残業代請求の時効は2年から当面3年に延長へ!残業代請求はどう変わる?

2020年6月19日1,375 view

残業代

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未払い残業代の時効期間が3年に延長された経緯

民法改正にともない、労働基準法の賃金請求権の時効が延長される

残業代請求権の時効を定めている法律は「労働基準法」です。
残業代は「賃金」の一種なので「賃金請求権」の時効が適用されますが、従来の規定では「賃金請求権の時効は2年」と定められていました。従来は民法が「賃金請求権の時効を1年に限定」していたので、それでは短すぎるだろうということで、労働基準法が労働者保護のために「特別に2年に延長」していたのです。

ところが民法が改正されて基本的な債権の時効期間が「5年」に延長されるのに伴い、労働基準法も改正して「未払賃金の時効期間を延長すべきではないか?」と議論されてきました。
延長後の賃金請求権の時効期間について、労働者側は「5年への延長」、経営者側は「2年の据え置き」を主張して対立したために政府が調整を進めてきたのです。

そのあたりの経緯はこちらの記事に詳しく書いてあるので、よければご参照ください。

2019年12月27日、賃金請求権の時効を「3年」とする方向でおおむね固まる

2019年12月27日、労働政策審議会労働条件分科会は「賃金等請求権の消滅時効の在り方について」という報告書をとりまとめ、厚生労働大臣へと提出しました。
これにより、報告書の内容通りに労働基準法を改正する方向でおおむね固まりました。
以下で報告内容の概要をご説明します。

時効期間は「当面3年」

この報告書では「改正後の賃金債権の消滅時効は原則的に5年とするが『当面は3年』とすべき」とされています。

原則5年とするのは、改正民法が基本的な債権の時効を5年とする以上、労働基準法による賃金請求権の時効も同じく5年とすべきだからです。
ただし経営者側の意見も尊重し「当面は3年」として調整をはかっています。いきなり5年に延長すると各企業に対する影響が大きくなり不況要因にもつながりかねないので配慮した形です。

なお「当面」というのは改正労働基準法の施行後5年間を目途としています。
施行後5年が経過した頃(2025年4月1日頃)において、そのときの経済情勢などに応じて再検討を行い、状況によっては時効期間が5年へ延長される可能性があります。

3年に延長される時期

賃金請求権の時効が3年に延長される時期は、改正民法の施行時に合わせて「2020年4月1日から」とされました。
つまり改正労働基準法は改正民法の施行時と同時である2020年4月1日に施行される予定です。

時効の起算点についての考え方

改正労働基準法における時効の起算点については、現在と同様「客観的に権利を行使できるときから」とされました。
起算点とは「時効期間を数え始めるタイミング」です。たとえば「2020年4月1日」が起算点で3年の時効が適用される場合、2020年4月1日から3年を数え始めるので、その3年後である「2023年4月1日」の経過をもって時効が成立します。

ここで時効の起算点を「労働者が請求できると知ったとき(主観的起算点)」ではなく、客観的に「請求できるとき(客観的起算点)」とされたことには注意が必要です。
改正民法における債権の時効起算点は基本的に「権利者が権利行使できると知ったとき(主観的起算点)から5年」とされますが、改正労働基準法では従前と同様「権利行使できるときから」という客観的起算点が維持されます。

2020年1月10日、賃金請求権の時効期間を3年とすることに合意

2020年1月10日、経営者側の代表と労働者側の代表が参加して第159回労働政策審議会労働条件分科会が開催されました。

そこではあらためて「賃金債権の時効期間を原則的に5年としつつ、『当面3年』とする」方針について最終の意見確認が行われました。
審議会において労働者側の代表は「提案を受けた内容で了承する」と答えました。
また「賃金債権の時効を延長する改正労働基準法が、改正民法施行のタイミングと同じ2020年4月1日に間に合うようにきちんと施行されることが重要」「改正労働基準法の施行日まで日がないため、充分な周知が必要」とも述べています。
経営者側の代表も「妥当と考えている」と述べました。
このように、政府の調整によって労働者側と経営者側の両者が「賃金債権の時効期間は原則5年としつつ当面は3年とする」ことに合意したため、労働基準法が改正されて残業代を含めて賃金債権の時効が3年間に延長されることが決定しました。

参考:2020年1月10日 第159回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

ただし改正労働基準法の施行後5年が経過したとき、あらためて検討を行い「民法の原則である5年への延長を行うのか」「3年のまま据え置くのか」などを審議する予定です。

以上を前提として、今後労働者の立場としてどうしていけば良いのか、具体的な時効の計算方法も交えてご説明していきます。

2020年4月1日以降、3年分の残業代を請求できるケースとできないケース

このたび労働基準法が改正されて2020年4月1日以降に発生する賃金債権には「3年の時効」が適用されます。
ここで3年の時効の適用対象は「2020年4月1日以降に発生する賃金債権」に限られることに注意が必要です。改正労働基準法が施行される2020年4月1日以降であっても、「それ以前に発生した賃金債権」には3年の時効期間は適用されません。2020年3月31日までに未払いになった残業代には、従来通り「2年」の時効が適用されます。

また残業代請求権の時効起算点は、「残業代を請求できる状態になったとき」です。つまり未払い残業代を含む給与の支給日を当初の起算点として2年ないし3年を計算します。

わかりやすいように例を出してみてみましょう。

具体例その1 2020年3月25日に未払いとなった残業代

2020年3月25日、それまでに発生した5万円分の残業代が未払いになったとします。この未払い分を請求できるのは「2022年3月25日まで」です。2020年4月1日以降に請求するとしても3年の時効は適用されないので要注意です。

具体例その2 2020年5月25日に未払いとなった残業代

2020年5月25日、4月分の5万円の残業代が未払いになったとします。この未払い分を請求できるのは「2023年4月25日まで」です。2020年4月以降に残業代が発生しているので3年の時効が適用されます。

3年のルールによって未払い残業代を請求できるのは2023年4月1日以降

このように、新しい労働基準法の定める「3年の時効」が適用されるのは「2020年4月1日以降に発生した残業代」です。はじめて3年の時効が適用されて過去3年分の未払賃金を請求できるのは「2023年4月1日」となります。

それまでは、改正前の「2年の時効期間」を前提に対応しなければなりません。「法改正により、時効が3年に延びた」と思って残業代請求を後回しにしていると、時効によって残業代を払ってもらえなくなるおそれがあります。

従来の規定でも3年の消滅時効が適用されたケース

ただし従来の労働基準法の規定下においても、未払い残業代の時効期間をして「3年」が適用されたケースがあります。
それは企業側の対応が極めて悪質で「不法行為」が成立すると認定された事案です。

広島高裁平成19年(2007年)9月4日の判決のあった事案では、杉本商事という会社が従業員に残業をさせていたにもかかわらず「勤務時間(残業時間)を把握する義務」を怠っていました。
従業員は残業代請求のために会社に対し「残業時間の管理制度を作ってほしい」と要請しましたが会社側は無視しました。そのために従業員は残業代の計算すらできず、請求できない状態が続いていました。
このような行為は会社がことさらに残業代支払いを逃れようとする悪質なものとして「不法行為」が成立すると判断されたのです。

この判決の考え方によると、従業員に残業させているにもかかわらずタイムカードなどの労働時間管理制度を導入していない企業で「不法行為」と認定される可能性があります。
改正労働基準法によって3年の時効を適用できる2023年4月1日より前の時点でも、この条件に当てはまっている方は残業代を請求できる時期から3年間、会社側に未払いの精算を求めることができる可能性があります。
自分のケースで未払い残業代の時効期間が2年になるのか3年になるのかがわからない場合には、法律の専門家である弁護士に相談してみましょう。

2025年までには残業代請求の時効はまた3年から5年に延びる?

5年に延長されるとは限らない

今回の改正労働基準法では、残業代を含めた賃金請求権の時効期間が「当面3年」とされました。
「当面」は5年を意味しており、5年後にあらためて時効の延長について議論が行われる予定です。
ただし5年になるかどうかは確実ではありません。当時の経済情勢で不況となっていたり経営者側の反対が強かったりすると、現状の3年が維持される可能性もあります。

5年に延長されてもすぐに5年分の請求ができるとは限らない

また5年に延長された場合でも、いつからの残業代が対象となるかは未定です。以下のようなバリエーションが考えられるでしょう。

「5年に延長する労働基準法の施行後に発生した残業代」に適用される

今回の改正と同様、改正労働基準法の施行後に発生した残業代に5年の時効期間が適用されるパターンです。
その場合、改正法の規定施行後もしばらくは3年分の残業代しか請求できず、改正法施行後5年が経過した時点でようやく5年分の残業代を請求できる状態となります。

「5年に延長する労働基準法の規制施行後に請求する残業代」に適用される

今回と異なり、改正労働基準法施行後に請求する場合に5年分の残業代を請求できるとする規定方法です。
この場合、労働者側は有利になりますが企業に与える影響が大きくなるので、経営者側からは強く反対されることが予想されます。

残業代が3年に延びることによる注意点は?

2020年4月1日からは改正労働基準法が施行されて残業代請求の期間が3年に延びますが、そうだとしてもいくつか注意点があります。

当面は2年以内に残業代請求をすべき

先にもご説明しましたが、2020年4月1日以降すぐに3年分の残業代を請求できるわけではありません。2023年3月31日までは「過去2年分」の残業代しか請求できないのです。
改正労働法の施行後もしばらくはこれまでと同じ扱いになるということです。残業代が未払いになっているなら早めに請求しましょう。

証拠が散逸する可能性を考慮すべき

2023年4月1日以降に未払い残業代の請求する場合、過去3年分の清算を求めることが可能です。このように残業代の時効期間が延びると、安心して請求を後回しにする方がいるかもしれません。

しかし時効期間が延びたからといって請求時期を後回しにすると不利益が及ぶリスクが高まります。
残業代請求には証拠が必要ですが、不払い時期から時間が経つと、残業代請求に必要な証拠を集めにくくなるからです。

たとえばパソコンのログインログオフ記録、交通ICカードの履歴、タクシーの領収帳、スケジュール帳の記録などは、時間が経ったら入手できなくなってしまうことも多いでしょう。会社側にも古い記録が残されていない可能性があります。
証拠の散逸のリスクを考えると、法改正後や改正法の適用後も「なるべく早期に残業代請求を行うべき」です。

会社が倒産するリスクもある

未払い残業代に3年や5年の時効が適用されるようになったとしても、労働者が早めに残業代請求すべき理由がもう1つあります。それは会社が倒産するリスクです。
会社の経営状態は、いつどうなるかわからないものです。時間が経つと大きく状況が変化して倒産、廃業する可能性も高まります。また改正法が適用されるとたくさんの労働者からいっきに残業代請求が来て経営状態が悪化する可能性もあります。
倒産・廃業されたら残業代請求が極めて困難となってしまうでしょう。そうなる前に「早めに残業代を請求して回収する」のが賢明な対応といえます。

残業代が不払いになったら弁護士に相談を!

もしもあなたが今、会社から残業代を払ってもらえていないなら早めに弁護士に相談しましょう。理由は以下の通りです。

正確に時効期間を把握できる

残業代請求権の時効は、もともと2年になるのが原則でしたが不法行為が成立して3年になるケースも稀にありました。
今後は労働基準法改正により3年となるケースもでてきます。時効の考え方が区々になって個別のケースにおける検討が必要になるため、正確な時効期間を把握するには弁護士に相談する必要があります。
特に発生から相当時間の経過した残業代を請求する場合、必ず事前に弁護士に相談して「いつからの分を請求できるのか」確認しましょう。

証拠の収集

残業代を請求するには、充分な証拠が必要です。証拠がなければ会社側は支払いに応じないでしょうし、労働審判や訴訟を起こしても負けてしまいます。
ただ自分ではどういった証拠を集めれば良いのかわからない方が多いでしょう。

弁護士に相談すると、ケースごとに適切な証拠の収集方法を教えてもらえます。自分では「証拠がないから残業代請求はできない」とあきらめていても資料を手元に集めて残業代を払ってもらえる可能性が高まります。
また弁護士が「証拠保全」などの裁判所の手続きを利用して証拠を集める方法もあります。
残業代の証拠収集で悩んだら、早めに弁護士に相談してみましょう。

正確な残業代計算

残業代は、計算が大変複雑で面倒です。素人の方が自己判断で行うと計算間違いをしてしまうケースも多々あります。そもそも計算方法が全く分からない方もいるでしょう。
弁護士に相談すれば、ケースごとにきっちり計算してもらえるので安心です。はっきりわからない場合、推定計算も可能です。

交渉や訴訟を任せられる

残業代を請求するには、会社と交渉しなければなりません。すんなり払ってもらえない場合には労働審判や訴訟などの対応が必要です。
労働者が自分で交渉しても軽くとらえられて無視されるケースがありますし、企業との力の差により不利な状況に追い込まれるケースが少なくありません。
弁護士に交渉を依頼すると対等以上に有利に話し合いを進められますし、労働審判や労働訴訟などの法的措置もとれます。弁護士が味方になっていると大変心強いので、ぜひとも上手に活用して下さい。

残業代の時効が3年になっても、当面は残業代請求2年以内の請求が基本

弁護士にサポートを仰ぎ、法改正にスムーズかつ的確な対応を

残業代の時効について定める労働基準法が施行された後も、当面は従来の法律と改正法の双方を視野に入れて対応を進める必要があります。また改正労働基準法施行後、さまざまな判例が出てくるでしょうからそういった内容も把握しておくべきです。
残業代請求の際、あなたをサポートして適切に権利を実現してくれるのは弁護士です。まずは労働問題に詳しい弁護士を探して相談してみましょう。

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