労災申請の手続き方法と流れ、認定されなかった場合の対処法

2020年6月19日20,662 view

仕事をしている時や通勤をしている時に事故が起きたら労災申請をしましょう。労災申請をすれば然るべき保険が下りるので治療費や逸失利益を賄えます。

労災は労災であることを示さなくてはいけないので早めの手続きが肝心です。

労災申請をすべきなのはどんな時?

労災といえば建設現場で足を滑らせるなど肉体労働者に多いイメージがあるかもしれません。しかし労災の範囲は意外と広く、メンタル面についての損害も認められます。

労災申請をすべき時は多く区分けて業務災害と通勤災害の2種類があります。

業務災害とは業務と因果関係のあるもの

労災といって真っ先に思いつくのは業務災害でしょう。業務によって怪我や病気になってしまった場合は間違いなく労災ですが、病気の場合は怪我に比べて因果関係を立証しづらいむづかしさがあります。

業務の範囲は幅広く、例えばデスクワークでも資料を運んでいる時に転倒して怪我をした場合も労災だし、医療現場で注射針などによって病気に感染した場合も労災になるかもしれません。

また、災害には病気も含まれているのでハラスメントによる精神障害や過労死についても労災認定されます。

通勤災害とは通勤中に起きた事故など

通勤中に交通事故に見舞われた場合、これも労災になります。このような場合は通勤災害として通勤災害給付を受けます。

通勤も会社に求められて行われているわけだから労災が論点となることはおかしくありません。例えば地震や台風などの災害があった時に強制出勤させることは労災のリスクを高めます。

ただし、あえて危険な経路を選んで事故にあった場合は当然、労災が認められません。

労災に見舞われたら労災指定病院へ行こう

労災保健は普段病院で使う健康保険に優先されます。つまり労災事故があった時は健康保険が使えないので必ず労災指定病院へ行きましょう。ちなみに労災事故の場合は健康保険証が不要です。

労災指定病院は厚生労働省で検索すれば出てくるし、会社が労災指定病院を教えてくれる場合もあります。

労災申請の方法と手続きの流れ

労災と思われる事故や事件に巻き込まれたらすぐに労災申請をしましょう。労災申請をしないと然るべき保健給付を受けられず不利益を被ってしまいます。

労災申請は企業が代行してくれる場合が多く、企業も労働者死傷病報告を提出する必要があるのでまずは企業に連絡をしましょう。

企業が労災申請を代行できない、そもそも労災申請を担当する部署がない時は自分や家族が労災申請を行います。ただし、自分で労災申請する場合でも事業主の証明は書いてもらう必要があります。

労災申請はこのような流れで行われます。

  1. 管轄の労働基準監督署を探す
  2. 労災申請に必要な書類を提出する
  3. 労働基準監督署の審査を受ける
  4. 保健給付がされる

1.管轄の労働基準監督署を探す

労災申請は基本的に労働基準監督署に対して行います。例外は労災指定病院で治療を受けた場合の療養給付申請と二次健康診断等給付申請です。労働基準監督署への申請は郵送でも可能です。

申請すべき場所は労災が起きた時に勤めていた事業所を管轄する労働基準監督署です。申請者の住所や本社の住所を管轄する労働基準監督署ではないことに注意してください。

2.労災申請に必要な書類を提出する

労災申請に必要な書類を提出します。労災申請に必要な書類は受けとる労災保険給付に応じて決められています。労災と一口にいってもこれだけの種類がありますし業務災害と通勤災害でも申請書類の様式が異なります。

  • 療養給付
  • 休業補償給付
  • 障害補償給付
  • 介護給付
  • 遺族給付
  • 葬祭料
  • 二次健康診断給付

なお、傷病年金については特に請求が必要ありません。

療養給付

病院で治療を受けた場合に受け取れる給付です。原則として労働者は治療費を一切負担しません。労災指定病院で治療を受けた場合はその病院へ請求書を、それ以外の病院で治療を受けた場合は労働基準監督署へ請求書と領収証を提出します。

労災は労災保険が使えないので労災指定病院以外の医療機関で受診した場合は一旦すべて自費負担となります。

休業補償給付

休業している間の給与を受け取れます。3日目までは企業が負担し労災保健はそれ以降の費用を負担してくれます。休業中に受け取れるお金は通常通り働いた給与の80%です。労災の場合は一般的な休業手当である60%に休業特別支給金の20%が上乗せされます。

障害補償給付

労災事故によって障害が発生した場合はそれに見合った給付を受け取れます。障害等級が7級より重い場合は障害年金と障害特別年金が、障害等級が8級より軽い場合は障害一時金と障害特別一時金を得られます。さらに、どちらの場合も障害特別支給金が得られるかもしれません。

介護給付

障害によって介護が必要になった場合は介護保障給付が受けられます。介護を受けていて、かつ入院・入所していない場合に限られます。

遺族給付

労災事故で労働者がなくなった場合、遺族は遺族補償年金や遺族特別年金、遺族特別市給金を受け取ることができます。これは、国民年金や厚生年金が支給する遺族年金と一緒に受け取ることができます。遺族特別市給金は300万円。労災保険が給付する遺族年金は遺族の数と給与によって決められます。

葬祭料

葬儀にかかった費用も労災保険で給付してもらうことが可能です。

二次健康診断給付

これは事故と関係なく、定期健康診断で異常がある場合に再び行われる二次健康診断および特定保健指導のお金を給付する制度です。こちらも労災保険からまかなわれますが申請先は診断を受けた病院です。

3.労働基準監督署の審査を受ける

労働基準監督署の審査を受けて初めて労災認定がされます。たとえ怪我や病気はあってもそれが業務と関係ない、通勤中であっても擁護できない落ち度があったなどの証拠が見つかれば労災は認められないので注意してください。

労災認定で最も大切なのは労災事故と業務の因果関係です。きちんとそれを立証する準備をして起きましょう。

4.保健給付を受け取る

労災が認められたら保険給付を受け取ります。お金は預金口座に振り込まれます。

第三者に損害を与えられた場合

労働災害の中には企業でも労働者でもない第三者に損害を与えられるものもあります。その典型といえば交通事故ですが、他にも犯罪やトラブルに巻き込まれて労災認定されることもあります。たとえ出張先でも労災の認定基準は変わりません。

労災申請が認められなかった時はどうなる?

労災申請は必ずしもスムーズにできるとは限りません。このような問題を解決できない時は迷わず弁護士に相談してください。

労災認定がされなかった場合

労働基準監督署が審査の結果労災を認めてくれなかった場合は、労災保険給付が受けられません。これに納得がいかない場合は処分がされてから3ヶ月以内に審査請求をしましょう。審査請求は労働者災害補償保険審査官に対して行います。

審査請求をしても処分が覆されないことが決定された場合はその決定より2ヶ月以内に労働保険審査会に対して再審査請求をします。再審査請求の採決にも不服がある場合は訴訟を行います。再審査請求をせずに訴訟をすることも可能です。

労災申請の時効は短い

労災が認定されない理由はいろいろありますが、時効だけは過ぎないように注意したいです。基本的に労災に関しての消滅時効は2年で、遺族給付と障害給付は5年の消滅時効となっています。ただし傷病年金には時効がありません。

企業が労災を認めようとしない場合

労災申請をするためには事業主の証明を求めるのが通常ですが、イメージダウンや労災保険料の増加を恐れて労災隠しを強要することがあります。もちろん、企業が労災隠しをすることは違法ですから事業主の証明がなくても協力してもらえなかった趣旨を書けば労災申請が可能です。

労災隠しが横行する会社であれば労働基準監督署が労災を認めてくれるよう入念な証拠集めを心がけてください。

労災申請が上手くいかないときは弁護士に相談を

労災申請は労働基準監督署に書類を出すだけですが、本当にこれは労災なのか?労災だとしてどんな給付を受け取れるのか?というポイントは判断しづらいところがあります。しかも労災申請には労災認定を受けられるだけの証拠が必要となるので、一人での申請が心細い時は弁護士にお願いしましょう。

※多くの企業は労災申請を代行してくれるので、本記事は労災申請を代行する部署がない企業で働く人や企業が労災申請に協力してくれない人向けです。

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