労災で後遺障害を認定された!労災保険の障害補償給付を受けるには
労災申請の結果後遺障害が認定された場合は労災保険の障害補償給付を受け取ることができます。後遺障害は今後一生続くであろうものなので、補償を受けられるかどうかは大きな差となります。
こちらでは障害補償給付の内容と申請方法について紹介します。
この記事で分かること
後遺障害の給付を受けるためには労災認定されることが前提
労災事故が原因で後遺障害が発生した時は障害補償給付や障害特別支給金などを受け取ることができます。しかし、後遺障害というものは事故が起き怪我や病気の治療を試みなければ分からないものもあります。
したがって後遺障害の給付を受けるのは治療を受けた結果として「障害は残ったけれどこれ以上の治療は期待できない」場合となります。労災保険位おいては症状が固定したことを治癒と呼びますが治癒という言葉のイメージに惑わされないよう注意してください。
労災事故に遭ったらまずは療養給付と休業補償給付の申請を
労災事故にあったら後遺障害よりも先に、怪我や病気の治療と働けなくなってしまった賃金の補償をしてもらうことができます。治療費については療養給付で全額、働けなくなった賃金については休業補償給付で8割払ってしてもらうことができます。
労災保険はかなり手厚い保障がされているので、忘れずに申請してください。それに、後遺障害が認められるためにはその原因となった事故が労災認定を受けなければいけないのでおそらく療養給付と休業補償給付は必須となります。
ちなみに症状が固定した=治療費が要らないとなります。よって症状が再発しない限り障害補償給付を受け取り始めたら療養保障給付や傷病年金が打ち切られます。
業務が原因とならない事故で後遺障害になった場合は治療費すら労災認定されない
逆に言えば療養給付や休業補償給付を申請した時点で労災認定が不可となれば後遺障害についての補償金もまず受け取れないでしょう。
労災事故が認められるためには、それが業務やそれに付随する行為に起き、その業務との相当因果関係がなくてはいけません。通勤中の事故であっても合理的な経路と方法を逸脱しないことが求められます。
労災で後遺障害になった時には国から何を受け取れるのか
労災で後遺障害になった場合は労災保険の領域となるため、障害補償給付金、障害特別市給金、障害特別年金あるいは障害特別一時金が受け取れます。社会保険の領域である障害年金や自賠責との二重支給を避けるための調整がされます。
その他、任意保険に入っている場合は保険会社から保険金を受け取れます。保険事故に対する給付は規約によりますが基本的には決められた保険金を労災の補償と関係なく受け取ることができます。
障害補償給付などの金額について
障害補償給付で受け取れる金額は労働者がもらっている給与と障害等級によって決まります。こちらの表をご覧ください。
参考リンク:障害補償年金・障害補償一時金 – 厚生労働省
この表から分かる通り、障害等級第1級から第7級の場合は年金形式の障害補償給付と障害特別金が支給されるのに対し第8級から第14級の場合は障害補償給付などはすべて一時金の形式で受け取ることになっています。
さて、障害補償給付が給付基礎日額で計算されるのに対し、生涯特別年金または生涯特別一時金は算定基礎日額で計算されています。これらの違いも知っておきましょう。
給付基礎日額とは1日あたりにもらえる基本給のこと
給付基礎日額は労働者の基本給を元に計算します。事故があった日か疾病の発生が確定した日の直前3ヶ月または直前の締め日から計算した3ヶ月の基本給を日数で割ったものです。したがってどの3ヶ月を元に計算するかで微差が生じます。
また、インフレ、デフレの影響があればそれを反映します。
算定基礎日額とは1日あたりにもらえる基本給以外の上乗せを計算したもの
算定基礎日額はボーナスや手当を元に計算します。故があった日か疾病の発生が確定した日以前の1年間に受けた特別給与を365で割ったものを用います。うるう年を跨ぐ場合であっても365で割ります。
労災で後遺障害が分かったら障害補償給付の申請をする
病院で治療を受けた結果として後遺障害が残った場合は勤めている、あるいは勤めていた企業の住所を管轄する労働基準監督署に対して障害補償給付請求書を提出します。業務災害か通勤災害か、あるいはどの職種かによって申請用紙が異なるので注意してください。
療養給付たる療養の費用請求書を提出すれば診断書の料金も請求できます。
不服がある場合は審査請求をする
障害補償給付を受け取る場合はすでに労災認定を受けていることが予想されるため労災事故か否かで争うことは考えづらいです。しかし、障害が14等級もあることから障害等級に対する不服が生じることはあります。この場合は障害等級を変更してもらうために審査請求を行います。
審査請求を行う先は労働局です。審査請求でも処分が取り消されない場合は再審査請求か訴訟を行います。審査請求はあまり実現性が高くないので事前に明確な証拠を揃えてからの労災申請が望ましいです。
障害補償給付申請については医学的証明が重視されますから医師に入念な検査をしてもらい、それを診断書に反映しきることが労働基準監督署の判断に影響しかねないです。
障害補償給付を受けるときに知っておきたいこと
障害補償給付を受けるときにはこのようなことも知っておくと良いです。労災は制度を知っているか知らないかで受け取れる保障が大きく変わるかもしれません。
再発したら療養給付を受けられる
症城の固定が認められた後に症状が悪くなった場合はそれを治すための療養給付が受け取れます。再発による療養給付が認められるためには次の条件を満たす必要があります。
- その症状の悪化が、当初の業務上または通勤による傷病と相当因果関係があると認められること
- 症状固定の時の状態から見て、明らかに症状が悪化していること
- 重用を行えばその症状の改善が期待できると医学的に認められること
いくら障害が悪化しても治療が期待できなければ療養給付を受け取ることができません。
労災で認められるアフターケアとは?
労災では再発の治療の他にアフターケアが認められています。これは後遺障害の変化や付随する疾病を予防するための制度で、労働者は診察や薬剤の支給、保健指導などが無料で受けられます。アフターケアーの対象になる障害にいついては都道府県労働局に確認しましょう。
特別障害支給金と傷病特別支給金は二重支給されない
傷病年金を受け取っている状態で症状固定が認められた場合は、障害補償給付に切り替えが必要です。障害補償給付や障害特別年金または障害特別一時金は問題なく受け取れますが、特別障害支給金は傷病特別支給金との差額しか受け取れません。
この部分だけは二重受け取りができない点を知っておきましょう。
ちなみに傷病年金は申請なしで受け取れますが、障害補償給付は申請が必要です。受け取れる補償が切り替わる時は特に注意してください。
障害年金と障害補償給付はどちらも受け取れる
障害年金と障害補償給付はどちらも受け取れます。この点は療養給付や休業補償給付と異なるので、労災の補償は制度ごとにチェックが必要です。
ただ、障害年金が認められるのは障害等級が1〜3級の場合に限られます。もちろん、二重支給は認められないので障害補償給付や障害特別年金に対してこのような併給調整がされます。障害年金は100%受け取れます。
- 障害基礎年金と障害厚生年金を受け取っている場合は73%
- 障害厚生年金のみを受け取っている場合は83%
- 障害基礎年金のみを受け取っている場合は88%
労災に関わる年金のみが減額される点に注意しましょう。
障害等級が8級以下の場合は一時金を受け取った時点で労災保険給付の役割が終わる
障害等級が8級〜14級の場合は一時金しか支給されないため、それを受け取った時点で労災保険給付の役割が終わります。よって等級変更が必要な時、つまり再び労災事故で症状が悪化した時は再申請が必要です。再申請が認められればその障害等級に合わせた補償を受け取れます。
労災でない後遺障害が労災事故によって悪化した場合は申請が認められた場合は以前の障害等級受け取れるはずだった金額が控除されて差額が支給されます。
障害補償給付の請求権は5年で消滅する
障害補償給付の時効は5年です。他のものよりは長いですが時効がある点は忘れないようにしてください。
労災で後遺障害になったら、各種補償について弁護士に確認しよう
労災で後遺障害申請が必要な場合はすでに事故については労災認定されています。したがって弁護士が必要になるのは正しい障害等級を認めてもらうためのアドバイスや後遺障害になった後の各種補償についての相談です。
労災以外の制度との兼ね合いについても難しいので弁護士と一緒に手続きをした方が無難です。
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