弁護士・社労士・行政書士・司法書士、残業代請求は誰に相談すべき?

2020年6月19日9,543 view

残業代

残業代請求は残業代計算の複雑さや立場の強い企業との交渉が難しい点から、法律家のサポートを得たいところです。しかし、法律家と言っても弁護士の他に社労士や行政書士、司法書士などがいて、いったい誰を選べばよいのか迷ってしまいますよね。こちらでは残業代請求で選ぶべき法律家のポイントを紹介します。

弁護士に相談したら、未払い残業代が請求できた
残業代を請求することができるのはどんな人?
1日8時間以上、週40時間以上働いている人
次の項目に当てはまる人は、すぐに弁護士に相談
  • サービス残業・休日出勤が多い
  • 年俸制・歩合制だから、残業代がない
  • 管理職だから残業代が出ない
  • 前職で残業していたが、残業代が出なかった
未払い残業代請求に強い弁護士を探す

残業代請求は労働法を熟知した法律のプロにお願いしよう

残業代請求をサポートしてもらうなら労働法に詳しく実務経験豊富な法律家にお願いしましょう。残業代の根拠は労働基準等法という法律で残業代未払い以外の労働問題も同時に起きている場合も労働基準法や労災保険法などいわゆる労働法が関わります。

よって、弁護士、社労士、行政書士、司法書士を問わず労働法に詳しくない人、特に残業代請求についての経験と実績がない人は選べません。

これを踏まえたうえで法律家の選び方を説明します。

残業代請求の流れを知る

残業代請求をするために法律家を選ぶうえで知っておきたいのが残業代請求の流れです。弁護士、社労士、行政書士、司法書士はそれぞれの役割や労働法についての詳しさ、そして【与えられた権限】が異なるからです。

つまり、残業代請求のうちできることとできないことが分かれます。

唯一、制限なく残業代請求の手続きに関われるのは弁護士だけです。

残業代請求の証拠集めと書面による請求

残業代を請求するうえで必要なのは残業の根拠となる勤怠記録や給与明細などの証拠を集めることです。有力な証拠を集められるときは本人による請求さえ可能ですが、勤怠記録がそろわない時や労働にカウントできるかあいまいな時間の判断をするときに法律家の実力が示されます。

また、割増賃金や遅延損害金などの計算も複雑です。

残業代の証拠が集まったら内容証明郵便で残業代請求を行います。

残業代請求についての話し合いをする

残業代請求の書面を送った後、会社から返答を得て話し合いに入ります。これを和解交渉と呼びます。法律家によっては和解交渉を代わりにやってもらうことができます。

和解は裁判外の解決なので満額取り戻せないこともありますがそこは弁護士費用や裁判期間による負担との兼ね合いです。

裁判や労働審判手続で残業代請求をする

もし、和解交渉に応じてもらえない時は裁判所で調停や訴訟などの法的手続きを行います。労働問題についての調停は労働審判手続を、労働基準法は民法の特別法にあたる ため裁判は民事裁判を用います。

裁判や労働審判手続を代理して欲しいかどうかも法律家選びで重要なポイントになります。

弁護士に残業代請求を相談する

「法律相談と言えば弁護士」というのが一般的な理解だと思います。労働問題に置いても弁護士にお願いすることがベストです。その理由は他の士業と違って残業代請求にかかわる権利を制限されないからです。

弁護士は書類作成から訴訟まですべてできます

残業代請求に必要なことは残業代の計算、書類作成、和解交渉、法的手続きですが、弁護士はそのすべてが可能です。他の士業は書類作成までの制限が原則です。

これだけでも弁護士を選ぶ優位性は圧倒的です。

たとえ労働問題に詳しい社労士でも交渉や裁判の代理はできません。

弁護士を確保することは依頼者の安全につながる

「自分で残業代請求をするから残業代計算だけ他の士業にお願いする」と考えている方は要注意です。弁護士以外に依頼をして困る最たる原因は、いざ交渉が行き詰まった時に弁護士を探さなければいけなくなること。

もし社労士や司法書士が自分のできる範囲を超えた時は提携の弁護士を紹介されることが多く、結局最初から弁護士に頼むのと一緒です。

つぶしがきくから気をつけたい弁護士選びの落とし穴

弁護士は法律職の中で最も広い権限を持っています。だからこそ、弁護士選びでは一つだけ大きな注意点があります。それが労働問題専門の弁護士を選ぶこと。

いかに優れた弁護士でもすべての法律を扱うのは困難で、相続専門、登記専門、離婚問題専門といったように自分の専門分野を絞っています。もし、労働問題に慣れていない弁護士に依頼をしても好ましくない結果になるか他の弁護士を紹介されることになります。

社労士に残業代請求の相談をする

社労士は、正式には社会保険労務士と言います。いかにも労働問題や社会保険について詳しそうですね。社労士はもとから労働法を専門に扱っているため弁護士よりも詳しい事例を知っていたり、柔軟な提案をできる人も少なくありません。

しかし、社労士ができるのは残業代の計算と内容証明郵便を送るところまでです。和解交渉や労働審判、裁判の代理人になれません。

社労士は労働局によるあっせんの代理や裁判の補佐はできる

ただ、社労士は労働基準監督署によるあっせんで解決する場合は本人の代理として交渉ができます。もし、社労士に交渉をお願いしたいのであればこの形が考えられます。

法的手続きの補佐人となれる点は司法書士や行政書士に比べてメリットと言えるかもしれません。補佐人とは弁護士の補佐として裁判所で意見陳述を行う人で反対尋問はできません。

補佐人という制度は弁護士がより専門的な社労士に協力を求める場合に使われるため、結局は弁護士の力が必要になります。補佐人の経験が多い社労士はそれだけ弁護士に信頼されていることを意味します。

社労士の役割は紛争を未然に防ぐこと

社労士が持つ役割は会社の労務管理をしっかり行って紛争を未然に防ぐことです。わかりやすく言えば残業代の未払い、ハラスメント、労災といった問題が起きないように会社をサポートする仕事です。

社労士は平時に役立つ存在、弁護士は紛争時に役立つ存在と覚えましょう。

行政書士に残業代請求を相談する

行政書士は公的機関へ提出書類作成および提出の代理をする仕事です。そのため、裁判に立つことはまず不可能で、できても残業代計算から内容証明郵便の作成に限られます。

そもそも、行政書士が労働法に精通している場合は少なく。労働法に詳しい行政書士の場合は社労士を兼務しています。要するに、社労士の下位互換的存在と言えます。

司法書士に残業代請求を相談する

司法書士は民法にかかわる書類作成を広く行える人です。司法書士と言えば「登記」のイメージが強いですがそのほかにも裁判に使う資料作成や成年後見人などの業務を行っています。特に認定司法書士であれば債権額140万円未満の和解交渉や簡易裁判所における裁判の代理人ができます。

労働基準法は民法の特別法であり、未払いの残業代は民法上における債権にあたりますから司法書士も残業代計算や書類作成が可能です。認定司法書士であれば140万円未満の残業代請求を簡易裁判所の訴訟まで行えます。

債権とはお金を払ってもらう権利のことで、簡単に言えば未払い残業代は法的な扱いにおいて借金の過払い金と一緒です。

残業代請求においては弁護士の下位互換でしかない

司法書士は不動産登記や会社の約款づくりに対しては弁護士以上の力を発揮してくれますが、残業代請求やその他労働問題については弁護士の下位互換と言える役割しか持っておらず労働問題への詳しさも社労士に及ばないでしょう。

残業代が140万円以上になりそうなときは迷わず弁護士に頼ってください。

だから、残業代請求は弁護士に相談しよう

士業に種類があるということは、それぞれの得意分野や権限が全く異なることを意味します。その中でも弁護士は最も幅広い業務を行える資格で試験も一番難しいです。

残業代請求について法律に詳しくない私たちはどこまでサポートを受けるべきか判断しかねるでしょう。だからこそ、予定外の事態が起きてもすぐに対応できる弁護士が相談先にうってつけです。

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