払わなくていいという勘違いを利用した悪質な行いです。
- 経営会議に参加している
- 会社でも数%というトップクラスの地位にある
- 社内における収入が非常に高額である
少なくともこの3つに該当しなければあなたは管理監督者とみなされません。よって部長クラスでも管理監督者の制約を受けません。
管理監督者であっても深夜・早朝手当賃金はもらえる
仮に管理監督者であっても割増賃金はもらえます。そもそも、管理監督者が適用されないのは労働時間の制限と休日の制限、休憩についてです。
よって、深夜・早朝手当は通常の労働者と同じようにもらえますし有休も付与されます。管理監督者だから有休がないというのも悪しき慣習です。
年俸制における残業代の計算と注意点
年俸制における残業代の計算方法と注意点を紹介します。年俸制には年俸制ならではの方法と注意点があるのでよく読んでください。
年俸制における残業代計算の方法
年俸制における残業代計算はこのように行います。
- 年俸を所定労働時間で割る
- 時給換算したお金を実際に働いた時間でかける
- 実際に働いた時間でもらえる給与-所定労働時間=残業代の合計
- 時間外手当、休日手当、深夜・早朝手当を加算する
基本的には月給制と同じですね。ただ、年俸制であることと1か月の日数がそれぞれの月で異なることから月数でなく日数で割りましょう。
一部の残業代が年俸に含まれる場合
一部の残業代が年俸に含まれる場合は、契約書に決められた労働+残業時間と実際に働いた時間の差が残業代の根拠となります。
年俸制における残業代請求の方法
年俸制における残業代請求の方法は月給制や時給制の場合と一緒です。残業代未払いの根拠となる証拠を押さえて、会社に請求します。会社がそれに応じなければ弁護士を立てて交渉をし、最後は訴訟となります。
ただし、年俸制の場合は証拠集めや契約書の精査の重要性が増します。
残業の証拠は勤怠記録だけではない
どうせ給与が年単位で決まっているからとタイムカードを切っていない、勤怠管理を正確にしていない場合が年俸制の企業によくあります。出社と退社時間の証明ができないことには残業代の請求ができないため月給制に比べて厄介です。
証拠保全手続きも考えられますが、企業がそもそも勤怠記録を持っていなければ意味がありません。
そんな時は退社時間について参考となる証拠を用意します。例えばパソコンのログイン記録やメールの記録です。特に外回りをしていた場合はメールの記録が重要となります。記録が無ければ同僚や家族の証言に頼ります。諦めないでください。
雇用契約書の重要度は非常に高いです
年俸制の残業代計算は契約書の中身によって大きく変わります。月給制に比べて契約書が理解しづらいので弁護士と一緒に確認することが望ましいです。
残業代請求は内容証明郵便で
残業代の請求は「請求した」という証拠の残る内容証明郵便を用いましょう。内容証明郵便は郵便局の手続きで送れます。
残業代の支払いに応じなければ弁護士を立てます
残業代の支払いに応じなければ弁護士を立てて和解交渉をします。企業としても大事にしたくないはずですから訴訟を避けるべく和解交渉に乗ってくれます。かりに訴訟となった場合でも水面下では和解交渉が続きます。
残業代の時効は2年まで
残業代の請求は気づいたらすぐに行うのが望ましいです。残業代には民法で2年の消滅時効が定められているからです。つまり2年より前の残業代は取り戻せなくなってしまいます。
時効はこちらから催告した事実があれば停止します。催告したと認められる有効な方法は内容証明郵便ですからどのように訴えるのかを考える前に残業代請求だけでもしておきましょう。
外資系、年俸制の残業代請求に強い弁護士へ相談しましょう
残業代の根拠は労働基準法にありますが年俸制の場合は残業代の計算が月給制よりも複雑ですし、契約にいくつかの特約があればその有効性も判断しなければいけません。また、労働者は会社に比べてはるかに立場が弱い存在ですから、残業代を取り戻すためには成功法以外の知識も必要です。
弁護士に相談をするなら法律を知っているだけでなく企業から譲歩を引き出せる交渉力慣れした弁護士がおすすめです。
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