不当解雇に対する慰謝料はいくら?~不当解雇された会社に損害賠償を請求!
不当解雇をされたら、解雇無効を前提として未払賃金と慰謝料を請求するか、退職を前提として慰謝料や逸失利益を請求する方法があります。ケースによって適切な方法を選択し、証拠を集めて慰謝料請求をしましょう。不当解雇を争うためには労働問題に強い弁護士に相談し、依頼をすることが重要です。任意交渉や労働審判、労働訴訟を利用して確実に支払いを受けましょう。
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会社に勤務していると、ある日突然解雇されることがあります。それが不当解雇であれば、黙って受け入れることはできません。不当解雇されたら慰謝料請求することは可能でしょうか?他に主張できる権利がないのかも押さえておく必要があります。今回は、不当解雇された場合に慰謝料その他の請求をする方法について、解説します。
この記事で分かること
不当解雇とは
会社で解雇された場合、労働者は大変な不利益を受けます。労働者にとって仕事は生活の基本となるものですから、解雇されるととたんに生活費が入ってこなくなって、生活ができなくなってしまうからです。家族がいる人は、解雇によって家族との生活までが不安にさらされてしまいます。
ただ、どのようなケースでも「不当解雇」になるわけではありません。
不当解雇とは、法的な理由のない解雇のこと
労働者にとって労働は非常に重要なですし、労働者は雇用者に比べて不利な立場になることが多いため、労働者の権利は労働基準法その他の法律によって強く保護されています。そこで、会社が労働者を解雇できるケースは、かなり限定的にとらえられています。
いったん雇用契約を締結した以上、会社にとってその労働者が不要になったからといって、簡単に解雇できるものではないのです。法的に認められない、会社都合の勝手な解雇をしても、それは認められず、不当解雇となります。
不当解雇であれば、解雇を無効として主張することも可能ですし、一定の場合には慰謝料請求することも可能です。
慰謝料とは?
会社から解雇されたとき、労働者としては、「不当解雇だから慰謝料を支払ってほしい」と考えることがよくありますが、そもそも慰謝料とはどのようなものなのでしょうか?
慰謝料とは、不当に解雇されたことが原因で労働者が受けた精神的苦痛に対する損害賠償金のこと
不当解雇は、法的に理由のない解雇ですが、ケースによっては強い違法性を帯びていることがあります。たとえば、程度の強いセクハラやパワハラを伴うケースなどです。そういった違法性が強いケースにおいては、企業の不当解雇が民法上の不法行為と評価されて、企業に損害賠償義務が発生します(民法709条)。
そして、企業の違法行為によって労働者が精神的苦痛を被った場合に、労働者は慰謝料請求することができるのです。つまり、慰謝料が発生するためには、企業の解雇にそれだけの強い違法性があることが必要になります。
また、慰謝料は精神的苦痛に対する損害賠償金ですから、企業が支払うべき未払の賃金や残業代などとは別のものです。
不当解雇された場合、解雇が無効であるにもかかわらず、賃金が支払われなくなることが多いですし、当然残業代や割増手当なども支払われなくなるため、そういった金銭も請求しなければなりません。解雇を受け入れるとしても、逸失利益や退職金との差額を請求することも多いです。
慰謝料は、これらの他の損害の項目とは別の「精神的苦痛に対する損害賠償金」であり、不当解雇の際に請求できる金銭のうち1項目に過ぎません。まずは押さえておきましょう。
解雇の種類
不当解雇と言えるためには、法律上の理由のない解雇であることが必要です。ただ、解雇にはいくつかの種類があり、それぞれによって法律上必要な要件が異なります。そこで、以下では解雇の種類を確認しましょう。
普通解雇
まず、普通解雇があります。これは、もっとも一般的な解雇の方法です。企業が就業規則などにもとづいて従業員を解雇する場合です。ただ、労働者は強く保護されているため、会社が自分の都合で自由に解雇することは認められません。たとえば、その従業員が他の従業員の平均より能力が低いという程度では解雇の理由になりません。
また、解雇をするときには、30日以上前に解雇予告をしないといけません。30日の余裕がない場合には、足りない期間について、賃金相当の解雇予告手当を支払う必要があります。
整理解雇
次に、整理解雇があります。これは、会社の経営が悪化した場合に、人員整理をして企業の建て直しを行うための解雇です。企業の方が一方的に労働者に対して解雇を通告することもありますし、退職者を募ることもあります。いわゆる肩たたきをおこなって退職を勧奨する場合も整理解雇に含まれます。正社員からパートやアルバイト、嘱託社員に切り替えを強要することもあります。
また、実際には業績が悪化していなくても「リストラ」という名目で従業員を解雇しようとすることもありますし、業績が良いにもかかわらず、企業の競争力を強化するために不要な従業員を解雇しようとして整理解雇を行うこともあります。
懲戒解雇
3つ目に、懲戒解雇があります。懲戒解雇とは、従業員に就業規則違反やその他の非行がある場合に、懲戒処分として行う解雇のことです。就業規則内に懲戒解雇の規定があったとしても、どのような場合でも解雇が認められるものではなく、解雇が正当となるほどの強い規律違反行為があったことが必要になります。また、懲戒解雇を行う場合にも、基本的に解雇予告か、解雇予告手当の支払いが必要になります。
不当解雇になる場合とは?
それでは、それぞれの解雇の場合において、不当解雇になるのはどのようなケースなのでしょうか?解雇が認められるための条件を確認しましょう。
普通解雇の場合
まずは普通解雇のケースです。普通解雇は就業規則や労働協約、労働契約の内容にしたがって行われる解雇です。そこで、これらに普通解雇できる場合が定めてあり、その内容にしたがっていることが大前提です。それに足して、解雇制限期間でないことや、従業員の国籍や市場、社会的身分による差別的な解雇ではないこと、労働組合員であることを理由にしていないこと、女性であることや結婚、出産などを理由にしていないことなど、法律上の制限に違反しないことも必要です。
さらに、就業規則において解雇が認められる場合であっても、その解雇に相当性がないと、普通解雇はできません。たとえば、従業員の能力が他と比べて低いというだけでは解雇は認められませんし、遅刻や欠勤が多い従業員であっても、それだけでは解雇ができません。短期間に集中して問題行為があり、企業側が注意しても何らの改善が行われないケースなどにおいて、解雇が認められます。
このように、普通解雇をするためには、「合理性」と「相当性」が非常に重要な要素となります。
整理解雇の場合
次に、整理解雇の要件を確認しましょう。整理解雇については、判例によって、以下の4つの要件が確立されています。
人員削減の必要性
まず、人員を整理する必要性があることが要求されます。企業の業績が悪くないのに、周囲の風潮に便乗してリストラをしようとする場合、企業の業績が良いにもかかわらず、能力の低い従業員をリストラして企業の競争力を高めようと言うケースでは、リストラの必要は認められません。
解雇回避の努力義務
企業が、解雇を回避するための努力をしたことが必要です。たとえば、残業を削減したり他部門への配置転換、関連会社への出向を促したり資産を売却することなどが考えられます。希望退職者の募集も非常に重要で、判例でも希望退職者の募集をしないまま整理解雇をすると、無効と判断されやすい傾向があります(最判昭和58.10.27)。
解雇対象者の人選の合理性
次に、解雇対象者の人選に合理性があることが必要です。その際、従業員の年齢や勤続年数、成績や勤怠などが評価基準となります。たとえば、以下のような人が解雇対象になりやすいです。
- 業務成績が悪い人
- 勤続年数が短い人
- 非協力的な従業員
- 欠勤や遅刻、早退の多い人
- 素行不良の従業員
- 上司の命令に従わない人
- 解雇後生活不安が小さい人
- 身体虚弱の従業員
労働者へ説明・協議
整理解雇が認められるためには、労働者に対し、十分に説明をして協議を尽くすことが必要とされます。そもそも、労働協約において、人員整理するときには労働組合との協議をしなければならないと規定されている場合、充分な協議をせずに整理解雇をしても無効です。また、協約がなくても、企業は労働者に対して、整理解雇の必要性と解雇実施内容(時期や方法など)について説明をして、誠意をもって説明しないといけません。それをしないで整理解雇しても、不当解雇となります。
懲戒解雇の場合
それでは、懲戒解雇が不当解雇になるのはどのような場合なのでしょうか?これは、解雇を正当化するほどの強い服務規律違反がある場合に限られます。たとえば、勤務先の企業のライバル会社に情報提供をするなどして競業避止義務に違反した場合、会社のお金を横領した場合、飲酒運転など、重大な事故を起こした場合、犯罪行為をして起訴され、処罰を受けた場合などにおいては、懲戒解雇の相当性が認められることがあります。
ただし、当然企業側の恣意的な判断による懲戒解雇は認められませんし、規律違反があったとしても、他の方法によって解決できる場合には、やはり懲戒解雇ができません。このように、就業規則内に懲戒解雇に関する規定があったとしても、必ずしも認められるとは限らないのです。
さらに、懲戒解雇に合理性が認められるとしても、当然に解雇予告や解雇予告手当が不要になるものではありません。これらを不支給にするためには、企業は労働基準監督署から除外の認定を受けなければならないからです。
以上のように、自分に何らかの非があって懲戒解雇をされたとしても、必ずしも有効にならず、不当解雇になるケースもあります。また、企業が労働基準監督署に申請をしていなければ、解雇予告手当の請求も可能です。
解雇理由の重要性
解雇された場合には、労働者は企業に対して解雇理由書の交付を請求することができます(労働基準法22条)。この解雇理由書は、非常に重要です。当初に企業が説明した解雇理由が不十分なものであったり不適切なものであったりすると、後に不当解雇であることを証明しやすくなるからです。
解雇通知を受けたら、すぐに企業に対して解雇理由書の交付を要求を
通常、解雇理由書を見ても、自分ではそれが不当解雇になるのかどうかの判断ができないことが多いです。そこで、解雇処分や解雇理由書の内容に納得できない場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
不当解雇かな?と感じたら、弁護士に相談しよう!
以上のように、解雇には普通解雇、整理解雇、懲戒解雇の3種類があり、それぞれについて、認められるための要件が異なります。解雇理由書を受けとっても、自分では不当解雇になるかどうかがわかりません。また、実際に不当解雇を理由として慰謝料請求をしたくても、自分一人で企業と戦うのは困難です。労働者が企業と対等な立場となり、交渉をして慰謝料を回収するためには弁護士の力を借りることが必要です。
解雇通告を受けたとき、これは不当解雇ではないか?と感じたら、まずは解雇理由書を請求して、それを持ってすぐに労働問題に強い弁護士に相談しましょう。
不当解雇の典型例
次に、不当解雇にはどのようなケースがあるのか、その典型例を見てみましょう。
入院していたら解雇された
長期間入院したために解雇されるケースがありますが、この場合、解雇が違法になる可能性があります。労働基準法19条においては「休業期間とその後の30日間は、解雇を認めない扱いになっているためです。たとえば、「数週間、怪我で入院していたら、いきなり解雇された」とか「通院のために月に数日休む日が続いたら解雇された」というケースでは、不当解雇になる可能性が高いです。
妊娠を理由とした解雇
妊娠出産を理由とした解雇も認められません。妊娠した場合、少なくとも産前6週間と産後8週間の期間は労働させることが認められませんし、その後の30日間を経過するまでは解雇が出来ないことになっているためです。「妊娠したらいきなり解雇された」という場合、たいていは不当解雇です。
勤務態度が不良と言われた
「遅刻、欠勤が多い」とか「上司の命令に従わない」などの勤務態度不良を理由として解雇されることもありますが、この場合にも不当解雇になるケースが多いです。「数回遅刻しただけで解雇された」「会社に意見を言ったら解雇された」「何の注意もされずにいきなり解雇された」というケースでは、解雇が不当になる可能性があります。
能力不足と言われたケース
能力不足を理由とした解雇も無効になりやすいです。単に、他の従業員の平均能力より低いだけでは解雇できないため、業績が悪いとか成績が悪いということは解雇理由にならないためです。企業から「我が社の仕事についてこれていない」「あまりに成績が悪すぎる」「ノルマ達成できていないから解雇する」「外国人だから、日本語が話せないために解雇された」「学歴が低いために解雇された」「事故で障害者になったら解雇された」などという場合、不当解雇になる可能性が高いです。
経歴詐称をしたケース
経歴詐称をした場合であっても、必ずしも解雇理由にはなりません。それが重大なものである必要があります。また、就業規則内に、経歴詐称が解雇理由になることが書かれていない場合には解雇できません。経歴が採用の決め手になっていないなら、些細な経歴詐称だけを理由に解雇することは認められません。
整理解雇が無効になるケース
次に、整理解雇が無効になるパターンを見てみましょう。たとえば、「自分はリストラされたのに、相変わらず求人が行われている」というケースでは、整理解雇の必要性がない可能性が高く、不当解雇になりやすいです。また、「何の脈絡もないのに、ある日突然リストラされた」という場合、企業が自己都合でリストラしていることが考えられます。「労働組合に入っていたから」という理由でリストラされることもありますが、その理由での解雇は法律上認められません。
懲戒解雇が無効になるケース
懲戒解雇を理由とする解雇であっても、以下のような場合には不当解雇になりやすいです。
たとえば、「警察に逮捕されたから解雇されたけれども、その後冤罪であることが明らかになった」という場合には、解雇理由はなくなります。「会社のお金を横領したと言われて解雇されたが、本当に盗っていない」というケースでも解雇理由がありません。「社長に口答えをしたら解雇された」場合など、懲戒理由にならないことは明らかです。遅刻欠勤があっただけでも懲戒解雇にはなりません。
不当解雇されたときの対処方法2つ
それでは、実際に不当解雇された場合、どのような対処をとれば良いのでしょうか?この場合、以下の2種類の方法があります。
解雇を無効として賃金請求
まずは、解雇を無効として地位の確認と賃金請求をする方法です。不当解雇は法律上の理由のない解雇なので、解雇は無効のはずです。そこで、解雇が無効であると主張して、自分は相変わらず従業員の立場であると主張するのです。従業員ですから、当然賃金を請求することができます。解雇理由や経緯に違法性が強い場合には、合わせて慰謝料請求をすることも考えられます。
ただ、慰謝料が認められるためには強い違法性が必要であるところ、企業に残りたいというケースでは企業の違法性が弱いことが多いです。その意味で、企業に残ることを前提に慰謝料を支払ってもらうのは、難しくなることもあります。
退職を前提に慰謝料等の金銭請求をする
不当解雇をされた場合には、企業に戻りたくないことも多いです。その場合には、解雇(退職)を前提として、金銭請求をします。具体的には、慰謝料や逸失利益、退職金との差額を請求することができます。
慰謝料は、企業による解雇が違法であり、それによって精神的な苦痛を被ったために発生する損害賠償金です。逸失利益とは、解雇されたために得られなくなってしまった将来の収入のことです。解雇されなければ、そのまま会社にとどまって給料を得られたはずですが、不当な解雇によってそれが得られなくなったため、逸失利益として請求することが可能です。
退職金との差額とは、普通に会社都合で退職した場合との差額のことです。解雇が行われる場合、まったく退職金が支払われない場合もありますが、一部退職金を支給されることもあります。このことを、退職金の一部不支給と言います。退職金がまったく支給されなければ、全額の退職金相当額を請求しますが、退職金が一部支給されている場合、会社都合による退職金との差額を請求することができます。勤続年数にもよりますが、差額の金額が100万円程度になることもあります。
なお、これらの主張は「退職」することが前提となってしまうため、将来会社に残って賃金を得たいという気持ちを捨て切れていない場合には、持ち出さないように注意しましょう。
本当は戻りたくないけれど、解雇無効を争うことも多い
ここまで読んだとき、「本当は会社に戻りたくないけれど、解雇は不当なんだから、退職を前提にしてしまうのは納得できない」と考える人がいるかもしれません。実際に、会社から不当解雇をされたにもかかわらず、それを受け入れて慰謝料や逸失利益の請求をすると、まるで会社の解雇を認めたような形になるので腑に落ちないとか、癪に障る、という人も多いです。ただ、そうかといって会社に戻るのは嫌だから、「在職を前提に未払賃金を請求する」のも違うのではないか、と思って悩みます。
ここで考えてみてほしいのですが、不当解雇が行われるとき、企業としては「早くやめてほしい」と考えています。そこで、労働者が「退職を前提とした請求」をすると、企業としては「とりあえずやめてもらえるだけでよかった」と考えるかもしれません。また、企業としては「やめてもらえることが確実なら、後は支払金額を値切るだけだ」と考えて、慰謝料や逸失利益などの支払いに積極的にならない可能性があります。それより「やめてもらえるかどうかわからない」不安な状態に持ち込む方が、結果的に高い金額を支払ってもらえる可能性があります。
そこで、労働者自身が実際には会社を辞めたいと考えていても、あえて「解雇を無効として地位の確認と賃金請求」をすることが多いです。この場合であっても最終的には会社に戻ることはなく、慰謝料や逸失利益、退職金との差額を支払ってもらうことで解決します。交渉の方法として、「最終的に十分な金銭支払いをしないなら、会社に居残る」ことをカードにするのです。このことにより、企業は「穏便にやめてもらうために、いくばくかの慰謝料を支払おう」という考えになります。はじめから「退職を前提とした慰謝料請求」にすると、「やめてもらえるのが確実なら慰謝料は支払わない」と思われることがあるため、戦略的に「在職を前提」にした主張をするのです。
必ずこのような手法ですすめるべき、ということではありませんが、交渉を進める際には特に有効な方法なので、戦略として押さえておくと良いでしょう。
不当解雇で慰謝料請求するのは難しい?
今まで不当解雇によって慰謝料請求できるのかという問題を検討してきましたが、これはそれなりにハードルが高い問題です。
解雇が無効な場合には、企業には当然賃金支払い義務があるので、未払い賃金の請求は簡単ですが、解雇が不当であっても、当然に慰謝料が発生することにはならないからです。慰謝料は、不法行為にもとづく損害賠償請求権の1種なので、不当解雇によって慰謝料が発生するためには、企業の行為にそれだけ強度な違法性が必要になります。
たとえば、解雇がなかったとしても慰謝料が発生するほどの強度な違法行為がある場合なら、慰謝料が認められやすいです。具体的には、程度の強いセクハラやパワハラがある場合、解雇に関する会社とのやり取りの中で、会社から人格否定的な発言をされたり、差別的な発言をされたり脅迫行為を受けたりした場合で、労働者が精神的苦痛を被ってうつ病などの精神病になった場合などには、慰謝料請求が認められやすいでしょう。
自分では、慰謝料請求できるかどうかわからない場合には、弁護士に相談に行ってアドバイスをもらうことをおすすめします。
不当解雇の慰謝料相場
次に、不当解雇で慰謝料が認められる場合、どの程度の慰謝料が支払われるのかを見てみましょう。
ケースにもよりますが、判例を見ていると、だいたい15万円~100万円くらいの幅になっています。100万円が認められるケースは少なく、30万円~50万円程度に分布することが多いです。このように、不当解雇の慰謝料の金額は、さほど高額ではありません。
慰謝料に頼って解雇後の生活をしようとしてもうまくいきません。企業から不当解雇をされた場合、企業に戻ることを考えるか(合わせて未払賃金を請求する)、企業を退職して早期に次の勤務先を見つけるかを考えるべきです。解雇後、企業からの給付金を目当てにしていると、生活が苦しくなります。
不当解雇された場合に請求できる慰謝料以外の金銭
次に、不当解雇をされた場合に企業に請求できる、慰謝料以外の金銭について見ておきましょう。
解雇を争っている期間の賃金
まずは、解雇の効果を争っている期間の未払賃金を請求することができます。これは、解雇が無効であることを主張して、賃金を請求するパターンでのみ発生します。退職を前提とする場合には、退職後の賃金は発生しません。未払賃金は、現在までの分が発生します。計算方法は、解雇されるまでの賃金の金額と同等になりますし、賞与があればその分も加算して請求できます。
逸失利益
次に、逸失利益があります。これは、解雇されたことによって得られなくなってしまった将来の収入のことです。具体的には、解雇後の賃金相当金です。そこで、金額としては、解雇前の賃金と同等の金額になりますし、賞与があればその分も含まれます。逸失利益を請求するのは、退職を前提とする場合です。退職しなければ、企業から相変わらず賃金を支払ってもらえるため、失われた利益は発生しないためです。
逸失利益を請求する場合には、逸失利益が発生する期間が問題となりますが、次の勤務先が見つかるまでの期間(再就職の難しさ)や解雇に至る経緯、企業の交渉態度、労働者の勤続年数や年齢などを評価して決定します。請求者側は1年~2年程度を請求することが多いですが、裁判所で認容されるのは3ヶ月~半年程度になることが多いです。
また、解雇されたとしても、逸失利益が認められないこともあります。たとえば、解雇後すぐに転職活動をして次の就職先が見つかった場合には、解雇をされた企業で働く可能性がないために逸失利益は発生しません。
退職金との差額
不当解雇されたときに請求できる金銭としては、退職金との差額があります。これは、解雇によって退職金が支給されなかったり一部不支給になったりした場合に請求できるものですから、退職を前提とした主張です。この場合、請求する額は、会社都合による退職金との差額であり、ケースにもよりますが、100万円程度になることが多いです。
ただ、不当解雇を争うとき、当初は解雇を無効とする請求をすることが多いですが、この場合、退職金との差額を請求すると、退職を認めることになってしまうので、注意が必要です。最終的には会社に戻るつもりがなくても、当初は交渉の手法として解雇の無効を主張するなら、当初は退職金との差額を請求してはいけません。交渉が進んできて、退職をするという方向に話がすすんできたら、その段階で、「退職をするなら正規の退職金との差額を支払ってほしい」という条件を持ち出して、交渉を進めることが必要です。
未払賃金、残業代
不当解雇に遭ったときには、未払賃金や残業代が発生することが多いです。解雇後退職するまでの期間は未払賃金が発生しますし、不当解雇をするような会社は、就業中の残業代も支払をしていないことが多いです。残業代を請求するときには、時間外手当を請求することができますし、残業が深夜に及ぶ場合には、深夜割増手当も請求することができます。
残業代の計算は複雑なので、自分で正確に計算することが難しいです。不当解雇に遭って未払残業代も合わせて請求したいときには、弁護士に相談に行って残業代を正確に計算してもらうことをおすすめします。
弁護士費用はどうなるの?
不当解雇を理由として弁護士を雇ったとしても、相手に当然にその支払をしてもらえるおのではありません。日本の制度では、弁護士費用は基本的に本人の負担となります。そこで、任意の交渉をするときに、相手に弁護士費用を上乗せして請求することはできません。
ただ、裁判になったとき、不法行為にもとづく損害賠償金の認容金額の10%が弁護士費用として認められる例はあります。慰謝料も不法行為にもとづく損害賠償金ですから、裁判をして、慰謝料が認容された場合には、その10%の弁護士費用を相手に支払ってもらうことが可能です。
不当解雇を証明する資料
不当解雇と慰謝料発生原因を証明する資料
不当解雇をされた場合には、その事実を証明することが必要です。証拠がないと、相手も支払には応じにくいですし、労働審判や労働訴訟を起こすときには、証拠がないことは基本的に認めてもらうことができません。そこで、以下では、不当解雇を証明する資料としてどのようなものが必要なのか、説明します。
就業規則、雇用契約書
まず、会社における就業規則や雇用契約書が必要です。解雇は就業規則にもとづいて行われることが多いですし、就業規則にもないのに、いきなり解雇をしても有効にならないことが普通だからです。懲戒解雇をするときにも、通常就業規則内に懲戒理由や懲戒の手続きなどについて規定があります。就業規則は、労働者がいつでも見られる場所に設置してあるものなので、在職中か、解雇後にも何とか会社に行くなどして、コピーをとっておきましょう。
会社に雇用されたときに雇用契約書を作成している場合、その契約書内にも禁止行為などが書かれていることがあります。雇用契約書は、入社後も処分せずにきちんと保管しておく必要があります。
解雇通知書
解雇をされるときには、会社から解雇通知書を受けとることが多いです。これを見ると、いつどのような形で解雇が行われたのかを後に証明することができるため、解雇の証明資料となります。たとえば、相手が後に「その日には解雇していない」などと言い出したとき、解雇通知書を見ると、早い段階で予告なしに一方的に解雇が行われたことなどを明らかにすることができます。
解雇理由証明書
解雇をされた場合、従業員は会社に対し、解雇理由証明書を請求することができます。まだ不当解雇を争う前の段階であれば、企業もさほど警戒していないため、解雇理由書に不用意な内容を記載することがあります。その記載が、法的な解雇理由になるものでなければ、解雇の相当性が認められないため、後に解雇無効を証明するための有効な資料となります。
解雇理由証明書は、労働者が請求しない限り、相手から自然に交付されることは少ないです。そこで、企業から解雇通知を受けたら、まずは、解雇理由証明書を請求するところから始めましょう。
人事評価書
人事評価書も重要です。会社が成績不振を理由として解雇しているケースなどでは、どの程度の評価があったのかが問題になりますし、そうでない場合にも、評価が悪くないのに解雇されたとなると、労働者の有利な資料になる可能性があります。
仕事に関するメール
業務に関して上司や同僚と交換したメールがあれば、それも資料となります。たとえば、上司から差別的な発言やセクハラ、パワハラ的な発言や無理な要求などがあったら、メールによってある程度明らかになります。
解雇当時の状況がわかる記録
その他、解雇当時の状況がわかる資料があれば、すべて取っておきましょう。上司との文書でのやり取り、渡された指示メモ、自分が上司や会社に渡した(提出した)文書や資料のコピーなどです。このように、証拠を残すためには、解雇問題が起こった後は、全てのやり取りを文書やメールなどの形が残る方法で行うことをおすすめします。口頭では、お互いに言った言わないになってしまい、裁判の証拠にはなりません。
診断書など精神的苦痛を受けていたことを証明できる記録
不当解雇やその際のやり取りなどが原因で、うつ病などの精神病にかかってしまうことがあります。その場合には、病気の内容を証明するため、診断書が必要です。病院で診断書を書いてもらうと良いのですが、その際、病気になった日付と不当解雇の日付が近いことが必要です。不当解雇が行われた後、相当期間が経過してから病院に行ってうつ病の診断を受けても、それは不当解雇とは関係のないうつ病だと言われてしまうおそれがあります。そこで、不当解雇を受けて調子が悪いと思ったら、すぐにメンタルクリニックなどに行って、うつ病の診断を受けましょう。
同僚の証言など
慰謝料を請求するためには、単に不当解雇があったというだけでは足りず、企業の側に強い違法性があることまで必要となります。そのためには、企業の違法行為を立証しないといけませんが、解雇当時の会社とのやり取りなどが重要です。ただ、会社に対し「文書で回答して下さい」などと言っても限度があります。そこで役に立つのが同僚の証言です。
同僚も、会社とのトラブルを恐れて証言してくれないことが多いですが、協力してくれる正義感の強い同僚がいるなら、早い段階で「陳述書」を作成してもらうことをおすすめします。早期に作っておかないと、後に同僚の気が変わって陳述書を作成してくれなくなるので、早く対応することが重要です。
友人や家族へのメール
また、だれも証言をしてくれない場合には、同僚や家族に、会社から受けた仕打ちについて相談をしていたメールなどがあると、証拠になる可能性があります。不当解雇に遭ったときには、口頭で話をするのではなく、家族や友人などでも良いので、メールや文書などで証拠資料を残すことを意識しましょう。
以上の資料は、不当解雇を証明するとともに慰謝料の発生原因も証明してくれるものです。
未払賃金、逸失利益、残業代を請求するための資料
次に、逸失利益を証明するための資料を紹介します。基本的には上記の資料と共通ですが、賃金計算に関わる別の資料が必要になります。
給与明細書、賞与の明細書
賃金の金額を証明しないといけないので、給与明細書と賞与の明細書が必要です。少なくとも数ヶ月分が必要なので、日頃からこれらの資料は捨てずに保管しておくことをおすすめします。
源泉徴収票
年間の給与額を明らかにするため、源泉徴収票も必要です。少なくとも、直近の資料は取得しておく必要があります。紛失・処分した場合には、役所で課税証明書を取得すると、直近の給与収入が明らかになります。勤務先が1つの人なら、源泉徴収票の所得と課税証明書の所得は同じになります。
賃金規定
会社の賃金規定も必要です。たとえば逸失利益を請求する場合には、将来得られたはずの収入を請求するので、賃金規定の内容によっては金額が変わってくる必要があります。年功序列制で、賃金が自動的に上がる場合などには、上がった後の賃金で逸失利益を計算して請求できます。
残業時間の資料
残業代を請求する場合には、残業時間を示す資料が必要です。いつどれだけの残業をしていたのか、タイムカードや出退勤の記録、交通ICカード、メールなどの資料により、証明しなければなりません。また、残業中にどのような仕事をしていたのかがわかる資料もある方が望ましいです。企業側から、必要もないのに会社に居残っていた、などを言われてしまうおそれもあるからです。上司による残業指示書などがあったら、メールなどでも良いので残しておくことが大切です。
不当解雇されたら、まずは弁護士に相談に行こう!
このように、不当解雇をされたら、慰謝料だけではなく未払賃金や逸失利益、退職金との差額や残業代など、いろいろな金銭の請求をすることが考えられます。ただ、すべてのケースですべての金銭を請求できるわけではなく、解雇を無効として会社に戻るのか、退職を受け入れるのかによって、請求できる金銭の種類も変わってきます。
また、不当解雇を証明するためには、いろいろな証拠を集める必要もあります。こうした判断や証拠集めについて、自分一人で適切にすすめるのは難しいです。
そこで、不当解雇を受けて、今後どのように対処して良いか判断できないのであれば、自己判断で間違った行動をする前に、早めに労働問題に強い弁護士に相談することをお勧めします。
不当解雇を争う方法
このようにして不当解雇を争う資料を揃えたら、具体的にどのような方法で企業に慰謝料請求をしたら良いのでしょうか?以下で、順番にご説明します。
解雇理由書の交付を請求する
企業から不当解雇をされたと感じたら、まずは解雇理由書の交付を請求することが重要です。企業も、解雇通知を行った当初は警戒していませんし、正直に解雇理由を告げてきます。後に考えてみたら、法的には認められるはずのないような自分勝手な理由でも平気で書いてくる可能性があるのです。そこで、解雇理由書は、とにかく早い段階で請求すべきです。
方針を決定する
次に、不当解雇をどのようにして争うのかを決定しなければなりません。不当解雇を争う方法としては、解雇を無効として未払賃金と慰謝料を請求する方法、退職を前提として慰謝料と逸失利益を請求する方法の2通りがあります。当初の段階では、前者の方法をとることをおすすめしますが、あまりに酷いセクハラを受けたケースなどでは、会社に戻るという選択肢が100%あり得ないケースもあります。
また、解雇の無効を争うケースでは、戦略として解雇無効を主張するだけではなく、本当に会社に戻りたいケースもあります。そこで、自分が最終的のどのような結果を望むのか(会社に戻りたいのか戻りたくないのかなど)を考えて、どのような方針で話を進めていくのかを決定しましょう。
内容証明郵便を送付する
方針を決めたら、会社に対して、こちらの要望を記載した通知書を送付します。解雇が無効であることを前提とするならそのような記載になりますし、退職をするなら慰謝料などの請求書となります。
この場合、内容証明郵便を利用して送るべきです。内容証明郵便とは、郵便局と自分の手元に控えが残るタイプの郵便です。これを利用することによって、いつ会社に対して解雇の無効を明らかに主張して争い始めたのかや、当初の請求内容について、後からでも証明することができます。
任意の支払交渉する
内容証明郵便を発送して、相手に届いたら、その後は相手と慰謝料の支払について交渉をします。このとき、当初は解雇無効と未払賃金の請求をしていても、途中で退職を前提にして慰謝料を請求する主張に変更することも多いです。実際に会社に残りたい場合には、その方向で話をすすめてもまったくかまいません。
このようにして話をすすめてお互いが労働者の地位(会社に残るのか残らないのか)や、今後の会社での待遇(勤務地や仕事の内容など)、退職する場合の逸失利益、慰謝料や退職金との差額などについて、合意ができたらその内容で話合いが成立します。話がまとまったら、その内容で合意書を作成し、決まった通りの支払いを受けることができます。
労働審判を利用する
相手の企業と話合いによって任意交渉をしても、お互いに合意ができないことが多いです。その場合、労働者としては、労働審判を利用する方法と労働訴訟をする方法を選択することができます。
労働審判を利用すると、原則的に3回までしか期日が開催されないため、非常にスピーディに問題を解決することができます。また、労働審判員が間に入って話を進めてくれるので、自分たちでは合意ができなかったケースや、相手が強硬で「絶対に一切の支払をしない」などと宣言しているケースでも、有効です。
労働審判は、解決率も非常に高いです。和解して解決できる事例が70%程度ありますし、和解ができずに審判をしてもらった場合を合わせると、終局的な解決率が80%を超えています。このように紛争解決能力が非常に高いのに、かかる期間は平均70日と非常に短いのです。労働問題は、長びくと企業も労働者もお互いに疲弊します。労働者にしてみると、次の就職先が見つかって、別の仕事を始めているにもかかわらず、以前の勤務先とのトラブルをいつまでも引きずることになるため、気分的にもすっきりしませんし、余計な手間もかかります。そこで、早期に解決ができて、期間も短くて済む労働審判は非常におすすめの解決手段と言えます。
労働訴訟をする
労働審判を利用しても、相手と和解ができないことがありますし、審判官に審判をしてもらっても、当事者が異議を申し立てたら審判内容は無効になってしまいます。この場合、自動的に訴訟に移行するため、労働訴訟(通常の裁判)をするしか解決方法がなくなります。しかし、訴訟をすると、どうしても期間が長くかかりますし、手続きも非常に複雑になります。また、訴訟では証拠がすべてになるので、自分の有利に不当解雇であることや慰謝料を認めてほしいなら、相手の解雇が不相当で理由のないものであることや、自分がそれだけ強い精神的苦痛を被っていることを、確実に立証しなければなりません。このような対応を、労働者が自分一人で確実に進めることは、ほとんど不可能です。
労働訴訟をするなら、必ず弁護士に依頼しよう!
労働審判の段階では弁護士に依頼していなかった人であっても、労働訴訟になったら必ず弁護士に依頼すべきです。自分の言っていることの方が、明らかに正しいのだから、弁護士をつけなくても勝てるだろう、と考える人もいますが、そのような考え方は甘いです。訴訟では、上手に主張と立証をしないと、正しい主張であっても敗訴します。特に、相手の企業が弁護士をつけているのに自分が弁護士をつけていないなら、相手による解雇が明らかに不当だと思われるケースでも、いつのまにか請求棄却になり、何の支払いも受けられずに終わってしまうおそれが高いです。
労働審判も弁護士に依頼することが望ましいですが、労働訴訟をするときには、それ以上に弁護士の助けを借りて、確実に相手に対する支払い命令を勝ち取ることが、慰謝料請求成功のポイントです。
不当解雇への対処を弁護士に依頼するメリット
不当解雇された場合に慰謝料その他の請求をするとき、弁護士に手続を依頼することもできますが、自分で対応することも可能です。特に、任意交渉をする段階では、弁護士を立てずに自分で話し合いをしてみようとする人がたくさんいます。では、弁護士に依頼すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?以下で、見てみましょう。
相手の態度が変わる
自分で相手に内容証明郵便を送り、慰謝料などの請求をしても、相手はまともに取り合わないことがよくあります。企業は、基本的に労働者よりも圧倒的に強い立場にいます。そこで、解雇した労働者が解雇について文句を言ってきても、無視していたらそのうちあきらめるだろう、などと考えます。もしくは、「当社には何の間違いも責任もないので、支払は一切できません。」などと返答が来ることも多いです。
このような場合、労働者は、裁判手続きをするのもハードルが高いので、泣き寝入りしてしまいがちですが、弁護士に依頼すると状況が変わります。弁護士が交渉に入ってきたら、相手も「このままでは立場が悪くなる」「裁判されるかもしれない」と考えて、ある程度妥協して支払に応じてくる可能性が高まります。
そこで、自分で交渉をしていて相手がまったく話に応じない場合には、弁護士に交渉を依頼しましょう。できれば、当初から弁護士に交渉を依頼することをおすすめします。そもそも内容証明郵便を送るとき、本人名より弁護士名で送られてくる方が、相手におけるプレッシャーが大きく、すんなり支払に応じてくれる可能性が高くなるからです。
適切な判断ができる
弁護士に対応を依頼すると、判断を誤ることがなくなることも重要なメリットです。不当解雇された場合、具体的にどのような対応をとれば良いかの判断はかなり難しいです。会社に残ると主張すべきか、退職を前提とした請求をするかも重要ですし、退職を前提とするとしても、最終的に本当に戻る気持ちがあるのかどうかという問題があります。本当は会社に残りたくないけれども、戦略的に解雇の無効を主張することもあります。
たとえば、自分としては、本当は会社に戻りたくないけれども、当初の段階では、戦略的に解雇無効を主張して未払賃金を請求したとします。その場合、相手が途中で「本当に戻ってきていいよ」などと言い出したら、自分ではどう対応して良いかわからないでしょう。その時点で「やっぱりやめます」などと言うのはあまりに間が抜けていますし、相手からも不信を買い、まとまる話もまとまらなくなってしまいます。
このように、解雇に絡む問題は、非常にナイーブな部分があります。そこで、誤った戦略をとることなく、正しい判断を行うためには、ノウハウも知識も豊富な弁護士に依頼するべきです。
法的知識を駆使して有利に交渉できる
不当解雇にもとづいて慰謝料その他の請求をしても、自分ではうまく交渉を進められないことが多いです。労働問題では、そもそも相手と労働者との間に大きな力の差があるため、交渉においてもどうしても労働者側が不利になります。特に、解雇無効を前提として、本当に会社に残りたい場合には、会社との関係があまりに悪化すると戻ることが非現実的になるため、どこまでの主張をして良いのか判断がつかないことがあります。そうでないケースであっても、いつの間にか相手に言いくるめられて、非常に僅少な金額のお金の支払いで合意せざるを得なくなってしまうおそれが高いです。
ここで、弁護士に交渉を依頼したら、法的な知識を駆使して、有利に交渉を進めてくれるので、労働者の有利に話が進むことが多いです。弁護士であれば、相手に言いくるめられることもありませんし、むしろこちらから積極的に判例などを持ち出して、相手に高額な支払をするように請求してくれます。相手も、弁護士から法的な根拠をもって請求されたら、反論ができなくなって支払に応じざるを得なくなります。
労働審判や訴訟になっても安心
労働訴訟を避けるため、妥協してしまう労働者が多い
自分で相手と話合いをする場合のネックは、話合いが決裂したときに労働審判や訴訟をしなければならないことです。いくら労働審判は自分一人でも利用しやすいと言われても、素人がひとりで裁判手続きを行うこと自体に抵抗があるものです。実際に、労働審判を申し立てるときにもたくさんの書類や証拠をそろえないといけませんし、審判が始まったら、何度も裁判所に行って、自分の主張をわかってもらう必要があります。審判によっても解決ができなかった場合、裁判になると思うとやはり手続きに躊躇してしまうことが多いです。このように、裁判になるリスクを考えると、多少不利な条件でも相手が提示するものを受け入れてしまうのです。
弁護士がいたら安心して戦える
ここで弁護士に交渉を依頼していたら、交渉が決裂しても引き続き弁護士が労働審判や訴訟を進めてくれるので、示談の決裂を恐れる必要がありません。相手が無理な主張や提案をしてきても、妥協して受け入れる必要がなく、こちらとしてはMAXの主張をすることが可能です。
実際に労働審判や訴訟になっても、弁護士がすべての手続きを代行してくれるので、依頼者はほとんど何もしなくて良くなり、手間も省けます。また、裁判所に1人で行くのはプレッシャーだという人も多いですが、弁護士に依頼したら弁護士が代理人になって一緒に裁判所に来てくれますし、意見も言ってくれるので、非常に気が楽です。
以上のように、労働審判や訴訟になっても安心できることは、弁護士に対応を依頼する大きなメリットです。
不当解雇で慰謝料請求するなら、必ず弁護士に相談しよう!
以上のように、不当解雇をされたときに勤務先に対して何らかの請求をするときには、そもそもどのような請求をすべきかから決めないといけません。「不当解雇で精神的苦痛を受けたから、慰謝料を支払ってほしい」などという単純な理屈では、慰謝料請求を認めてもらうのは難しいです。そもそも会社に残ることを前提とする主張をするのか、退職を前提とする主張をするのかも問題ですし、本当はやめたくても、戦略的に「労働者の地位確認」を求めることもあります。
また、不当解雇の場合、相手企業は「不当」と考えていないので、強硬に「絶対に支払をしない」などと言って請求をはねつけられるケースも非常に多いです。こうした場合、労働者がひとりで対応していたら、泣き寝入りするしかなくなるのが関の山です。
そこで、労働者が効果的に立ち向かうには、法律のプロであり、不当解雇のノウハウも蓄積している労働問題に強い弁護士に依頼することが何より重要です。弁護士費用がかかっても、自分で請求して0になるより弁護士に依頼していくらかでも利益がでて、相手を懲らしめることができる方がメリットが大きいことは明らかです。
今、不当解雇されたのではないかと考えて、泣き寝入りするかどうかで悩んでいるなら、まずは一度、弁護士に相談をしてみるべきです。今は多くの弁護士事務所が無料相談に対応しているので、相談料が心配な人は、無料相談を実施いている弁護士事務所を探して法律相談の申込みをしましょう。
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