残業代の計算方法~残業代請求したらいくら請求できる?

2020年6月19日28,189 view

残業代の計算方法

未払いの残業代請求をするには、まず基礎時給を計算して、それをもとに残業代を算出します。従業員が法律で定められた時間を超えて働いている場合や休日出勤をした場合は、その分残業代が割増になります。また、未払い残業代に加え、遅延損害金や遅延利息も併せて請求することができるため、ぞれらも忘れずに請求することが大切です。

弁護士に相談したら、未払い残業代が請求できた
残業代を請求することができるのはどんな人?
1日8時間以上、週40時間以上働いている人
次の項目に当てはまる人は、すぐに弁護士に相談
  • サービス残業・休日出勤が多い
  • 年俸制・歩合制だから、残業代がない
  • 管理職だから残業代が出ない
  • 前職で残業していたが、残業代が出なかった
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まずは残業代の根拠となる基礎時給を計算する

時給計算

「毎日夜遅くまで働いているのに、残業代がきちんと支払われていない!」そのような場合には、会社側に未払いの残業代請求をすることができます。従業員には働いた時間分の給与を受け取る権利があるので、きちんと請求しましょう。

基礎時給とは月給や年俸を時間給に換算したもの

基礎時給とは、支払われる給与を時間給に換算したもののことです。毎回支払われる給与を時間給に直すことで、残業代を計算するためのベースを用意することができます。

基礎時給 = 基礎賃金(月給 - 除外手当)÷ 月間所定労働時間

月給制の場合は、上記の計算式で算出します。

基礎時給 = 基礎賃金[年俸額(賞与含む) - 年間除外手当] ÷ 12ヵ月 ÷ 月間所定労働時間

年俸制の場合は、上記の計算式で算出します。

除外手当とは、「通勤手当」「住宅手当」などの福利厚生のような手当のことを指します。ここでいう除外手当は、従業員個々の状況に応じて支払われるものを言うのであって、社員全員に一律で支払われるものに関しては除外手当とはみなされないことに注意が必要です。

基礎時給を算定するときに除外手当を月給から差し引くかどうかは、支給実態に応じて判断します。

月ごとの所定労働時間がわからない場合は「173.8時間」とする

月間の所定労働時間は会社ごとに規定が異なるため、雇用契約書や就業規則などを参考にして算出します。月間の所定労働時間がわからない場合は、労働基準法の規定に基づいて算出された月間所定労働時間である「173.8時間」を使って計算することになります。

なぜ月間所定労働時間が173.8時間なのか、その根拠について考えてみましょう。

①1年間は365日なので、それを7で割ることで1年あたりの週数を算出する

  • 365(日)÷ 7(日)= 52.1428…(週)

②①で算出した週数に40時間をかけ、1年間の法定労働時間を算出する

  • 52.1428…(週)×40(時間)=2,085.7142…(時間)

③②で算出した1年間の法定労働時間を12で割ることで、月間の法定労働時間を算出する

  • 2,085.7142…(時間)÷12(か月)≒ 173.8(時間)

以上の計算から、会社の所定労働時間がわからない場合は所定労働時間を173.8時間として残業代の計算をすることとなるわけです。

基礎時給算定時の賞与の扱いは月給制と年俸制で異なる

基礎時給を算定するときには、月給制の会社と年俸制の会社で賞与の扱いが異なります。

そもそも「賞与」とは、「定期または臨時に従業員の勤務成績に応じて支給されるもの」であり、「その支給額があらかじめ確定されていないもの」のことを指します。また、基礎時給を算定するときに月額給与から控除される除外手当は、以下の2つの条件を満たすことが求められます。

  1. 臨時に支払われた賃金
  2. 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金の手当

月給制の場合に支払われる賞与は以上の要件にあてはまるため、基礎時給を算定するときに月額給与から控除することができます。一方、年俸制の場合は、賞与として支給される金額があらかじめ決められているため、除外手当には該当しないこととなります。

未払い残業代を実際に計算してみよう

計算する

では、未払いとなっている残業代を実際に計算してみましょう。しかし、単に基礎時給と残業時間をかけ合わせれば残業代の金額が出るわけではありません。1日当たりの労働時間や働いた時間帯によって時給は変化するからです。

労働時間や働いた時間帯によって時給の割増率が変わる

法律では、労働時間は1日8時間まで・週40時間までと定められていますが、従業員の働いた時間がこの基準を上回る場合、会社側は割増賃金を支払う義務があります。また、法律では週に1日以上休日を設けるよう規定されていますが、従業員がこの「休日」に働いた場合にも、会社側は割増賃金を支払わなければなりません。

ただし、所定労働時間が1日7時間など8時間に満たない会社で、所定労働時間を超えて残業をした場合、労働時間が8時間になるまではその分の残業代は割増をしなくてもよいことになっていることに注意しましょう。

①所定労働時間をこえて法定労働時間まで働いた場合

基礎時給どおり

②法定労働時間を超えて働いた場合

基礎時給の25%割増( 基礎時給 × 1.25 )

③深夜労働(午後10時から翌午前5時まで)

基礎時給の25%割増( 基礎時給 × 1.25 )
ただし、法定労働時間を超えて労働したのがこの深夜の時間帯にかかる場合は
基礎時給の50%割増( 基礎時給 × 1.5 )

④法定休日の労働

基礎時給の35%割増( 基礎時給 × 1.35 )
ただし、法定労働時間を超えて労働したのがこの休日にかかる場合
基礎時給の60%割増( 基礎時給 × 1.6 )

大企業の場合は割増率に要注意!

平成22年4月1日に施行された改正労働基準法により、長時間残業の強固な抑制を目的にある条件を満たす大企業を対象に、残業代の割増率が大幅に引き上げられました。

残業代の割増率がアップになる企業

具体的には、以下の条件にあてはまる大企業が残業代の割増率アップの対象になります。

以下の条件にあてはまる大企業が残業代の割増率アップの対象に
小売業 資本金の額若しくは出資の総額が5,000万円超又は常時使用する労働者数が50人超である場合
サービス業 資本金の額若しくは出資の総額が5,000万円超又は常時使用する労働者数が100人超である場合
卸売業 資本金の額若しくは出資の総額が1億円超又は常時使用する労働者数が100人超である場合
その他の業種 資本金の額若しくは出資の総額が3億円超又は常時使用する労働者数が300人超である場合

残業代が割増になる条件

残業代の割増率がアップするのは、1か月間の残業時間が60時間を超えた場合、その「60時間を超えた部分」のみが対象となります。但し、ここで言う「残業時間」には「法定休日の労働時間」は含みません。

割増率はどうなる?

では、条件に該当する大企業では、残業時間が60時間を超えた場合、割増率はどれくらいアップするのでしょうか。

①1ヵ月における残業時間が60時間を超えた場合

  • 基礎時給の50%割増( 基礎時給 × 1.50 )

②1ヵ月における残業時間が60時間を超え、且つ、その残業時間が深夜に該当する場合

  • 基礎時給の75%割増(60時間越え50%+深夜労働25%。基礎時給×1.75)

③法定休日の労働

  • 従来通り、基礎時給の35%割増( 基礎時給 × 1.35 )

60時間を超えた分は代替休暇を取得できるが、利用は進まず

法律上、1か月あたりの残業時間が60時間を超えた分については、従業員は代替休暇を取得できることになっています。しかし、実際に代替休暇の制度を導入するには必要事項を定めた労使協定を結ばなければならなかったり、労働時間の管理が複雑になったりするため、実際に代替休暇を導入する企業はあまりないのが現状です。

遅延損害金・遅延利息も請求するのを忘れずに

忘れずに

未払いの残業代請求をするときに忘れてはならないのが、遅延損害金および遅延利息を請求することです。本来ならば給料日にもえらえるはずの残業代が給料日を過ぎても支払われていないわけなので、それらを請求するのは従業員にとって正当な権利だと言えます。

未払い残業代にプラスして遅延損害金・遅延利息も請求できる

支払いが遅れていることによって損害が生じているとして、従業員は未払いの残業代だけでなく、それに付随して遅延損害金を会社側に請求できることになっています。また、その従業員がすでに退職していれば遅延利息という形で請求することが可能です。

遅延損害金とは

遅延損害金とは、本来支払われるべきものが未払いの状態になっているときに、本来支払われるべきお金に付加して相手方に請求できるお金のことを言います。遅延損害金とはその従業員が在職中である場合に支払われるもので、利率は一般的な営利目的の会社の場合は年6%、信用金庫や社会福祉法人などの非営利の法人では年5%となっています。

遅延利息とは

遅延利息も、遅延損害金と同様に本来支払われるべきものが支払われていない場合に相手方に請求できるお金のことを指しますが、遅延損害金が従業員の在職中に支払われるものに対し、遅延利息は当該従業員の退職後に支払われるものになります。その利率は年14.6%となっており、未払いの残業代の支払いが遅れれば遅れるほど、遅延利息が非常に高額になる可能性があります。

遅延損害金・遅延利息を請求する方法

遅延損害金も遅延利息も、まずは具体的な金額を計算した上で、その合計金額を会社側に提示します。最初は内容証明郵便を送って裁判外での交渉を行いますが、会社側が支払いに応じなければ、法廷での労働審判や訴訟へと進むことになります。

遅延損害金の場合

基礎時給をもとに各月の残業代を計算し、本来その残業代が支払われるはずだった支給日から現在までの期間について発生する利息の金額を算出し、その合計金額を相手方に提示して請求します。具体的な計算式は以下の通りです。

  • 遅延損害金 = 元金 × 遅延損害金年率 × 遅延した日数 ÷ 365日

例:3/25が支給日だった2月分の残業代10万円を9/25に請求する場合の遅延損害金は

  • 10(万円)× 0.06 × 185(日)÷ 365(日)≒ 3,041(円)

となります。1か月分の遅延損害金だけを見るとその金額は微々たるものかもしれませんが、これが何か月分にもなると、数万円単位に膨れ上がる可能性も十分にあります。

遅延利息の場合

遅延利息の場合は、退職日の翌日から請求日まで利息を年率14.6%として計算します。

例:3/31に退職したが、未払いになっている残業代10万円を9/30に請求する場合の遅延利息は以下の通りです。

  • 10(万円)× 0.146 × 184(日)÷ 365(日)≒ 7,359(円)

残業代請求に困ったら弁護士に相談を

残業代はひと月ごとに計算しなければならない上に、労働時間や働いていた時間帯によって割増率も変化するため計算の仕方が非常に複雑になっています。そのため、未払いの残業代請求をしようと考えるときは、労働問題に詳しい弁護士に相談して、正しい残業代を計算してもらうのがベストでしょう。

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