派遣切りとは~派遣社員でも不当解雇は認められる?
派遣社員にとって不安なことと言えば派遣切りだと思います。今まで当たり前のように更新されていた契約が突然ストップする、何の前触れもなく派遣先から解雇されてしまう、こんなことが起きた時派遣社員は何ができるのでしょうか?
この記事で分かること
派遣切りには解雇と雇い止めがある
派遣労働者は正社員と違って有期契約で働いています。契約期間が終わったら更新するか契約を終了するかを会社が決めるのですがここで問題となるのが派遣切りです。派遣切りとは今まで働いていた派遣先で派遣先が急に雇い止めされることですが、派遣労働中に解雇されることも派遣切りと呼ばれています。
一時期は派遣切りされた元派遣社員が集まる「年越し派遣村」が話題になりましたね。
派遣社員であっても簡単に切ることはできない
派遣社員は有期契約だから好きな時に解雇できると勘違いされています。これは契約社員と同じような問題ですね。しかし、派遣社員だからと正社員より簡単に解雇できず契約会場にはやむを得ない理由が必要です。
以下で詳しく説明しますが派遣の契約が更新されるであろう場合の不意打ちやだまし討ちは特に厳しく制限されています。
解雇と雇い止めについて
ここで、解雇と雇い止めについて簡単に説明します。あなたがどちらにあたるのか確認しましょう。
解雇
解雇とは雇用契約中に仕事を辞めさせられることです。労働者の立場を不安定にさせることからわが国の労働法で厳しく制限されています。合法的に解雇された場合は30日の猶予或いは30日分の解雇予告手当がもらえます。
雇い止め
雇い止めとは有期契約を更新しないことです。いきなり契約をストップされてしまったという場合は雇い止めにあたるでしょう。プロ野球の戦力外通告も一種の雇い止めと言えるかもしれません。
派遣切りされたときに派遣社員ができること~解雇~
解雇という形で派遣切りされたときは解雇の撤回や休業手当の受給ができます。派遣労働は派遣会社が関わっていることで契約社員や正社員と問題点が異なります。こちらでは派遣先に解雇された場合と派遣元に解雇された場合に分けて解決します。
派遣先から解雇された場合
派遣先から解雇されたら不当解雇を訴えましょう!と言いたいところですがよくよく考えてみるとあなたは派遣先と直接の雇用契約を結んでいません。つまり、派遣先に不当解雇を訴えることができないのです。
一体どんな手段が取れるでしょうか?
派遣先は派遣社員を解雇できない
そもそも派遣先は派遣社員を解雇できません。理由は派遣労働が派遣社員と派遣先の契約ではないからです。あくまで派遣労働は派遣社員と派遣会社、派遣会社と派遣先という2つの契約で成り立っています。
派遣先に解雇を突き付けられてもそこに意味はありませんがこちらが同意してしまうと契約解除になってしまいます。自分から契約解除を申し出ないよう注意してください。
派遣会社が派遣社員を契約期間中に辞めさせる場合は派遣元に申し入れなければいけません。したがって不当解雇が問題になるのは派遣元から派遣先との契約解除を伝えられたときです。
派遣元に相談する
派遣先に解雇を言い渡された場合は派遣元に相談しましょう。派遣元に相談すればしかるべき対応を取ってくれるはずですが、状況が好転しなければ不当解雇 である証拠を示してください。わが国の解雇規制は非常に厳しいので「解雇がやむをえない」というレベルでない限り不当解雇の可能性があります。
不当解雇が疑われる理由としてはこのようなものがあります。
- 会社で数回ミスをした
- 遅刻や無断欠勤をしてしまった
- 任せる仕事がなくなってしまった
- 会社の景気が悪くなってしまった
「解雇によって問題は解決するけれど解雇以外の手段でも問題解決ができる」なら、派遣社員に非がある場合も不当解雇が認められやすいです。
ちなみに、派遣社員の解雇は通常の雇用契約の場合と同じく解雇予告や解雇予告手当の規定が適用されます。
派遣元から休業手当がもらえます
会社の都合で契約を解除されてしまった場合は派遣元から休業手当をもらえます。休業手当は本来もらえる給与の60%以上です。派遣先でなく派遣元に請求してください。もちろん、未払い賃金や未払いの残業代がある場合も直接契約をしている派遣元へ請求します。
派遣元から解雇された場合
派遣元は労働者が直接契約している会社なので通常の雇用契約と同じように不当解雇について争います。正当な理由がなく、解雇以外にできることがあるなら会社は社員を解雇することができません。派遣会社特有で知っておくべき点としては「派遣先が見つからないという理由で解雇できない」ことがあります。
派遣会社は派遣社員が解雇された場合も雇い止めされた場合も新しい派遣先を探す努力をしなければいけません。
派遣切りされたときに派遣社員ができること~雇い止め~
「派遣切り」という言葉から連想されるのは契約満期を理由に更新をストップされてしまった雇い止めのケースでしょう。たとえ有期契約と分かっていても契約更新を当てにしていた場合は派遣社員にとって大きなダメージとなります。
特に同じ会社に3年以上派遣されている方や同じ派遣会社から派遣されて5年以上働いている方は無期転換を避けるために雇い止めされやすいです。つまり派遣元から雇い止めされることも考えられます。
派遣切りに遭ってしまった時はこのようなことができます。
正当な雇い止めについて知る
雇い止めは不当解雇と同じく厳しく制限されています。雇い止めを不当だと訴えるためにはまず雇い止めに必要な条件を知ることです。派遣契約の更新がストップされるにはこのようなポイントが重視されます。
契約書に期間や条件が明記されている
派遣労働が行われる期間や契約更新の有無、契約更新されるための判断基準が明記されていなければ雇い止めはできません。派遣切りが問題になるのは基本的に契約の更新が認められている場合ですから、その詳しい中身を把握しましょう。
雇い止めの予告がされている
雇い止めの予告は契約が満了する30日前に行わなければいけません。この決まりは以下の労働者に適用されます。
- 1年を超える期間で労働契約をしている場合
- 契約の更新が3回以上ある場合(連続でなくて良い)
- 複数の契約更新で契約期間の合計が1年を超える場合
例え短期契約でも反復して契約更新していれば1年以上に及ぶことは良くあります。中には3か月契約を繰り返して17年に到達した派遣労働者もいます。勤続年数が長くても制度変更によって突然派遣切りされるかもしれないので、現在派遣切りされていない人も備えておきましょう。
正当な理由がある
雇い止めをするためには正当な理由が必要です。解雇と同じく労働者の地位を安定させることと使用者が雇い止めを悪用しないことが目的です。
正当な理由がないとみなされるのはこのようなケースです。
- やっていた仕事が正社員と一緒
- 恒常的に行われる内容の仕事をやっていた
- 契約更新が形骸化していた
- 自分と同じケースで雇い止めされた事例がない
- 「契約更新する予定」をにおわせるような言動をされていた
- 仕事内容について悪い評価をされていなかった
つまり「実質的に無期契約労働者と言える」場合は雇い止めを撤回させやすいです。派遣社員はあくまでピンチヒッターであって「悪い待遇で雇える社員」とは違います。
逆に範囲が明確な仕事をしていた場合や更新が厳しく行われていた場合、契約が更新されないと覚悟できる事情があった場合は雇い止めの撤回が厳しいかもしれません。
契約更新を期待させていない
契約更新を期待させるような言動がないことも大きなポイントです。逆に契約更新を期待させておいて不意打ちのように派遣切りをした場合は不当だと主張できるかもしれません。
派遣切りが不当である証拠を集める
雇い止めが不当だと認めてもらうためには証拠が必要です。証拠となるのは雇い止めの根拠となる契約書、実際の働きについて評価できる書類、更新を期待させるような言動、雇い止め理由提示証明書、業務日報などです。
証拠の活用方法や証拠としての妥当性が気になったら弁護士に相談してください。
契約を更新してもらう
契約を更新してもらうために会社と話し合いましょう。派遣会社の場合は派遣会社と話し合うことになります。上手く話し合いで解決すれば雇い止めが撤回されて労働者の地位が確保されます。
話し合いをしても雇い止めを撤回してくれない場合は裁判を起こさざるを得ません。裁判は直接交渉に比べて時間もお金もかかるので交渉に強い弁護士にお願いして何とか裁判外での解決をした芋いのです。
派遣切りされた派遣社員は失業保険をもらえるの?
派遣切りをされたときに気になるのが失業保険です。派遣社員も派遣先に雇われなくなった時に失業保険をもらえますが、派遣会社が新たな派遣先を探す努力をしている場合は失業保険がもらえません。新たな派遣先の紹介を待つべき期間は1か月で、それ以降なら失業保険を申請して大丈夫です。
一方的に契約を解除された場合は会社都合退職として自己都合退職の場合よりも多くの失業給付を受けることができます。派遣元から着られてしまった場合も当然に失業保険をもらうことができます。
派遣切りをされて困っている派遣社員の方は弁護士へ相談を
派遣社員は本来有期契約ですがずっと雇われ続けていると、もうその会社の社員と同じように働いている人も少なくありません。派遣切りされてしまうことは労働者の地位が安定性を脅かし、技術の向上も妨げてしまいます。安い賃金で使い倒す派遣切りはしかるべき対応によって解決できます。労働法に詳しい弁護士、和解交渉に慣れている弁護士と協力してあなたの生活を守りましょう。
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