アルバイト先から解雇された・・これは不当解雇ではないの?

2020年6月19日158,221 view

アルバイト

アルバイト先から不本意な解雇をされた場合、「アルバイトだから解雇されても文句は言えない」と思って泣き寝入りしがちです。しかし非正規社員でも法によって保護されるため、解雇が不当な場合もあるのです。そこで今回はアルバイトの不当解雇に当たるケースはどういった場合か、法的観点から解説します。

アルバイトでも不当解雇はできない

不当解雇

近年「リストラ」や「正社員切り」と言ったフレーズをよく耳にします。そうした中ではアルバイトが解雇されることもあるわけですが、アルバイトは正社員とは別物で、自由に解雇されても仕方がないと思っている人が多いのも事実。しかし、実は非正規労働者でも法律によって保護されており、解雇が違法の場合もあるのです。

アルバイトの解雇も正当な理由が必要

ここ最近企業がアルバイトを安易に採用・解雇し、トラブルになるケースが増えています。しかしアルバイトだからと言って、会社が自由に解雇できるわけではありません。

正社員と同じく合理的な理由が無ければ解雇はできない

確かにアルバイトは正社員と比較して法的な保護は薄いです。例えば解雇に必要とされる理由も一般社員よりも幾分軽いですし、リストラの際もフルタイム勤務の一般社員よりもアルバイトを先に解雇されるべきとされています。

しかしだからと言ってアルバイトの解雇は会社の一存で決められることにはならず、労働基準法によってアルバイトでも契約期間中での解雇には正当な理由が必要と定められているのです。アルバイトを解雇にするには、「解雇にする客観的に合理的な理由があり、社会的通念上相当であると認められた場合」でしか認められません。

パートタイマーとアルバイトの違い

ところで、アルバイトとパートタイムの差をご存知でしょうか。実は厳密な差の定義はありません。労働基準法上では「アルバイト」ではなく、「パートタイマー(短期間労働者)」として規定されています。ここで言う短期労働者とは「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」とされています。

アルバイトでも法律によって保護されている

アルバイトは“非正規労働者に差別的取扱いをしてはならない”と労働基準法に定められている他「パートタイム労働法」によっても保護されています。

パートタイム労働法によって保護されている

短時間労働者に関する法律としては『パートタイム労働法』があります。前身は平成6年10月に「短時間労働者の雇用管理改善などに関する法律」で平成20年4月に改正されこの名称に代わりました。

パートタイム労働法はパートタイム労働者等の教育訓練の実施、福利厚生の充実、雇用管理改善等労働条件保護や権利の根拠となる法律として制定された法律です。具体的にはパートタイマーの意見を聞いて就業規則を整備することや、労働時間について十分考慮し、できる限り残業や所定休日に労働させないようにすること、パート労働を希望する高齢者に就業の場を提供すること、社員に応募する機会を与えること等が規定されています。

解雇する場合には解雇手当も必要

労働基準法労働基準法第20条に「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。

但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。」との規定があります。つまりアルバイトでも解雇する場合は30日前に予告せねばならず予告しない場合、解雇手当を支払わなければならないのです。

また労働基準法には“非正規労働者に差別的取扱いをしてはならない”との定めもあります。勤務時間や能力の関係から給与に関しては差がありますが、実質的に準社員的なアルバイトに対しては、場合によっては差額請求が認められる可能性もあります。

アルバイト先から不当解雇されたら

アルバイト

このように非正規労働者でも法律によって保護されているのです。しかしながら経済が低迷を続ける昨今においてはブラック企業でなくとも、アルバイトの不当解雇が横行しているのが実態です。ここでは不当解雇に当たるのはケース、及びそのときの対処法を解説します。

不当解雇に該当するケース

労働問題が盛んに議論されている昨今においても、労働に対するモラルの低い事業所はまだまだ存在します。それに対して解雇の不当性を主張するためには、不当解雇に該当するケースはどの様な場合かをきちんと把握しておく必要があります。

退職を強要された

労働者の意思を無視して退職させる「退職強要」も違法となります。また脅迫的な言動を用いて退職を勧められたりいじめや嫌がらせによって退職に追い込まれた場合もこれに該当します。労働者の自由意志によるものと“される”退職は解雇と異なり労働法、民法上の問題がほとんど発生せず事業者側にとっては都合が良いため、程度の差はあれど多くの事業所で退職強要が行われており、問題視されています。

スキル不足を理由とした解雇

スキル不足を理由とした解雇は、不当になります。このときポイントとなるのはその程度です。業務に“著しく”支障が出る程の能力の欠落があった場合にのみに解雇が認められ、そうでない場合は不当と言えるのです。経営状態が芳しくない事業所の場合、非正規従業員のちょっとしたミスを指摘してスキル不足とし、解雇するケースも少なくありません。

解雇手当もなく突然解雇を告げられた

前述の通り、アルバイトを解雇する場合でも、30日前に予告する必要があり、予告しない場合、解雇手当を支払わなければならないと労働基準法によって定められています。従って、ある日突然解雇を言い渡され、解雇手当も発生しない場合は不当解雇となります。

不当に解雇を言い渡されたらどうすればよいの?

以上を踏まえた上で、不当な解雇を受けた場合どういった対応が可能なのか、またどうすればよいのか等を解説します。

解雇を拒否する

不当解雇を告げられた場合、離職する必要はありません。辞表を提出したり、退職同意書へのサインをすれば解雇に同意したと見なされてしまいますのでまずはきっぱりと拒み、不当であるため退職しない旨を伝えましょう。実はここは重要なポイントで、不当性をしっかりと主張しておくことで、後々の交渉や裁判等でも有利に進む可能性が高まるのです。

労働審判を起こす

賠償金や解雇の撤回の請求をしたい場合、事業所を訴えるのも一つの手段です。しかしここまでこじれてしまうと例え解雇が撤回され復職できたとしても、勤務が円満に進む可能性はほとんどないと言っても過言ではありません。加えて裁判で解雇の不当性を争うにはそれ相応の期間や費用が必要になります。従って次のアルバイト先を探すなり、収入源を確保しておくのが無難でしょう。

アルバイトの不当解雇に当たらないケース

就業規則

不当解雇に該当するケースとその時取るべき行動は分かったと思います。もちろん正当な理由なくして解雇されるのは不当解雇であり、毅然とした対応をとるべきです。しかしながら、時には解雇もやむを得ないケースは存在します。では、不当解雇に当たらないケースにはどのようなものがあるのでしょうか。

規則によるケース

まず、正当な解雇理由として認められるものの内最も多いのが、法律や規則により定められた条件に該当するケースです。

就業規則に違反したことによる解雇

通常アルバイトでも契約の際に就業規則について説明を受け、書面で渡されます。その中の解雇事由として挙げられている行為を行った場合、就業規則そのものに違法性がある場合等を除き、原則として解雇されても文句は言えません。

契約期間満了による解雇

アルバイト等の期間雇用労働者は期間を定めて労働契約を結んでいて、契約期間ごとに更新があるわけですが、この更新をしないことによる解雇は適法です。しかしこの場合でも事前の解雇通知は必要となります。

経営不振による人員削減

また、経営が傾いた際、人件費削減のために人員整理、所謂リストラが行われることがあります。人員整理では正社員よりもアルバイトを先に解雇するのが妥当とされており、正当な解雇理由となります。

けれどもこの場合も“人選の合理性(リストラ対象となる従業員の選定方法の公平性)“や“人員削減の必要性(経営上、本当に人員削減が必要か、他の手段はないか等)”“手続きの合理性(解雇理由についてきちんと説明はあったか等)”といった条件を満たしている必要があります。

従業員側に大きな非があるケース

従業員側に解雇されるに足る重大な過失があったり、事業場内で犯罪行為を働いたケースでの解雇は適法となります。また場合によっては逆に損害賠償を求められるケースもあります。

解雇に値する重大な過失があった

労働者側の自らの過失や故意によって会社に損害を与えた場合の解雇も、勿論違法ではありません。故意に器物損壊を行ったりアルバイト先に重大な損失を与えた場合等、悪質なケースになると、業務妨害罪等で損害賠償請求されることもあります。

事業場内で犯罪行為を行った

アルバイト従業員が事業場内で窃盗や横領や障害等の犯罪行為を行った場合、解雇が適法です。事前通知も必要なく、即解雇とすることができます。これは他の従業員が恐怖を感じることにより業務に悪影響が出るためです。なお、“事業所外”で犯罪行為を行ったからといって即刻解雇になるわけではありません。

法律上は、事業所外の行動を理由とした解雇については、仮に刑事事件を理由とするものであっても、解雇事由に該当しないまたは「解雇権の濫用」に当たる場合があり解雇が不当とされることがあるのです。しかし、実際には解雇されることが多いのが現実です。

アルバイトの不当解雇の違法性をしっかり主張

アルバイトは法律によって保護されていますが、まだまだ軽んじられ、不当解雇や不適切な扱いを受けているケースが非常に多いのが実態と言えます。そうした場面においてきちんと違法性を主張するためにも、法的知識を身に着けておきましょう。また、不当解雇と思われる事態に陥ったときは、法律の専門家に相談してみるのもよいでしょう。

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