トラック運転手でも残業代請求を!運送会社の未払い残業代は弁護士に相談を
最近は、いろいろな業種で残業代不払いが問題になっています。中でも運送業は、残業代の不払いが深刻です。トラック運転手が過重労働をさせられて疲労すると、大きな交通事故にもつながるので非常に危険です。そうなる前に、残業代を請求して、適正な労働環境を守りましょう。そこで今回は、トラック運転手が残業代を取り戻す方法をご紹介します。
- 残業代を請求することができるのはどんな人?
- 1日8時間以上、週40時間以上働いている人
- 次の項目に当てはまる人は、すぐに弁護士に相談
- サービス残業・休日出勤が多い
- 年俸制・歩合制だから、残業代がない
- 管理職だから残業代が出ない
- 前職で残業していたが、残業代が出なかった
この記事で分かること
運送業ではトラック運転手への残業代不払いが多い
最近、過労死なども社会問題となっていて、「残業を減らそう!」という動きが起こっていることから、残業規制が行われていたり、残業代が発生しても、適正に支払われたりする例が増えています。
しかし、それでも残業代の不払いはなくなりません。残業代不払いの状況は業種によって大きく異なり、不払いが横行している業種では、今も以前と変わらず残業代の支給なしに、労働者が働き続けている状態です。
そして、トラック運転手などの運送業では、残業代の不払いが非常に多いです。むしろ、適正に残業代が支払われている方が、珍しいと言えるほどです。特に、長距離トラックの場合、トラックを夜通し運転することなども多く、長時間労働になりやすいです。
トラック運転手の残業代未払い 発生の背景
トラック事業者は、保有しているトラックを、なるべく多く稼働させると利益が上がります。しかし、その分給料を支払うと、利益は減少します。そこで、トラック運転手に長時間トラックを運転させて、残業代を支払わないことにより、違法な利益を上げているのです。もちろん、残業代不払いは違法ですから、こうしたトラック事業者の対応は許されるものではありません。
トラック会社に勤めていて、「きちんと残業代が支払われていないのではないか?」と少しでも心当たりがある方は、この記事を参考にして、残業代が発生していないかどうかを確かめてみるべきです。
違法なトラック運転手の長時間運転によって発生する危険
トラック運転手が残業代なしで働かされる場合、長時間労働につながります。お金を払わなくて良いのですから、どれだけ長時間労働をさせても会社は損をすることがないからです。過重労働になっているケースも珍しくありません。ところが、このような運転手の長時間労働が常態化すると、非常に危険です。
交通事故の危険が高まる
まず、交通事故の危険が高まります。トラック運転手は、長時間高速道路などを運転し続けることがよくあります。そのようなとき、過重労働で疲れていたら、居眠りしてしまうことが非常に多くなります。トラックが高速道路上で居眠り運転をしていたら、どのような大惨事になるか容易に想像がつきます。実際に、居眠りしていたトラック運転手が引き起こした交通事故に関するニュースもよく耳にします。
しかもこうした交通事故事案では、トラック運転手が全面的に悪いことになってしまいます。
危険運転致死傷罪などが成立して懲役刑となる可能性も高くなりる
加害者が死亡した場合、ドライバーは一生その重荷を抱えて生きていかねばなりませんし、遺族や社会からは「殺人者」と言われるかもしれません。トラック事業者が課した長時間労働によって引き起こされた事故でも、会社は助けてくれないのです。
また、長時間運転をさせられたら、どうにか早く終わらせようと考えます。すると、どうしても気持ちが焦ってスピード違反をしてしまうおそれも高まり、交通事故につながります。この場合にも「トラックがスピードを出しすぎていた」という過失が認められるので、トラックが加害者となり、居眠り運転と同じような問題が発生します。
さらに、長時間労働が続くと、ドライバーにストレスが溜まって不注意運転や脇見運転なども増えてしまいます。そうして、結局事故につながってしまうのです。
以上のように、トラックドライバーが長時間労働をしていると、恐ろしい交通事故が発生する危険性が非常に高まります。
過労死の危険が高まる
また、過重労働をしていると、ドライバー自身が過労死してしまうこともあります。突然脳梗塞が起こったり、心筋梗塞が起こったりして命を落とす可能性もあるのです。
このような危険を取り去るには、適切にトラック事業者に残業代を負担させて、違法残業を辞めさせないといけません。常に交通事故と隣り合わせのドライバーという職業に就いている以上、自分の身の安全は自分自身で守らないといけないのです。
トラック運転手の残業代不払いは違法!
「残業代がもらえないのは当然」という思い込みを捨てよう!
トラック事業者が残業代を支払っていないとき、それが当然のように振る舞っていることが多いです。
このようなことから、残業代が支払われないのがあまりにも普通なので、ドライバーの方も、「自分の場合、残業代というものは、もらえないものだ」と思い込んでしまうことも多いです。
しかし、そのような考え方は間違っています。ただ、それは労働者の責任ではありません。トラック事業者がそのように思わせているのです。「残業代を請求できない」という考えを持っている場合、会社の思うがままにコントロールされていると言っても過言ではありません。
残業代支払いは法律で定められた雇用者の義務
残業代の支払いは、労働基準法によって定められた雇用者の義務です。労働基準法により、雇用者は労働者に対し、賃金を必ず支払わなければならないと定められています。
残業代は「割増賃金」ですから、給料の1種
そこで、事業者が残業代を支払わないことは、労働基準法違反です。労働基準法には罰則もあるので、悪質な残業代不払いがある場合、トラック事業者が送検されるケースもあります。
このように、トラック事業者の行為自体が違法なわけですから、労働者がこれに従わなければならない道理はありません。必要な残業代を支払ってもらっていないなら、早めに請求手続をとるべきです。
運送会社が送検された例
実際に、運送会社が残業代不払いにより、労働基準法違反で送検された例があるので、ご紹介します。
神奈川県小田原市内の会社です。従業員に対し、36協定で定めた限度の時間を超えて違法な残業をさせ続けていました。倉庫作業をしていた従業員には、最長で1ヶ月に82時間もの残業をさせていたのです。平成29年1月24日に送検されました。
愛知県西春日井郡豊山町の会社です。36協定で定められた限度時間を超えて、労働者に長時間労働を強要していました。週1日の休日すら与えていなかったので、非常に悪質です。ドライバーが業務中にくも膜下出血を起こしたことから、残業代不払いが発覚しました。平成28年8月18日に、会社と代表取締役が送検されています。
栃木県鹿沼市内の会社です。長時間労働を強いられていたドライバーが死亡したことをきっかけに調査が開始されて、残業代不払いが明らかになりました。同社は、健康診断も実施しておらず、労働安全衛生法違反も問題になりました。平成28年10月12日に送検されています。
大阪府東大阪市内の運送会社です。支社において、36協定を締結しないままに長時間労働を課していたという非常に悪質な事案です。このことで、運転手が脳溢血で死亡し、労災認定されたことがきっかけで問題が発覚しました。会社と代表者が、平成28年12月12日に送検されています。
福岡県福岡市内運送会社の会社です。このケースでは、36協定で定められた限度の時間を超えて、長時間労働をさせていました。1ヶ月あたり132時間もの残業代が恒常化していたという悪質な事案です。ドライバーが運転中に脳梗塞を発症するという重大な結果が発生しました。平成28年12月1日に送検されました。
このように、運送業者が送検されるケースは、ドライバーが運転中に、くも膜下出血や脳出血、心筋梗塞などになり、労災を申請したことがきっかけで問題が発覚するケースが多いです。しかし、このように身体を壊してから請求をしても、遅すぎます。そうなる前に、きっちり残業代を請求し、会社に危険な行為を辞めさせる必要があります。
どんな場合にトラック運転手は残業代を請求できるの?
「毎日長時間労働をしているけれども、残業代が発生するのかどうかがわからない」、ということがあるでしょう。実際にはどのようなケースで残業代を請求できるものなのでしょうか?
未払い残業代の発生を疑うべきケース
以下の状況に当てはまる場合には、要注意です。
残業代は、法律上当然に支払い義務があるのに、一切支払わないのですから明らかに違法です。未払い残業代を請求できます。
残業代が固定になっていても、予定されている時間を超えて働いたら、超過分の残業代を請求することができます。また、そもそも固定残業代が有効になるためには、通常の労働部分の対価と固定残業代の部分が明確に区別されている必要があり、その要件を満たしていなければ、「固定残業代制度」が成立しません。「固定だから」というのは不払いの理由になりません。
これも、よくあるトラック事業者の弁解です。しかし、歩合給でも残業代を請求できる可能性はあります。歩合給の場合、基礎収入を、所定労働時間ではなく「残業時間を含めた総労働時間」によって計算するだけのことです。時間外・休日・深夜労働があった場合には、歩合給であっても割増賃金を支払わなければならないのです。
通常の労働時間の賃金と時間外の割増賃金を区別できない場合には、時間外の割増賃金が支給されたことにならないため、未払分を請求することができます。
会社に「残業代をどうやって計算するのですか?」と聞いてもはぐらかされたり答えてくれなかったりする場合には、会社が残業代不払いをうやむやにしようとしていることが多いです。
残業代は労働基準法で定められた義務ですから、「残業代を支払わなくて良い会社」は存在しません。そこで、会社がこのような主張をしている場合、誤魔化されている可能性が高いです。
周りの誰も残業代を請求していないことは、残業代不払いを正当化する理由にはなりません。むしろ、残業代不払いが常態化している可能性が高いです。会社が堂々とこのような主張をしてくるなら、残業代不払いになっているかもしれません。
残業代が発生しているにもかかわらず、その明細が書かれていない場合には、不払いになっている可能性が高いです。特に固定残業代や歩合制などが採用されている場合にこうした区別がなければ不払いを疑いましょう。
事業者は、労働者に就業規則を周知しなければなりません。そこで、労働者がいつでもアクセスできる方法で、掲示したり配布したりする義務を負っています。それにもかかわらず就業規則を見せないという行為自体が違法です。また、見せないのは自社に不利な内容が記載されているからである可能性があります。このような違法行為を平気で行う会社は、残業代も不払いになっている可能性が高いです。
トラック事業者がドライバーに対して残業代を支給しない場合、「みなし労働制」を適用しているから、と言われることがあります。みなし労働制とは、外回りの仕事で労働時間を明確に把握しにくい場合に、一定時間働いたとみなす制度です。みなし労働制が適用される場合、時間外労働の割増賃金の計算は行われません。
しかし、トラックドライバーの場合、デジタコデータや携帯電話でのやり取り、配送時刻のチェックなどを行えば、労働時間を把握することは十分に可能です。そこで、そもそもみなし労働制が適用される場面ではありません。会社から「みなし労働制が適用される」と言われている場合にも、通常通りに残業代を請求することが可能です。
残業代を請求できる期間
残業代を請求するときには、期限があるため注意が必要です。具体的には、支払い日が到来してから2年以内に請求しないと、時効消滅してしまいます。そこで、残業代が未払になっていたら、早めに請求手続をとりましょう。
日々忙しく働いていると、2年などあっという間に過ぎてしまいます。退職後でも残業代の請求は可能ですが、その場合にも、2年の時効が経過してしまうパターンが特に多いので、注意が必要です。
「請求をしたいけれど、まず何をしていいかわからない」ということもありますから、そういったケースでは早めに弁護士に相談に行くことをおすすめします。
残業代の計算方法
「自分にも残業代が発生しているかもしれない」そう考えたら、まずは残業代を計算してみましょう。以下では、残業代の計算方法をご説明します。
一般的な残業代の計算方法
一般的に「残業代」というとき、それは「法定労働時間を超えて働いた場合の割増賃金」と意味することが多いです。労働基準法では、基準となる労働時間を定めています。その時間のことを、法定労働時間と言います。
法定労働時間の基本の考え方は「1日8時間、1週間で40時間」
そして、法定労働時間を超えて働いたら、定められた給料に上乗せして給料を支払わなければなりません。
しかもその場合には、賃料に上乗せが行われます。それが「割増賃金」です。
時間外労働の場合、割増賃金の割合は25%以上
深夜労働の場合、さらに25%以上の割増となります。休日労働なら35%以上の割増です。そこで、トラック運転手が、法定労働時間を超えて働いたら、これらの割増計算を適用して残業代を計算して、雇用者に請求することができます。
まずは、1時間あたりの基準となる賃金の金額を計算して、残業時間と割増率をかけ算したら、残業代を算出することができます。
待機時間は休憩時間?
トラック運転手が残業代を計算するとき、荷積み、荷下ろしなどの待機時間を労働時間として計算して良いかどうか、迷ってしまうことがあるでしょう。会社に残業代請求をしたとき、待機時間は休憩時間だから労働時間に含まれない、と反論されることもよくあります。
荷積み、荷下ろしの待機時間は、労働時間に含まれることが多いです。労働時間か休憩時間かについては、「雇用者による指揮命令を受けているかどうか」によって判断します。指揮命令を受けていたら労働時間となりますし、そうでなければ休憩時間となって、残業代計算の基礎からは外れます。
そこで、待機時間であっても、指示があれば常に車を動かせるように待機している状態であれば、雇用者の指揮命令下にあると言え、労働時間に含まれます。食事や仮眠をしていても、いつでも動ける状態で指示を待っているならば、必ずしも休憩時間にはなりません。
これに対し、車から離れて完全に自由に行動できて、雇用者から指示を受けない状態であれば、休憩時間となります。
トラック運転手が残業代を請求するための証拠
次に、トラック運転手が残業代を請求するために必要な証拠を確認しましょう。トラック運転手の場合、他業種とは異なる特殊な資料があります。
タイムカード 業務日報・運転日報、週報 |
労働時間を証明することができます。 |
---|---|
配車票 タコグラフ(デジタコデータ) |
強制的にオフにされてしまうことがあります。その場合には、逐一記録をとっておきましょう。 |
車載カメラの記録 | いつどこを走行していたのかが明らかになります。 |
業務報告のメール 携帯電話の発着信記録 |
中でも「荷受け」についての連絡が重要です。 |
配送時刻に関する記録 アルコール検知記録 |
時刻が表示されるので、労働時間の証明に役立ちます。 |
手帳、メモ | 証拠力は高くはありませんが、残業時間の証明に使うことができます。 |
また、基礎となる賃金の計算のため、以下のような書類も揃えます。
- 給与明細書
- 就業規則
残業代請求をしたいと考えたら、まずはこのような資料を集めましょう。
トラック運転手が残業代を請求する手順
証拠がそろったら、いよいよ残業代を請求します。以下ではその手順をご説明します。
内容証明郵便を送付する
まずは、会社に宛てて「内容証明郵便」を利用して、残業代の請求書を送りましょう。請求書内には、残業代が発生していることと残業代の金額、支払を求めることを記載します。
内容証明郵便を送付すると、その後、会社との間で残業代の返還についての交渉を開始します。支払に応じてくれればそれで良いですが、自分で請求をしても、なかなか支払に応じてくれないことが多いでしょう。
弁護士に依頼する
自分で交渉をしても支払に応じてもらえない場合には、弁護士に代理で交渉を依頼することをお勧めします。労働者個人が対応しているとまともに取り合わない会社であっても、弁護士が出てくると、真面目に対応することが多いためです。
弁護士に依頼したら、弁護士が全ての請求手続を代行してくれますし、労働者が不利益を受けないようにとりはからってくれます。会社の方も、滅多なことはできなくなって安心です。交渉が成立したら、弁護士が会社から未払い残業代を受けとって、労働者に返金してくれます。
労働審判を利用する
会社に対し、任意での支払を求めても、支払に応じないことがあります。その場合には、裁判所を使った手続が必要です。まずは、労働審判を利用してみましょう。労働審判は、裁判と比べて早く終わりますし、手続も簡単で、問題の解決率も高いです。裁判所の労働審判官が関与して、間に入って話を進めてくれるので、会社との話合いも進めやすいですし、どうしても合意ができない場合には、裁判所が審判をしてくれます。
労働審判の手続も弁護士に依頼することができますし、自分で対応するよりその方が安心です。
労働訴訟をする
労働審判をしても最終的に解決に至らなかったときには、最終的に労働訴訟が必要となります。訴訟となると、素人が1人で進めると圧倒的に不利になるため、弁護士に依頼することが必須です。
適切に法的な主張と立証ができたら、裁判所が会社に対し、残業代の支払い命令を出してくれるので、残業代を回収することができます。
トラック運送業の残業代請求は、弁護士に依頼しよう!
トラック運転手の未払い残業代の問題は、深刻です。放置すると重大な事故にもつながるので、早期に対応しなければなりません。しかし、相手は大きな企業であり、個人のドライバーが対抗することは困難です。
そこで、弁護士に対応を依頼して、残業代を請求してもらいましょう。弁護士に任せると、会社で不利益な取扱を受けるおそれも少なくなりますし、残業代回収の確実性も高まります。自分では何もしなくて良いので、手間もかかりませんし精神的なプレッシャーもありません。
残業代をもらっていないドライバーは、まずは労働問題に強い弁護士に相談するところから、始めましょう。
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