残業代を払わない!労働基準法に違反した場合の罰則はどんなもの?
残業をしたのに残業代が支払われない場合、上司や社長は労働基準法違反をしたとして罰せられます。しかし、実際には、最初に労働基準監督署の調査や是正勧告を受けることになります。このとき、是正措置をとらない、虚偽の是正報告をするなど、会社の姿勢が悪質な場合は会社の上司や社長が書類送検されたり逮捕される可能性があります。
- 残業代を請求することができるのはどんな人?
- 1日8時間以上、週40時間以上働いている人
- 次の項目に当てはまる人は、すぐに弁護士に相談
- サービス残業・休日出勤が多い
- 年俸制・歩合制だから、残業代がない
- 管理職だから残業代が出ない
- 前職で残業していたが、残業代が出なかった
この記事で分かること
残業や残業代に関する労働基準法違反の罰則とは
労働基準法は、会社の社長など強い権限を持っている者から立場の弱い労働者を守るためにつくられた法律です。そのため、正社員やパート・アルバイト、契約社員、派遣社員などの雇用形態を問わず、会社などの事業所で働く人全員が労働基準法を守らなければならなりません。
労働基準法違反をすると罰金もしくは懲役に
もし、会社の経営者や指揮命令者が労働基準法に違反するようなことをすれば、罰金や懲役といった罰則規定が待っています。労働基準法はそれくらい、違反者に対して厳しい扱いをする法律なのです。
6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられるケース
残業や残業代に関して以下のような違反があった場合は、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
30万円以下の罰金
また、残業や残業代に関して罰金のみ科されるケースは以下の通りです。
上司だけでなく、社長や会社そのものまで罰則を受ける
罰を受けるのは指揮命令をしていた上司だけではありません。違法と知っていて黙認していた社長や会社そのものにも罰則が科せられることとなります。これを「両罰規定」と言います。ただし、社長が違法と知って是正しようとしていたときには、社長は罰則をまぬかれることが可能です。
従業員は労働基準監督署などに違反を通報することもできる
自分の会社でサービス残業が横行していたり、上司が従業員に対して無理やり定時でタイムカードを打刻させていた場合、従業員であれば会社の中で不利な立場に立たされることを恐れてなかなか抗議の声を上げることは難しいでしょう。
そこで、従業員が会社や上司が労働基準法の違反行為を行っている事実を発見した場合、その事実を行政官庁または労働基準監督官に通報・申告することが可能です。会社側は、そのような申告をされたことを理由として、その従業員に対し降格・減給や解雇、不当な異動など不利益な扱いをしてはならないことになっています。
会社の中で労働基準法違反が横行している場合は、勇気を出して労働基準監督署・行政官庁に通報することが、会社の体制を是正させ、まわりの同僚を助けるためにも重要なこととなるのです。
労働基準法違反によって実際に会社・社長等が刑罰を受けるまでの流れ
労働基準法に違反したからと言っても、直ちに上司や社長が逮捕されるわけではありません。実際に労働基準法違反による刑罰を受けるまでには、まず労働基準監督署が介入します。
労働基準監督署の立入調査・是正勧告
まずは会社に労働基準監督署の調査が入り、是正勧告を受けることになります。会社側が是正勧告に従って労働環境を改善したり未払いの残業代を従業員に支払えばそこで終了しますが、是正勧告に従わない場合は書類送検や社長などが逮捕される事態になることもあります。
- 立入調査
- 是正勧告
- 書類送検
①立入調査
従業員からの通報などで、ある会社が労働基準法に違反している疑いがあるとの情報をつかむと、まず労働基準監督官がその会社に対して立入調査を行います。調査内容としては、社長や関係者へのヒアリング、事業所に入っての従業員の勤務実態の把握、労働関係帳簿の確認などがあげられます。
②是正勧告
立入調査をした上で、法令違反があった場合は労働基準監督官が是正勧告書を交付します。残業代に関する是正勧告の場合は、未払いの賃金を過去に遡って支払うよう指導されます。また、労働時間に関しては従業員の健康を損なうことに直結する可能性が高いことから、重点的に指導されます。
③書類送検
是正勧告に従わない場合や是正勧告では問題がおさまりきらないと監督官が判断した場合は、会社および会社の社長や上司などが書類送検されることとなります。書類送検とは、被疑者を逮捕・勾留する必要がない場合などに、被疑者を警察に送致することです。近年ではサービス残業や長時間労働による過労死が大きく問題となっていることから、これらの事案については書類送検されるケースが多くなっています。
是正勧告に従わない場合や違反が悪質な場合は逮捕・起訴へ
一般的に、法律の違反者を逮捕するのは警察官の役目ですが、労働基準法違反の罪に関しては、労働基準監督官が違反者を逮捕することができるようになっています。その理由とは、労働基準監督官は司法警察官としての職務権限を持っているからです。
そのため、警察官が介入することなく労働基準監督官は単独で違反者の逮捕・捜索・差押え・現場検証などを行なうことができます。
残業代不払いに関して労働基準法違反となった事例
過去には、会社側が従業員に対して残業をさせていたのにも関わらず残業代を支払っていない事実が発覚して逮捕されたり書類送検されたりした事例が多くあります。その中で、逮捕に至った事例と書類送検となった事例について1つずつ紹介します。
岐阜県の縫製会社社長が逮捕された事例
岐阜県にある縫製会社が、2014年12月から2015年8月まで、中国人技能実習生の女性4人に時間外労働をさせていながら残業代を支払っていなかったとして労働基準監督署の立ち入り調査を受けました。
しかし、同社は調査のときに虚偽の賃金台帳を提出するなどの調査妨害を行っていたため、監督官が是正勧告では収まりきらないと判断。2016年3月22日に労働基準監督官が賃金不払い及び調査妨害の容疑で同容疑者及び、技能実習生受入れ事務コンサルタントを逮捕する事態に至りました。
労働基準監督官が労働基準法の違反者を逮捕するケースは非常に珍しく、インターネットやメディアでも一時期話題になっていたほどです。労働基準法違反の内容が悪質な場合は逮捕に至るケースもあることを世の中に知らしめた事案になったのではないでしょうか。
スーパーの運営会社と社長が書類送検された事例
東京都江戸川区内にある食料品スーパー2店舖で、平成2013年5月21日から同年7月20日の間、法定労働時間を超えて従業員32名を働かせていたのにも関わらず、割増賃金を支払っていなかったことが発覚。そのスーパーの運営会社と同社代表取締役等を労働基準法違反の容疑で、平成26年6月2日、東京地方検察庁に書類送検したという事案がありました。
労働基準監督官はそのスーパーの運営会社に対し、割増賃金の不払いについて是正を指導し、その結果について報告するように求めます。しかし、同社は是正を指導されていたにもかかわらず違反行為を続けた上に、社長が部長や課長と共謀して労働基準監督官に対して割増賃金を払っていないのに払ったとする虚偽の内容を記載した是正報告書を提出しました。労働基準監督官が本社などを家宅捜索したところ、捜査の過程で是正報告書の内容が虚偽であることが発覚し、書類送検に至ったのです。
残業代が支払われない場合は弁護士に相談を
残業をしたのに残業代を支払ってもらえない場合は、労働基準監督署に申告すれば調査をしてもらえる可能性があります。しかし、申告したことが上司や社長にばれたときのことを考えると、なかなか申告に踏み切れないこともあるでしょう。その場合は、まず労働法に詳しい弁護士などの専門家に相談すれば、残業代を支払ってもらえる方法を提案してもらえます。泣き寝入りせず、勇気を出して未払いの残業代を請求していく姿勢を見せることが大切です。
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