労働問題を法テラスに相談するメリットと注意点
残業代や不当解雇、パワハラなど労働問題を相談したいけど弁護士事務所はお金がかかる。そんなときは法テラスが利用できるかもしれません。法テラスは国が運営する法律相談機関で、条件を満たせば無料での法律相談や低額での問題解決が可能です。こちらでは法テラスのメリットや注意点、弁護士事務所でもできることを紹介します。
この記事で分かること
労働問題・会社とのトラブルは法テラスで相談できる?
労働問題や会社とのトラブルは法テラス(日本司法支援センター)に相談できます。残業代請求やセクハラ・パワハラ、解雇や労災などいろいろな問題に対応しているので気軽に利用しましょう。法テラスについて詳しく知りたければサポートダイヤルへの電話が可能です。
法テラスは全国にありますが、場所によっては法テラスが遠いこともあります。
法テラスができることは法律相談と弁護士・司法書士費用の立て替えです。法テラスに立て替えてもらった費用は分割で支払います。
法テラスで無料相談できるのは民事事件
法テラスは民事事件についての法律相談ができる場所ですが、労働問題も民事事件として扱われるので対象ないです。一方で刑事事件の法律相談は受け付けていません。
民事事件と刑事事件の違いは少し複雑ですが、とりあえずは検事VS弁護士で裁判を行うものが刑事事件、弁護士VS弁護士で裁判を行うものが民事事件と覚えておけば十分です。
民事事件の他には家事や行政についての問題に対応できます。
刑事事件についてできること
刑事事件について法テラスができることは犯罪被害者支援についての相談と国選弁護人候補の指名などです。
もし、会社で犯罪が起きた場合は法律事務所よりも警察に相談したほうが良いです。逆に背任や横領、わいせつなど犯罪の加害者にされそうなときは弁護士に相談します。
法テラスのメリット
法テラスのメリットは弁護士事務所より費用が安くなることです。経済的に弁護士事務所を利用しづらい、悪徳弁護士に当たらないか不安だという場合は弁護士事務所を利用する前に法テラスで相談することがおすすめです。
弁護士への相談には条件がありますが、法テラススタッフに電話をかけることは可能です。(もちろん、電話問い合わせで具体的な解決はできません)
法律相談は3回まで無料
法律相談を3回まで無料で受けられます。法律相談は1回につき30分までですが、弁護士事務所で相談すれば30分で5000円ほどかかります。これはずいぶんお得ですね。
4回目以降の相談は有料である点、予約制なので容易な相談時間の延長ができない点は注意してください。
相談場所は法テラスでなくても良い
法テラスと契約している弁護士や司法書士が近くにいる場合はその弁護士や司法書士の事務所で相談を受けることができます。
分割払いが可能
分割払いが利用できる点も嬉しいですね。労働問題を解決するためには相談料の他、問題解決を依頼する際の着手金や成功報酬がかかります。訴訟に発展すれば数10万円かかることもあるので、一括で払うのは難しいです。
しかし、法テラスを利用すれば法テラスが弁護士費用を立て替えてくれ分割払いができます。1月あたり5000~10000円という少額の返済で負担が少ないです。
法テラスを利用しない場合でも分割払いに対応している弁護士事務所を探せば同様に分割払いが可能です。
費用を安く抑えられる
法テラスのメリットは何といっても費用が安いことです。法テラスを利用しない場合に比べて半額以下で問題の解決が期待できます。例えば弁護士事務所の場合は労働審判だと20万円ほどで訴訟なら30万円ほどの着手金がかかります。(成功報酬がプラスされます)
一方、法テラスなら労働審判なら10万円ほどで訴訟でも25万円以内での解決が可能です。(成功報酬がプラスされます)
法テラス利用時の注意点
お金がない人や法律問題に慣れていない人が気軽に利用できる法テラスですが、法テラスを利用する際にはこのような注意点に気を付けてください。
利用できる方の収入・資産に制限がある
法テラスはそもそも、経済的な余裕が少ない人に向けたサービスです。したがって法テラスを利用しなくても金銭的に余裕がある人は法テラスを利用できません。
法テラスを利用するときは、源泉徴収票などを用いた審査が行われます。
収入の制限
法テラスの利用にかかわる収入の制限はこちらです。
住宅ローンの有無や住んでいる地域によって月収の条件が軽くなっていきます。
単身者 | 手取り収入18万2000円以下 |
2人世帯 | 手取り収入25万1000円以下 |
3人世帯 | 手取り収入25万1000円以下 |
4人世帯 | 手取り収入25万1000円以下 |
それ以上 | 家族一人につき30000円増加 |
資産の制限
法テラスの利用にかかわる資産の制限はこちらです。
医療費や教育費の負担がある場合は相当額が控除されます。(無料法律相談を受ける3か月以内の出費が条件になります)
もちろん、持ち家は資産から外されます。
単身者 | 180万円以下 |
2人世帯 | 250万円以下 |
3人世帯 | 270万円以下 |
4人世帯 | 270万円以下 |
それ以上 | 300万円以下 |
担当弁護士を選べない
法テラスは担当する弁護士を選べません。そのため、弁護士との相性が悪いことや対応に不満を感じる場合があります。弁護士が合わなかった場合は変えてもらうことができますが、やはり弁護士の指定は認められていません。
弁護士のモチベーションが低いことも
法テラスは報酬が安いためモチベーションが低い弁護士が混ざっています。もちろん、社会のための活動という高い意識を持って貢献している弁護士もたくさんいます。
「国が運営しているから安心」という勘違いだけ注意しましょう。
労働問題に強い弁護士にあたるとは限らない
仮に対応の良さそうな弁護士に当たったとしてもその人が労働問題に強いとは限りません。労働問題は片手間で対応できるほど簡単と言えず、実績が豊富な弁護士でなければ依頼者に不利な結果をもたらします。
経験の浅い弁護士も多数
法テラスの弁護士は経験が10年未満の人が多く、ベテランとは言えません。若くて優秀な弁護士もいますが、年齢が若いと心細い感は否めません。
手続きに時間がかかる
法テラスを利用するためには審査が必要で、審査結果が出るまで2週間かかります。提出書類の準備に手間取るとその分審査の開始が遅れるため手際よく準備してください。
相談の日程を合わせなければいけないので相談者のスケジュールによってはもっと時間がかかることもあります。
ただし、審査に時間がかかるから「審査に通りづらい」わけではありません。むしろ、条件を満たしている人はできるだけ利用できるように努めています。
法テラスでなく法律事務所に相談しても得られるメリット
法テラスの利用を考えるのは、やはり経済的な事情だと思います。しかし、ある程度であれば法テラスを利用しなくても大丈夫かもしれません。また、信頼できる弁護士を選べるということはお金に代えられない大きなメリットです。
労働問題に強い弁護士を選ぶことができる
弁護士に頼るなら労働問題についての専門性と実績を重視しましょう。労働問題は会社や労働者によってケースバイケースだから、実務経験の多さが問題解決能力に深くかかわります。
労働問題に強いとは単純に法律を知っているだけでは不十分です。多くの事件が裁判外で解決している以上会社との交渉力や適切な手段を選ぶ判断力も問われます。
初回相談無料の弁護士事務所もあります
問題が解決すると分かっていても相談料が惜しい気持ちはよくわかります。そんな方は初回の相談料がかからない弁護士事務所を利用すると良いです。初回相談を受ければある程度の回答を得られますし弁護士事務所の風土や質もうかがえます。
大体は、初回相談を30分までに設定しているようです。
未払い残業代請求なら、獲得した残業代から支払える場合も
労働問題の解決で金銭を得られる場合、高い弁護士費用を払いきれる場合があります。例えば残業代請求なら最大で2年分の残業代を払ってもらえるので少額でも数10万円、あまりに多ければ200万円超になることもあります。
たとえ少額でも訴訟にならなければ十分に賄えそうです。
セクハラやパワハラの場合は慰謝料が問題となります。うまくいけば慰謝料で弁護士費用を賄うことが可能です。
分割払いに対応している弁護士事務所もあります
ただ、労働者としての権利を行使する理由が必ずしもお金とは限りません。労働環境の改善や地位の保全などお金以外に価値のある利益を得るために弁護士事務所を利用する場合も考えられます。
もし、法テラスは使えないが経済的に余裕がない場合は分割払いに対応している弁護士事務所を選ぶことがおすすめです。
法律事務所を通じて法テラスを利用することも可能
法テラスは直接法テラスに赴かなくても相談が可能です。法テラスは弁護士が有期契約でスタッフになっているのでその人がいる弁護士事務所を相談場所にできます。
しかも、法テラスと契約している弁護士事務所に直接赴いて法テラスの料金で相談することも可能です。法テラスでの相談は弁護士を選べませんが直接弁護士事務所を利用すれば、このデメリットが解消できます。
法テラス利用も含め、労働問題に強い弁護士に相談を
法テラスはお金の余裕がない相談者の強い味方です。やはり格安の料金で弁護士を利用できることと費用を立て替えてもらって分割払いできる点が大きいです。ただ、法テラスは必ずしも優れた弁護士に出会えるとは限りません。経済的に余裕があるなら多少お金がかかっても労働問題に強い弁護士の利用がおすすめです。
弁護士に依頼するうえでの損得は、最終的に手元に残るお金で決まります。もし、弁護士費用が高くても得られるお金が大きくなるならかえって民間の法律事務所に依頼したほうがお得になる場合があります。
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