仕事中の怪我・病気で労災がおりない!まず被災者が確認すべきこと

2020年6月19日146,194 view

仕事中に怪我をした、病気が発症した。なのに労災がおりない!ということは決して少なくありません。労災は労働者を守る制度であるはずなのになぜ仕事中の怪我や病気で労災保険給付を受け取れないのでしょうか?そこには、知っているようで知らない労災制度の勘違いがありました。

労災制度でサポートされないものを理解し、労災保険以外での解決も考えましょう。

怪我をしたのに労災がおりない!それはどうして?

労災保険は業務や通勤による負傷、疾病、死亡に対する補償があり、多額の治療費や働けない間の生活費が必要となった被災者を力強く支えてくれます。

ところが労災について「仕事中の怪我や病気なら何でも労災がおりる」と勘違いしている人は少なくありません。実は労災が認められるためには仕事との関連性が求められます。

まずは労災がおりない次の理由と、あなたが被った損害に照らし合わせてみましょう。

業務による怪我や病気と判断されなかった

労災とは「業務によって引き起こされた怪我や病気」であり「仕事中に起きた」だけでは不十分です。それどころか仕事時間外に発症した場合でさえも業務による怪我や病気と判断されれば労災認定されます。(社員食堂や出張先での食中毒は業務時間外における業務災害の典型です)

このような判断基準を業務起因性といいます。

業務との相当因果関係がなければ労災がおりない

業務起因性という言葉をわかりやすく説明するなら業務との相当因果関係です。仕事中に起きる大概の事故には労災が認定されると思いますが、このような場合は労災と言い難いです。

  • 歩きながらソーシャルゲームをしていたら階段から落ちてしまった
  • 体調不良の状態で会社に申告もせず働いた結果、熱中症になった
  • 会社に乗り込んできた強盗に危害を加えられた
  • 天災に遭った(業種によっては認められる場合あり)
  • 外回りでパチンコをしていた時に転倒した

他にはもともと腰痛持ちだったのが重い荷物のせいで痛みが悪化したという場合も労災が認められづらいです。

労災は「あの仕事のせいでこんな状態になった」と主張して初めて認定されるのです。

トイレに行くなど業務に付随する行為なら労災が認められる

では、トイレに行くなど仕事を継続するために必要な中断をした場合も労災にならないのか?それは違います。業務中の事故であることを業務遂行性と呼びますが、業務請負をするために必要な付随行為をしている時の事故も労災と認められます。

精神障害はこのように判断される

労災は精神障害に対する補償も認めています。精神障害が認められるためにも業務起因性が必要で、概ね精神障害の発症から6ヶ月間にその原因となるような心理的負荷がなければ労災は認められづらいです。

また、業務の他に精神障害になるような原因がある場合もそちらが原因ということで労災が認められづらくなります。しっかりと認定されるためには証拠集めが大切です。

合理的な経路や手段を逸脱した通勤だった

労災は通勤中の事故についても認められます。典型的なもので言えば交通事故がこれに当たります。

ただし、通勤災害が認められるためには業務についての移動でかつ合理的な経路と手段と用いなくてはいけません。

合理的な経路を逸脱する

合理的な経路とは通勤やそれに付随する厚生労働省に認められた移動のために必要な経路のことです。それを逸脱するような通勤をして事故に見舞われた時は労災がおりないので注意してください。

また、日用品を買う、子供を送迎するなど厚生労働省に認められた行為以外で寄り道をした場合は通勤が中断され、その最中に起きた事故は労災の対象となりません。気をつけてください。

合理的でない方法とは?

通勤は車や徒歩、公共交通機関を使うことが一般的ですが合理性を逸脱した方法とは一体何なのでしょうか?

例えば、歩くより楽だからとローラースケートやスケートボードを使った場合、稀な大雪だからとスキーやそりを使って公道を通勤した場合です。ペーパードライバーが交通量の多い場所をわざわざ車で通勤したり、泥酔状態で運転した時も合理的な方法と認められない可能性が高いです。

通勤災害でもかなりの補償がされるので、普段から注意を払っておきましょう。

労災が受けられなくてもこのような補償は受けられる

労災が受けられないからといって一切の補償を受け取れないわけではありません。状況に応じてこのような手段を考えてみましょう。

健康保険の補償を受ける

まず考えられるのは健康保険の補償を受けることです。そもそも私たちは保険適用治療を受けるときに治療費の7割を負担してもらっています。それに加えて高額医療費についての払い戻しなど治療について補償を受けられるかもしれません。

労災を受けられない時のセーフティネットである傷病手当とは

病気や怪我が業務外のものだと判断された場合、労災保険ではなく健康保険の範囲となります。健康保険では働けなくなった人に対して傷病手当という補償をしています。傷病手当は賃金のおよそ3分の2が休業した日数分支給されます。

民間の保険を利用する

民間の保険に入っている場合はそちらから保険金を受け取れます。ちなみに、労災保険と民間の保険で両方給付される場合は、労災の金額が調整されます。

加害者に損害賠償する

加害者に原因がある場合は民事法に則って損害賠償請求をすることが可能です。たとえ労災がおりている場合であっても損害賠償は請求できます。たとえ業務外であっても会社や第三者に原因があると判断されれば問題なく賠償金を受け取れるので労災が降りなかった時の選択肢と考えてください。

また、そもそも労災では慰謝料が支払われないので慰謝料を払ってもらうために労災申請と別に損害賠償請求する場合もよくあります。

企業が任意労災保険に入っている場合もある

企業が任意労災保険位入っている場合は、公的な労災保険以上の金額を受け取りやすく、慰謝料もカバーしていることが多いです。

労災がおりないという処分を取り消す方法

労災がおりないという判断が不服であれば、労働局に審査請求を出すことができます。この審査請求は労働基準監督署の処分内容について審査を求める手続きで、これでも覆らなければ厚生労働省への再審査請求か訴訟を選べます。

行政訴訟においては訴訟より先に審査請求などの不服申し立てが必要で、これを審査前置主義と言います。

労災認定も行政処分ですから、行政訴訟として扱われます。つまり労災を認めてもらうことと損害賠償を請求することはそもそも相手が違うわけです。

労災認定を覆せるの可能性は高くないが…

労災認定の基準は労働基準監督署でも厚生労働省でも変わりません。しかし、労災申請をしてからでも新たな証拠が手に入った場合は審査が覆るかもしれません。また、訴訟の場合は裁判官が法を作る側面があるため審査請求やさい審査請求に比べて柔軟な判断がされることが期待されます。

しかし、審査請求で処分が変更されるのはおよそ5%ほどですから労災認定にこだわるより別の解決策を探した方が良いと思われます。

労災がおりなくて困ったときは弁護士に相談しよう

労災が降りなくて困った時は弁護士に相談しましょう。労働基準監督署の判断を覆すことは難しいかもしれませんが他の方法で、補償を得ることができるかもしれないし新しい証拠が見つかることもあります。

少なくとも労災がおりないという事態を防ぎたいなら労災申請の前に弁護士へ相談して十分な証拠を集めることがベストと考えられます。労働基準監督署に認められやすい申請の仕方も弁護士なら知っているはずです。

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