残業代未払いで裁判!提訴前に確認すべき訴訟のメリット・デメリット

2020年6月19日10,166 view

労働問題の裁判が時々ニュースを賑わせますが、どんな事件でも裁判は最終手段です。判決という覆せないものを得られる一方で相当の時間とお金を費やさなければいけません。

こちらでは提訴する前に確認したい訴訟のメリットとデメリット、そして訴訟の他にできる残業代請求の仕方を紹介します。

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残業代請求で裁判を利用するメリット

裁判を起こす、要するに訴訟は原告と被告の主張や証拠をもとに審議を行い、裁判官が判決を出すものです。判決とは法的にはこれが正しいというものですから、労働者が裁判に勝てば会社が残業代の支払いを拒む理由がなくなります。

裁判は専門的な法理解だけでなく、豊富な判例知識も必要です。間違いなく弁護士の力が必要になるでしょう。

決着がつく

裁判の終わりは事件の決着です。もし、裁判の結果に不服だったとしても判決が出てしまえば覆せません。判決に従わないことは許されず、残業代の支払いを拒む会社に対しては強制執行つまり差し押さえができます。

わが国は三審制

わが国は裁判を最大で3回行います。最初は管轄の地方裁判所に訴え、判決が不服なら高等裁判所へ控訴し、それでも不服であれば最高裁判所へ上告します。ほとんどの事件が地方裁判所や高等裁判所での訴訟で決着がつくため最高裁判所での争いまでもつれ込むのは稀です。

また、最高裁の審議の末に判例変更されることはまずありません。

和解に持ち込みやすくなる

裁判は時間とお金がかかるだけでなく、社会的イメージにも関わります。大きな会社に対する裁判であればマクドナルドやオリンパスのように全国的なニュースになるでしょう。だから、裁判によって企業が積極的に和解しようと動くことも考えられます。

必ずしも有利な条件を引き出せるとは限りませんが、多くの訴訟が判決に至らず和解で落着していることを考えればそれなりのプレッシャーになっていることが伺えますね。

付加金や遅延損害金、証拠不十分の残業代を払わせられる可能性あり

残業代請求で勝訴した場合、未払いの残業代と同額の付加金を受け取れるかもしれません。付加金については法律で決められているのですが、具体的な金額は裁判官の裁量によって変わります。残業代と同額というのはあくまで最大限付加金が認められた場合であることに注意してください。

また、訴訟の場合は証拠の有無が重要になるのですが明確な証拠がない場合でも残業の事実が推定できるとして残業時間が認められる可能性があります。そのため、和解より高額の残業代を受け取れるかもしれません。

どれほど強い証拠を持っていても、実際に支払われるべき残業代は判決が出るまでわからないのです。和解や労働審判の場合はあくまでお互いの合意で決めただけです。

残業代請求で裁判を利用するデメリット

裁判は残業代を絶対に支払わないような会社と争う場合や、あまりに高額の残業代を請求する場合などは有効ですが、小額の残業代しか請求できない場合はむしろ利用を控えたいです。

なぜなら、裁判にはこのようなデメリットがあるからです。

時間と費用がかかる

裁判を起こす最大のデメリットはコストの高さです。コストには時間と費用のコストがあるのですがどちらも他の手続きに比べてはるかに高いです。

裁判は半年から1年かかる

裁判が終わるまで半年から1年かかります。長い場合は数年続くこともあります。特に最高裁までもつれ込むような場合は労働者側が疲弊してしまうことも考えられます。やるからには絶対に勝つという覚悟で臨みましょう。

弁護士報酬は1回40万円ほど

裁判につき弁護士報酬は40万円ほどかかります。高裁、最高裁と続けばさらに弁護士報酬が大きくなるでしょう。残業代は消滅時効の問題で過去2年分しか請求できないため、訴訟に支払うお金が大きすぎると感じる場合は他の解決法を選びましょう。

残業代の他に治療費や慰謝料の請求ができる場合は期待できる金額によります。なお、弁護士には着手金だけでなく取り返せた残業代の比率に応じた成功報酬も支払うことが多いのでこちらも忘れずに確認してください。

状況によっては和解より不利な結論に至る可能性あり

裁判では残業をしていたと確定できな場合に残業があったと推定してくれることがあります。逆に、「これは残業していたと認められるべきだ」と思ったら証拠として不十分と判断されることもあります。裁判では限られた証拠をもとに白黒つけられますから、時には和解するより不利な判決になることも覚悟してください。

繰り返しますが裁判は大変な時間とお金がかかります。やるからには十分な勝算を割り出してください。

残業代請求を裁判以外で解決するには?

このように裁判は強い効力と大きなコストを伴うので、「他の方法で残業代を取り返せなかったら」行うのが一般的です。多くの残業代請求は裁判を起こさずに解決しています。

こちらでは裁判以外に残業代を払ってもらう方法を簡単に紹介します。より深く知りたい場合はそれぞれの解説記事をご覧いただくか、信頼できる弁護士に問い合わせることをお勧めします。

請求書の送付

残業代を計算して、請求書を会社へ送ります。退職後であっても残業代を請求することはできますし、請求書を郵送するだけなら会社の人と話す必要がありません。

残業代の計算は残業時間だけでなく割増賃金も考慮しなくてはいけないので意外と面倒です。

請求書は内容証明郵便で

請求書を送るときは内容証明郵便を使いましょう。内容証明郵便を使えば、郵便局に記録が残るので企業は受け取っていないと偽ることができません。また、消滅時効を停止させる”催告”の手段としても認められています。

内容証明郵便は残業代請求を始めさまざまな文書の送付に活用されています。

和解交渉

請求書を送るだけでは対応してくれない場合、和解交渉を行います。簡単に言えば私的な話し合いです。労働者の立場は弱いので企業がまともに取り合ってくれないかもしれませんが、そのときは弁護士を立てましょう。労働者を軽視している企業でも弁護士を立てられると大きなプレッシャーを感じるものです。

また、弁護士相手に詭弁は通じないので諦めて残業代を支払う場合が多いです。もちろん、交渉でもしっかりと証拠を提示した上で方的な正しさを求めます。こちらが有利であるほど訴訟のリスクを主張しやすいです。

和解は柔軟かつ早期に解決できる

和解は裁判より圧倒的に早く柔軟な解決が可能です。時間がかかっても数ヶ月といったところでしょう。

労働審判手続き

和解交渉に応じない相手に対しては労働審判手続きを行います。労働審判手続きは、裁判所で行われる話し合いですが、通常の和解交渉と異なり相手が欠席しても審理が進みます。労働審判は最長3週間という短さで、判決と同じ効力を持つ労働審判が出されます。

早く解決するメリットと、十分な審議が尽くされないデメリットがあります。

ちなみに労働審判手続きの7割以上は労働審判が出される前に和解で解決しているようです。

労働審判を受け入れない場合、通常訴訟へ

労働審判は双方の合意によって受け入れられます。もし、当事者のいずれかが合意しなかった場合は通常訴訟へ移行します。通常訴訟が始まった場合、労働審判手続きで話し合ったことは一切考慮されず一から準備や話し合いがスタートします。

裁判で残業代の支払いが認められやすくなるために必要なこと

裁判で大切なのは、言うまでもなく勝つことです。裁判で残業代の支払いが認められやすくなるためにはこのような点に気をつけましょう。

十分な証拠を集める

残業代は、残業した時間に応じって支払われます。つまり残業した時間が明確にわかるのであればほぼ確実に満額請求できるのですが、多くの場合は残業したと言う証拠が足りていなかったり、タイムカードや業務日報に改ざんが見られたりと残業の有無で争いになります。

また、残業をしていた場合であっても会社の命令でないとシラを切られることがあります。

残業の事実がわかる証拠

残業の事実がわかる証拠といえばやはりタイムカードや業務日報などの勤怠記録です。雇用契約書や就業規則も確保しておきましょう。他にはメール履歴やパソコンのログイン記録、会社の窓の写真(電気がついている)、社員証の記録などが役に立ちます。

残業の命令をしたとわかる証拠

残業の命令をしたとわかる証拠とは、残業を命じたことがわかる文面のメールや残業を公的に承認したことがわかる書類、音声の記録、残業を拒んだら不利益な扱いをされると言われていた記録などがあります。

対して、会社は残業を禁止したこと、残業防止のために十分な策を講じていたこと、その時間内で終わらせられる量の仕事しか与えていないことなどを主張しなくてはいけません。よって、よほどのことがない限り自発的な残業とみなされません。

労働者に味方する弁護士を選ぶ

弁護士事務所によっては相手企業の顧問をしている場合があります。そうでなくとも企業の顧客が多い弁護士事務所は企業の弁護をしづらくなるような案件を受けようと思わないし、労働者に不利な結論でもあまり積極的に戦う姿勢を見せないでしょう。

大手の弁護士事務所に依頼する場合は、担当する弁護士の経験が浅いリスクを考慮しなければいけないし、実績が多いだけでは一つ一つの案件に時間をかけてもらえないかもしれません。

裁判で代わりに戦えるのは弁護士だけ。残業代に強い法律のプロを探そう

残業代請求で裁判まで覚悟しているのなら弁護士に依頼しましょう。和解交渉の代理ができるのも、訴訟の場に立つことができるのも弁護士だけだからです。

取り戻せる残業代の金額は証拠の強さと豊富な経験によって決まります。どのような不利な状況でも最善を尽くせる法律のプロをパートナーに選んでください。

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