労災で家族が死亡…遺族が行う労災申請・慰謝料・損害賠償請求の方法

2019年1月23日1,664 view

労災で家族が死亡した場合は遺族補償給付を受け取ることができます。ただ、遺族補償給付は受給者資格が限られていることから損害賠償請求や死亡保険金の受取りなど他の手段についても検討すべきと考えられます。

こちらでは家族が労災で亡くなった場合に請求できるものとその方法について紹介します。

家族が労災で死亡した場合は遺族補償給付が受け取れます

労災保険は業務や通勤による怪我、疾病、死亡について補償してくれますが、労働者がなくなっている場合は自分で労災補償を受け取ることができません。そこで、労働者が労災によって死亡した場合はその家族が遺族補償給付金を受け取ります。

通勤災害の場合は使用者に補償責任がないので”補償”という文字が消えた遺族給付金となりますが、それ以外の違いはありません。遺族補償給付には遺族補償年金と遺族補償一時金という二つのタイプがあります。

遺族補償年金を受け取れる人は少ない

死亡した人の損害賠償権が相続されるのに対し労災保険による遺族補償年金は受け取れる人が限定されています。

こちらが受給権者の一覧で、この中で”最も順位の高い人”のみが遺族補償年金付を受け取れます。

  1. 妻、60歳以上または障害の夫
  2. 18歳に達する日以後最初の3月31日までの間にあるか、障害の子
  3. 60歳以上または障害の父母
  4. 18歳に達する日以後最初の3月31日までの間にあるか、障害の孫
  5. 60歳以上または障害の祖父母
  6. 18歳に達する日以後最初の3月31日までの間にあるか、60歳以上または障害の兄弟姉妹
  7. 55歳以上60歳未満の夫
  8. 55歳以上60歳未満の父母
  9. 55歳以上60歳未満の祖父母
  10. 55歳以上60歳未満の兄弟姉妹

基本的には死亡した方の配偶者かその子が受け取ることになるでしょう。妻に比べて夫の場合は制限がある点に注意したいです。また、同順位の受給権者が2人以上いる時は平等に分け合います。

遺族補償年金の申請が通った場合は遺族補償年金の他に遺族特別市給金、遺族特別一時金を受け取ることができます。

遺族補償年金の金額は賃金と遺族の人数で決まる

遺族補償給付の金額は労働者が生前受け取っていた賃金と、遺族の人数で決まります。遺族補償給付における”遺族”とは「受給権者および受給権者と生計を同じくしている受給資格者」であって民法における「法定相続人」とは異なります。

給付される遺族補償年金はこのように決められています。

参考リンク:厚生労働省 遺族(補償)給付葬祭料(葬祭給付)の請求手続

遺族補償年金の給付基礎日額とは死亡まで直近3ヶ月の給与を日割りしたもので、遺族特別年金算定基礎日額は死亡まで1年間にもらったボーナスなどの特別給与を365でわったものです。

遺族年金を受け取っている場合の併給調整

社会保険の遺族年金は遺族補償年金と一緒に受け取ることができますが、遺族補償年金のみ併給調整がされ、本来の80%の支給額になります。遺族特別支給金と遺族特別年金については併給調整がされず、満額受け取れます。

遺族補償給付の受給権者がいない場合は遺族補償一時金が支給される

遺族補償給付の受給権者がいない場合は遺族補償一時金が支給されます。遺族補償一時金の受給権者は民法の法定相続人とほぼ同じですが、受給権の順位は異なります。

  1. 配偶者
  2. 労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた子・父母・孫・祖父母
  3. その他の子・父母・孫・祖父母
  4. 兄弟姉妹

このように直系卑属と直系尊属には優先順位がないので注意してください。

遺族補償一時金の申請が通れば遺族補償一時金、遺族特別支給金、遺族特別一時金が支給されます。

死亡した場合に受け取れる労災保険の申請方法

遺族補償給付を受け取るためには労働者が働いていた会社の所在地を管轄する労働基準監督署への申請が必要です。労働基準監督署へ提出する書類は遺族(補償)年金支給請求書です。通勤災害と業務災害で提出する書類が少し異なります。

さらに遺贈補償給付金の申請をするためにはこのような書類の添付が必要です。具体的な書類については弁護士や厚生労働省、労働基準監督署にご確認ください。

  • 被災者の死亡を証明できるもの(死亡診断書など)
  • 申請者が受給権者であることを証明する書類(戸籍謄本など)
  • 社会保険の遺族年金が支給されている場合はそれを証明する書類(併給調整のため)

遺族補償給付が認められるためには業務や通勤との相当因果関係が求められる

労災保険がカバーするのは業務や通勤による死亡です。したがって、労働者の死亡が労災事故によるものだと認められるためには業務や通勤との因果関係が証明されなくてはいけません。

遺族補償給付の申請については死亡診断書や死体検案書などが証拠となります。

自殺の場合も労災認定される可能性あり

労働者が自殺してしまった場合でもその原因が業務にある場合は労災認定される可能性があります。なぜなら業務による精神障害を理由に自殺した場合は業務との相当因果関係があると言えるからです。

この場合は、死亡した事実だけでなく業務起因性の伴う精神障害があってそれが自殺に結びついたことの証明が必要です。

労災はあくまで保険ですから企業の故意や過失は問われません。

遺族補償年金は前払い可能

遺族補償年金は前払い可能です。これを遺族補償年金前払一時金といいます。給付基礎日額1000日分、800日分、600日分、400日分、200日分のいずれかを選択でき、前払いされた後はその分が本来支払われるはずだった期間まで支給停止されます。

必要に応じて遺族補償年金前払一時金請求書を提出しますが、この制度を使えるのは1回だけです。前払いできるのは遺族補償年金のみで遺族特別年金は前払いしてもらえません。

葬祭料の申請も忘れずに

遺族補償給付のほか、葬儀費用として葬祭料も労災保険から支給されます。遺族補償給付と葬祭料の申請は別の書類で行われるのでこちらも忘れずに行いましょう。

家族の死亡について労災がおりない人も損害賠償請求権を持つ

遺族補償給付の受給権者は狭いので、労災だけでは十分な補償を得られないことが予想されます。また、労災は慰謝料については一切の記述がありません。したがって、家族の死亡について加害者がいる場合は損害賠償を請求します。

労災はあくまで保険ですから、それを理由に損害賠償請求権は失われません。ただし損害賠償が支払われた場合はその範囲で遺族補償給付の支給額が停止されます。これを損益相殺と言います。

逸失利益と慰謝料の請求権は死亡した労働者から相続する

労災事故で労働者が死亡した場合は、遺族がそれによる精神的損害や生活費を請求するのではなく「死んでしまったことに対する精神的苦痛と本来稼げていたはずの逸失利益を死亡した人から相続」します。損害賠償請求権は、相続できるのです。

慰謝料が相続されるという立場は判例によりますが、一説ではその方が慰謝料が高くなるからではないかと考えられています。

よって損害賠償請求の結果は本人が直接訴えて受け取れる額と同じになるはずです。

一応のおさらいですが、逸失利益とは死亡したことによって失われた利益のこと。慰謝料とは具体的に算定できない精神的苦痛の金額のことです。慰謝料については実際の損害賠償だけでは救済されない部分の補完とも考えられています。

胎児も相続権を持っています。

会社へ請求する根拠は安全配慮義務違反

会社へ損害賠償を請求する根拠は安全配慮義務違反です。労働安全衛生法に定められた安全配慮義務を違反した場合は債務不履行として契約責任を果たしてもらえます。

状況によっては故意または過失によって死に至らしめたとして不法行為責任が問われるかもしれませんが、故意や過失を問わない安全配慮義務違反の方が賠償請求しやすいためあくまで前者がよく採用されます。

安全配慮義務は会社が積極的に果たすべきものであって、パワハラやセクハラが起こっている場合も会社は放置してはいけません。よほどのことでない限り「知らなかった」では済まされないのです。もちろん、安全配慮義務がバレないように労災隠しをすることも許されません。

第三者損害の場合は不法行為責任

会社と関係ない第三者による損害の場合は不法行為責任が問われます。不法行為とは要するに契約がないのに損害を受けることです。通勤や外回り中に起きた交通事故がその典型でしょう。

この場合は相手の故意や過失を証明しなくてはいけませんが、轢き逃げでもない限りはそこまで困らないでしょう。本当に困るのは加害者が無資力で損害賠償を払えない場合です。

損害賠償請求は話し合いか裁判か

損害賠償請求は加害者に対して話し合いか裁判の形で行われます。話し合いを選ぶと短期間かつ柔軟な解決が望めます。裁判を選ぶと時間はかかるものの確実な解決が望めます。基本的には話し合いの場を作ってから訴訟に踏み切るかどうかを決めます。

会社が労働者の死亡について補償金を認めていたり、交通事故の加害者が任意保険に入っていたりした場合はすぐにお金が支払われるので解決しやすいです。逆にブラック企業で労働者を軽視している場合は裁判に発展しやすいです。

規模の大きなブラック企業であればあの手この手で裁判を妨害し、強引に上訴することも考えられます。

労災について民間の死亡保険金を受け取った時は

労働者が死亡した際、遺族が死亡保険金を受け取る場合があります。死亡保険金については労災保険との併給調整がありません。

死亡保険金は相続税がかかるかもしれない

労災で遺族が死亡保険金を受け取った場合、労働者本人が被保険者であれば相続税を計算するときだけ相続財産として扱われます。したがって労働者の財産が多い場合は死亡保険金を受け取った人が相続税を払うことになるかもしれません。

ただ、厳密には相続財産ではないので遺産分割で他の相続人と分けることは不要です。

労災で家族が死亡した場合は弁護士と手続きを進めよう

労災で家族が死亡した場合は労災以外にも葬儀や遺産分割、各種名義変更や登記などやるべきことがたくさんあります。家族だけでは何から始めて良いか悩んでしまうのも無理はありません。

余裕がないときはためらわずに弁護士へ相談しましょう。弁護士は加害者との交渉や訴訟においても代理人を勤めてくれるので遺族の負担を最小限に抑えてくれます。

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